第219回国会(臨時会)
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質問第三六号 特定利用空港・港湾が軍事目標となる可能性に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年十一月十二日 福島 みずほ
参議院議長 関口 昌一 殿 特定利用空港・港湾が軍事目標となる可能性に関する質問主意書 内閣官房が公表した「総合的な防衛体制の強化に資する公共インフラ整備」に関するQ&A(二〇二五年八月二十九日更新)」では、「Q6:「特定利用空港・港湾」となることで、有事において、攻撃目標となるのではないですか?」に対して、「A6:自衛隊・海上保安庁は、これまでも民間の空港・港湾を利用してきています。今回、更なる利用の円滑化を図ることを目的として、インフラ管理者との間で、「円滑な利用に関する枠組み」を設けることとなりますが、そのような枠組みが設けられた後も自衛隊・海上保安庁による平素の利用に大きな変化はなく、そのことのみによって、当該施設が攻撃目標とみなされる可能性が高まるとはいえません。」としている。 以上を踏まえて、以下質問する。 一 ジュネーヴ諸条約第一追加議定書第五十二条(以下「当該条文」という。)に規定する「用途」の解釈について、米国国防総省が二〇二三年七月に更新したLaw of War Manualによれば、民間空港の滑走路は、軍用の航空基地が使用不能になった場合に直ちに軍事利用に供され得ることから、軍事目標となり得るとされている("Purpose" means the intended or possible use in the future. For example, runways at a civilian airport could qualify as military objectives because they may be subject to immediate military use in the event that runways at military air bases have been rendered unserviceable or inoperable.)。米国統合参謀本部が公表したJoint Publication 3-60「Joint Targeting」(二〇一八年九月二十八日付け)にも同旨の記述がある。また、米国統合参謀本部が公表したJoint Publication 3-60「Joint Targeting」(二〇一三年一月三十一日付け)によれば、民間空港のような民間施設は、潜在的に軍民両用として利用されるものであり、将来、軍事用に用いられることがあり得るため、軍事目標となり得るとされている(The potential dual use of a civilian object, such as a civilian airport, also may make it a military objective because of its future intended or potential military use.)。 その時々の状況に照らして個別具体的に判断した場合、民間空港は当該条文に規定する軍事目標となり得るか、政府の見解を示されたい。また、政府の見解は前述の米国の見解と同様か示されたい。同様でない場合、相違点を示されたい。 二 政府は二〇二五年四月四日の衆議院国土交通委員会において、「ジュネーブ諸条約第一追加議定書第五十二条には、実際に武力紛争が生じた場合において、「攻撃は、厳格に軍事目標に対するものに限定する。軍事目標は、物については、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に資する物であってその全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況において明確な軍事的利益をもたらすものに限る。」と定めております。そのため、軍事目標に該当するか否かについては、特定利用港湾であるか否かによって形式的に決まるものではなく、実際に武力紛争が生じた場合において、その時々の状況に照らして個別具体的に判断する必要があり、一概にお答えできないものと認識しております。」と答弁した。 実際に武力紛争が生じた場合において、その時々の状況に照らして個別具体的に判断した結果、自衛隊が利用する特定利用空港・港湾は当該条文に規定する軍事目標に該当し得るか、政府の見解を示されたい。 三 二〇二五年度自衛隊統合演習(実動演習)について、九州防衛局が鹿児島県に提供した資料によれば、「航空自衛隊の航空部隊等が四国沖で実施される統合防空ミサイル防衛訓練(侵攻する航空機等への対処)及び統合対艦攻撃訓練(侵攻する艦艇等への対処)に参加し、それぞれの対処要領について演練します。その際、航空自衛隊の基地が使用できない事態を想定し、鹿児島空港、奄美空港及び徳之島空港に一時的に退避・着陸し、燃料補給を実施します。」、「海上自衛隊の航空機が、母基地の鹿屋航空基地が使用不可能になった状況を想定し、訓練期間中の一時的な拠点として、鹿児島空港で弾薬搭載等を実施します。」として、自衛隊の基地が「使用できない事態」や「使用不可能になった状況」において、自衛隊が特定利用空港を利用することが明記されている。 このような状況において、自衛隊が利用する特定利用空港・港湾は、当該条文に規定する軍事目標になり得ると思料するが、政府の見解を示されたい。 右質問する。 |