第219回国会(臨時会)
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質問第二九号 アジア開発銀行(ADB)の原発支援への方針転換に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年十一月五日 伊勢崎 賢治
参議院議長 関口 昌一 殿 アジア開発銀行(ADB)の原発支援への方針転換に関する質問主意書 アジア開発銀行(以下「ADB」という。)は、一九六六年の設立以来、原子力発電(以下「原発」という。)への融資を行わないという方針を掲げてきた。しかし、二〇二五年に入って方針が見直され、原発への支援を解禁する可能性が議論されている。 ADBのエネルギー政策レビューによれば、二〇二一年のエネルギー政策には「ADBは原子力エネルギーへの投資を融資しない。ADBは、原子力エネルギーが低炭素の基盤電力を提供できる能力を持つことから、低炭素移行におけるその役割を認識しており、必要に応じて、長期的なエネルギー計画および気候戦略の策定に原子力に関する分析を含める。しかしながら、原子力拡大には核拡散、廃棄物管理および安全性に関わるリスク、ならびにADBの資源に比して非常に高い投資コストを含む多くの障害が存在するため、ADBは原発への投資を融資しない。」と明記されている。 他方、現在提案されようとしている二〇二五年八月十五日付けの修正案草案には、「ADBは途上加盟国(DMCs)がエネルギーミックスにおける潜在的な技術として原発を探求することを支援する。ADBは、原発が電力部門の排出削減およびエネルギーの安全性、信頼性、そして経済性を強化するうえでの役割を認識する。ADBは、発電拡大計画に原子力技術を含めようとするDMCsを支援する用意がある。この支援は、主として、将来的に行われるインフラ投資を見据えて、人材および制度的能力を構築・強化することに焦点を当てる。それは、投資のライフサイクルコストや、安全性、セキュリティ、保障措置、規制能力、廃棄物管理、廃炉、そして核不拡散などに関する課題を考慮に入れつつ、最先端の原発投資のための整備された環境を育成することを含む。」と記載されている。 二〇二五年六月十日に世界銀行の理事会が、原発への融資を禁止する措置の解除を決定した。したがって、ADBもエネルギー政策を見直し、原発への支援を含める方針だと認識している。一方で、これまで両機関が原発に対して慎重な姿勢を見せていた「安全性・放射性廃棄物・核拡散・高コスト」の諸課題は、いまだ解決されていない。 以上を踏まえ、以下質問する。 一 世界銀行が原発への融資を禁止する措置の解除を決定した経緯を把握しているか示されたい。 二 ADBがエネルギー政策を修正するに当たり、事前に日本政府に報告はあったのか示されたい。 三 ADBのエネルギー政策が提案どおり修正されるならば、ADBの設立以来、米国と並ぶ最大の出資国であり、歴代の総裁を輩出している日本政府としては、どのような対応をするのか示されたい。 右質問する。 |