第219回国会(臨時会)
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質問第一八号 指定病院等における不在者投票等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年十月二十四日 伊藤 孝恵
参議院議長 関口 昌一 殿 指定病院等における不在者投票等に関する質問主意書 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第四十九条は、選挙期間中、一定の事由により投票所で投票することができない選挙人の投票機会を確保する不在者投票について定めている。指定病院等における不在者投票については、身体に重度の障がいがある選挙人等が利用可能とされている。 毎日新聞は令和七年八月十三日、ある指定病院において、選挙人が不在者投票を希望していたにもかかわらず、体調不良時に行われた意思確認の結果、投票棄権となった事例(以下「本事例」という。)を報じた。通常の医療業務と並行して選挙事務を行う病院の負担は理解できる一方、指定病院等における不在者投票に際しては、入院患者等への丁寧な意思確認を行うことで、投票機会を尊重すべきと考える。 以上の問題意識を踏まえて、以下質問する。 一 選挙権の行使は民主主義の根幹であり、公平公正な選挙のためには投票機会の侵害は決して許されないと考える。投票所における選挙期間中の投票が困難な入院患者や障がい者を始めとする選挙人の投票機会を確実に確保する重要性について、政府の見解を示されたい。 二 指定病院等における不在者投票について、意思確認を行った数、実際の投票者数、事務従事者や立会人の選任方法などに関する全国的な実態を政府として把握しているか示されたい。把握していない場合、全国的な実態調査を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 三 総務省ウェブサイトでは、一般的な不在者投票制度の紹介は行われていると承知しているが、指定病院等における不在者投票制度に特化した周知・啓発活動は行っているか、政府の取組状況を示されたい。また、政府は、各都道府県選挙管理委員会が同制度の重要性を各指定病院等に対して十分周知していると認識しているか示されたい。周知が不十分と認識している場合、指定病院等の負担に適切に配慮しつつ、同制度の重要性をより一層周知するよう各都道府県選挙管理委員会に対して助言を行う必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。 四 障がい者の円滑な投票に資するため、総務省は、代理投票時における投票の秘密に配慮した取組事例等を各都道府県選挙管理委員会に対して周知している。同様に、指定病院等における不在者投票制度について、積極的に利用する指定病院等や選挙管理委員会の事例を周知することは同制度の普及に資すると考えられるが、政府の見解を示されたい。 五 現在、介護保険の被保険者証の要介護状態区分が要介護五に該当する者に対しては、郵便等による不在者投票が認められている。「投票環境の向上方策等に関する研究会報告(高齢者の投票環境の向上について)」(平成二十九年六月)においては、対象を要介護四及び三まで拡大することが適切であるとされた。郵便等による不在者投票が認められる要介護状態区分を拡大すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 また、インターネット投票については、入院患者を含む選挙人の投票機会を広く確保し得るものであり、本事例を踏まえても、導入に向けた検討を進めるべきと考えるが、現状の課題について、政府の見解を示されたい。 六 指定病院等における不在者投票については、病院長等から選挙人に対し投票意思の有無を確認することが必要とされる。投票意思の確認は、一律に一回だけ行うのではなく、入院患者等の体調が回復している時に再確認するなど、容態等に応じて複数回行う必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。 七 指定病院等における不在者投票では、便宜的に病院内で一括投票日が定められていることがあると承知している。令和六年十月に東京都選挙管理委員会事務局が公表した「指定病院等における不在者投票の手引」では、「一括投票後でも、個別に入院患者から新たな申立てがあれば、不在者投票管理者として、不在者投票の手続を速やかにすすめてください。」と説明されている。東京都選挙管理委員会事務局の説明は、政府の見解と一致しているか示されたい。 八 指定病院等における不在者投票時の選挙人の意思確認については、正確な意思疎通が困難な場合も想定される。病院では医療ソーシャルワーカーが患者等の意思決定を日常的に支援しており、日本ソーシャルワーカー連盟が定めるソーシャルワーカーの倫理綱領では、「自らの人生に影響を及ぼす決定や行動のすべての局面において、完全な関与と参加を促進する。」と規定されている。医療ソーシャルワーカーによる積極的な支援が円滑な意思確認に資すると考えるが、政府の見解を示されたい。 九 不在者投票の事務は、不在者投票管理者の管理の下で、適宜その補助者に行わせることが可能とされている。指定病院等においては、事務職員等が実際の投票事務に従事していることが多く、人的負担が大きな課題となっているが、選挙事務補助者に特段の要件は求められていない。そこで、様々な疾患の患者会や親の会等と連携しつつ、国や都道府県が投票事務に従事するボランティアを主導的に募集するなど、人的負担の軽減に努めるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 十 大阪府四條畷市における電子投票の実施や鳥取県南部町等におけるオンライン立会い実施など、近年の選挙ではICTを用いた投票等の効率化が図られている。指定病院等における不在者投票については、感染症対策に配慮しつつ、指定病院等の人的負担を軽減する手段として電子投票やオンライン立会いの活用が有効と考えるが、政府の見解を示されたい。 右質問する。 |