質問主意書

第219回国会(臨時会)

質問主意書

質問第三二号

有事における特定利用空港・港湾の利用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年十一月七日

福島 みずほ


       参議院議長 関口 昌一 殿



   有事における特定利用空港・港湾の利用に関する質問主意書

 有事における特定利用空港・港湾の利用について、以下質問する。

一 内閣官房が公表した「総合的な防衛体制の強化に資する取組について(公共インフラ整備)」(以下「当該資料」という。)によれば、特定利用空港・港湾に係る自衛隊・海上保安庁利用のイメージとして、「航空機を状況に応じて配置することにより、侵攻部隊に対し、より遠方で対応します。」、「上記の実効性を確保するため、平素から訓練等で空港・港湾を利用します。」としている。

 平素から訓練等で空港・港湾を利用するのは、有事の際に特定利用空港・港湾において侵攻部隊に対し、より遠方で対応するためか示されたい。

二 内閣官房が公表した「「総合的な防衛体制の強化に資する公共インフラ整備」に関するQ&A(令和七年八月二十九日更新)」(以下「Q&A」という。)には、存立危機事態及び重要影響事態における自衛隊による特定利用空港・港湾の利用について明記されていない。一方、内閣官房・国土交通省・防衛省は令和六年三月二十一日、「確認事項(案)の二の文中の「・・・、国民の生命・財産を守る上で緊急性が高い場合又は艦船の航行の安全を確保する上で緊急性が高い場合(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態を除く。)」には、武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態以外の「存立危機事態」や、「重要影響事態」、いわゆる「グレーゾーン事態」が含まれうると考えてよいのか。また、含まれる場合には、港湾法等の既存法令に基づき、利用調整を行うものと考えてよいのか。」との高知県の質問に対し、「お質しの通り、相違ありません。」と回答した。

 1 存立危機事態及び重要影響事態は、当該資料における「円滑な利用に関する確認事項」中、「国民の生命・財産を守る上で緊急性が高い場合又は航空機の飛行や船舶の航行の安全を確保する上で緊急性が高い場合(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態を除く)」に該当し得るか示されたい。

 2 Q&Aでは、「Q3:この取組は有事を対象とするものですか?」に対して、「A3:この取組は、平素における空港・港湾の利用を対象としたもので、武力攻撃事態のような有事の利用を対象とするものではありません。」としている。

 Q3における「有事」の定義と、Q3を含むQ&Aにおける「平素」の定義を示されたい。また、存立危機事態及び重要影響事態は、「有事」と「平素」のいずれに該当するのか示されたい。

 3 「有事」について、政府は昭和五十七年四月二十一日の衆議院外務委員会において、「日本にとって有事とは何ぞや、こういうことになるわけでございますけれども、この有事ということも厳密な法律的定義があるわけではございませんけれども、われわれが日本にとっての有事といいます場合には、いままでお答えしてまいりましたのは、自衛隊法七十六条によりますところの防衛出動が下令された、あるいは下令されるというような事態を日本にとっての有事というふうに申しております。」と答弁した。また、「極東有事」について、政府は平成八年五月十四日の衆議院安全保障委員会において、「有事とは何かということになるわけでありますが、あえて申し上げれば、我が国周辺地域において限定的な武力紛争が生起するような事態は有事であろうと思いますけれども、それ以外はどうなのかといったような疑問に対しましては、まさに我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合ということでございまして、今それ以上の定義といいますか考え方はございません。」と答弁した。

 これらの政府答弁によれば、Q3における「有事」は、存立危機事態及び重要影響事態を含む概念と思料するが、政府の見解を示されたい。

 4 2に関して、Q3は、「有事」についての質問であり、「有事」を修飾する語句がないにもかかわらず、A3は、「武力攻撃事態のような有事」として、「有事」の内容を武力攻撃事態に限定し、存立危機事態及び重要影響事態を例示しない表現をしている。また、A3は、「この取組は、平素における空港・港湾の利用を対象としたもの」としているが、この表現では、存立危機事態及び重要影響事態はこの取組の対象に該当しないと国民が理解する可能性が高く、現に、この点について高知県のほか香川県も政府に質問している。

 この取組が存立危機事態及び重要影響事態における空港・港湾の利用も対象とする場合、その旨をQ&Aに明記しない理由を示されたい。

 5 令和六年四月十八日の参議院国土交通委員会において、斉藤鉄夫国土交通大臣(当時)は、「関係閣僚会議の資料の公表や、本件取組についての二十六問にわたるQアンドAを作成し公表するなど、今回の取組について公開し、地方議会や地域住民の皆様を含め広く関係者の理解が進むよう努めてきたところでございます。」と答弁した。

 この取組が存立危機事態及び重要影響事態における空港・港湾の利用も対象とする場合、その旨をQ&Aに明記すべきではないか。そのほか、その旨を内閣官房のウェブサイトに掲載するなど、地方議会や地域住民を含め広く関係者の理解が進むよう努めるべきと思料するが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。