質問主意書

第219回国会(臨時会)

質問主意書

質問第一九号

郵便投票制度の改善及び投票機会の拡充に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年十月二十七日

ながえ 孝子


       参議院議長 関口 昌一 殿



   郵便投票制度の改善及び投票機会の拡充に関する質問主意書

 我が国の民主主義は国民主権を基盤としており、選挙制度はそれを実現する手段である。しかし、近年、国政選挙・地方選挙を問わず、投票率の低下が深刻な問題となっている。特に若年層や都市部における棄権率は高く、「政治への無関心」という一言では片付けられない構造的な要因が存在している。

 要因の一つとして、投票機会の確保が十分でないことが挙げられる。投票日当日に投票所へ行けない有権者に対しては期日前投票や不在者投票の制度が設けられている。しかし、依然として多くの人は、制度を知っていても、活用しにくいと感じている。特に、身体障がい者や高齢者、長期療養中の人などが利用できる郵便等による不在者投票制度(以下「郵便投票制度」という。)については、存在そのものは広く知られているものの、手続が極めて煩雑で、結果として活用が進んでいない。制度として用意されているだけで、実際に活用しにくい状況が続いていることは、有権者の投票権を実質的に制限していると言わざるを得ない。

 郵便投票制度は、一定の障がいがある者など、法令で定められた対象者のみが利用できる。利用に当たっては、選挙の都度、申請書の提出、投票用紙の交付、記載、返送という複数の手続を経る必要があり、申請から投票完了までに時間と労力を要する。さらに、自治体ごとの案内や対応の差も大きく、利用を希望しても期限内に手続を完了できず、事実上投票権を失うに等しい事例が報告されている。加えて、介護中の家族、妊娠中の女性、感染症流行時の外出制限下にある有権者など、郵便投票制度の対象外となっているものの実態として投票所に行けない人は多く存在する。投票したくても投票できない有権者が存在する現状は、日本国憲法が保障する平等な参政権の理念に照らし、改善を要するものである。

 米国、ドイツ、韓国など多くの民主主義国家では、郵便投票(又は期日前郵便投票)が有権者にも広く開放されており、申請一つで自宅から投票できる仕組みが整っている。特に、高齢化社会や感染症流行下では、民主主義を維持する上で不可欠な制度として定着している。

 これに対し我が国では、二〇二〇年の新型コロナウイルス感染症流行時に郵便投票制度の拡充が議論されたものの、恒久的な改善には至らなかった。結果として、現代の社会実態に即した投票しやすい制度になっていないのが実情である。

 今後、人口減少・高齢化が一層進み、投票所への移動が困難な有権者の増加が予想される。また、大規模災害や感染症流行などのリスクを考慮すれば、多様な投票方法を整備しておくことは、選挙の継続性と安全性を担保する上で不可欠である。郵便投票制度の改善は、単なる行政手続の見直しにとどまらず、「投票権を実質的に保障するための民主主義基盤の再設計」として捉えるべきである。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 過去五年間における郵便投票制度の利用者数・利用率の推移を選挙種別ごとに示されたい。

二 郵便投票制度に関する周知・広報活動について、政府としてどのような取組を行っているか示されたい。また、取組の効果を検証しているか示されたい。

三 現行の対象者要件を見直し、希望する全ての有権者が郵便投票を選択できる制度とすることについて、政府の見解を示されたい。

四 郵便投票の申請手続をオンライン化し、マイナンバーカード等を活用することで、申請・本人確認・発送を一体化する仕組みを導入する考えはあるか、政府の見解を示されたい。

五 投票用紙の送付・返送における郵送の遅延や自治体ごとの制度運用の差が投票機会を奪う事例がある。政府としてどのような改善策を検討しているか示されたい。

六 災害や感染症流行時における安全な投票方法として郵便投票制度を活用することについて、政府の見解を示されたい。

七 投票率向上の観点から、郵便投票制度の拡充をどのように位置付けているか示されたい。また、期日前投票・今後の導入が望まれるインターネット投票との連携を含めた包括的な検討を行う必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

八 選挙制度は、国民主権を実現する最も直接的な手段である。投票率の低下を「有権者の関心の問題」として済ませるのではなく、「投票しやすい環境を整える努力」が求められている。

 郵便投票制度の改善は、単に一部の有権者の便宜を図るものではなく、民主主義の根幹を再生する試みである。政府として、同制度の抜本的見直しと迅速な改善を行う必要があると考えるが、誰もが等しく投票できる社会の実現に向けた具体策を示されたい。

  右質問する。