質問主意書

第219回国会(臨時会)

質問主意書

質問第五九号

高市内閣総理大臣の答弁の撤回に係る認識に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年十二月三日

石垣 のりこ


       参議院議長 関口 昌一 殿



   高市内閣総理大臣の答弁の撤回に係る認識に関する質問主意書

 野田佳彦衆議院議員は、令和七年十一月二十六日の国家基本政策委員会合同審査会(以下「党首討論」という。)において、令和七年十一月七日の衆議院予算委員会における高市早苗内閣総理大臣の台湾有事に関する答弁(以下「総理答弁」という。)について発言した。これに対し、高市内閣総理大臣は、「質問者の方から台湾有事に限定して、またシーレーンの封鎖ということにも言及されての御質問がございました。そのときに、私も具体的なことに言及したいとは思いませんでしたけれども、事予算委員会でございます。ですから、政府のこれまでの答弁をただもう一度、もう一度と繰り返すだけでは、場合によってはこれは予算委員会を止められてしまう可能性もあるということで、やはり国会議員、国会議員の皆様は全国民の代表でございます。具体的な事例を挙げて聞かれましたので、その範囲で私は誠実にお答えをしたつもりでございます。」と発言した(以下「総理発言」という。)。総理発言を受け、野田衆議院議員は党首討論後、従来の政府統一見解を上書きするような言い方であり、事実上の撤回だったと受け止めた旨の認識を示した。

 総理答弁については、中国政府から強く撤回を求められている。高市内閣総理大臣は、令和七年十一月十日の衆議院予算委員会における大串博志衆議院議員の質疑に対し、「政府の従来の見解に沿ったものでございますので、特に撤回、取消しをするつもりはございません。」と答弁したが、これにより中国政府の態度が硬化したと考える。

 存立危機事態に該当するか否かは、「実際に発生した事態の個別具体的な状況に応じて、政府が全ての情報を総合して判断する」が政府の従来の見解である。現在もこの見解を踏襲している場合、総理答弁において「戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースである」とし、「どう考えても」と強調したことによって、台湾有事は「政府が全ての情報を総合して判断する」までもなく存立危機事態になり得ると解されるため、政府の従来の見解とは矛盾していると考える。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 総理発言によって総理答弁における「どう考えても存立危機事態になり得る」との答弁は撤回されたと野田衆議院議員は認識を示している。政府も同様に、答弁は撤回されたとの認識か、それとも、答弁は撤回されていないとの認識か、いずれか見解を示されたい。

二 総理発言には「具体的なことに言及したいとは思いませんでした」、「予算委員会を止められてしまう可能性もあるということで」、「具体的な事例を挙げて聞かれましたので、その範囲で私は誠実にお答えをした」とある。これらによれば、高市内閣総理大臣は、「どう考えても存立危機事態になり得る」との総理答弁について、不用意に個人的な見解を述べてしまったと考えているように捉えられる。政府は、高市内閣総理大臣が政府の見解とは異なる個人的な見解を答弁したと認識しているか示されたい。

三 「どう考えても存立危機事態になり得る」との総理答弁が、「政府が全ての情報を総合して判断する」範囲内と認識している場合、「どう考えても」と「全ての情報を総合して」が矛盾しない理由を説明されたい。

四 内閣総理大臣は、政府の見解とは異なる個人的な見解について、個人的な見解であると表明せずに発言や答弁をすべきでないと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。