質問主意書

第219回国会(臨時会)

質問主意書

質問第五七号

集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の批准に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年十一月二十八日

伊勢崎 賢治


       参議院議長 関口 昌一 殿



   集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の批准に関する質問主意書

 私が提出した「集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約批准に向けた同条約と国内法制との関係の整理に関する質問主意書」(第二百十九回国会質問第二三号)に対する答弁(内閣参質二一九第二三号)、「千九百三十六年の危険薬品の不正取引の防止に関する条約第二条(c)の共謀に関する質問主意書」(第二百十九回国会質問第二四号)に対する答弁(内閣参質二一九第二四号。以下「答弁二四号」という。)及び「ジェノサイドの罪の慣習国際法化に関する質問主意書」(第二百十九回国会質問第二八号)に対する答弁(内閣参質二一九第二八号)を踏まえ、以下質問する。

一 一九九三年五月二十五日に国連安全保障理事会決議第八百二十七号が採択された当時、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所規程第四条二及び三の規定並びに集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約(以下「ジェノサイド条約」という。)第二条及び第三条の規定の内容は、慣習国際法として成立していたと言えるか。

二 現時点において、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所規程第四条二及び三の規定及びルワンダ国際刑事裁判所規程第二条二及び三の規定並びにジェノサイド条約第二条及び第三条の規定の内容は、慣習国際法として成立していると言えるか。

三 二〇二五年五月二十八日の衆議院外務委員会において、岩屋毅外務大臣(当時)は、「例えば、このジェノサイド条約第三条が規定する集団殺害の共同謀議、あるいは直接かつ公然の扇動という規定がございますけれども、その意味するところが必ずしも明確ではないといったこともございます。」と答弁した。

 しかし、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所規程及びルワンダ国際刑事裁判所規程に規定するジェノサイドの「共謀」及び「煽動」の内容については、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所及びルワンダ国際刑事裁判所の累次の判例により、その内容が明らかにされてきた。

 現時点において、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所規程及びルワンダ国際刑事裁判所規程並びにジェノサイド条約に規定するジェノサイドの「共謀」及び「煽動」の内容は、慣習国際法として成立していると言えるか。

四 政府は、答弁二四号において、千九百三十六年の危険薬品の不正取引の防止に関する条約(昭和三十年条約第十八号)第二条(c)に規定する「共謀」とは、「刑法(明治四十年法律第四十五号)第一編第十一章に規定する共犯に当たるものである」とし、同条「(c)に係る部分については、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)第六十四条、第六十四条の二、第六十五条、第六十六条及び第六十八条の二並びに刑法第一編第十一章の規定によって担保されている」と答弁した。

 ジェノサイド条約第三条(b)が規定するジェノサイドの「共同謀議」は、英語正文では「conspiracy」である。答弁二四号のとおり、千九百三十六年の危険薬品の不正取引の防止に関する条約第二条(c)に規定する「conspiracy」とは、刑法第一編第十一章に規定する共犯に当たるものであり、刑法の共犯の規定によって同条(c)の「conspiracy」に係る部分が担保されるのであれば、ジェノサイド条約第三条(b)が規定するジェノサイドの「conspiracy」の規定も、刑法の共犯の規定によって担保することができるのではないか。刑法の共犯の規定により担保することができないのであれば、その理由は何か。

  右質問する。