第219回国会(臨時会)
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質問第一二号 医師の応招義務及び不法滞在の外国人の医療費支払等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年十月二十一日 百田 尚樹
参議院議長 関口 昌一 殿 医師の応招義務及び不法滞在の外国人の医療費支払等に関する質問主意書 医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十九条第一項においては、「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」として、いわゆる医師の応招義務を定めている。応招義務については、明治時代から同趣旨の規定が罰則付きで設けられていた。その後、医療の公共性、医師の職業倫理などを背景に、戦後、医師法が制定された際に刑事罰が削除され、現在の応招義務は訓示的規定として置かれている。 医師法が制定された戦後間もない頃は、個々の医師の協力により医療体制が確保されていた。しかし、現在は、医療機関や自治体を含む地域全体の協力体制が整い、医療提供体制は改善している。 一方、応招義務については、個々の医師の「診療の求めがあれば診療拒否をしてはならない」という職業倫理・規範として機能し、社会的要請や国民の期待を受け止めてきた。現在、応招義務は、その純粋な法的効果以上に、個々の医師や医療界にとって大きな意味を持つようになったと考える。 草川昭三衆議院議員(当時)が提出した「不法滞在の外国人の医療費支払等に関する質問主意書」(第百二十回国会質問第八号)に対する答弁(内閣衆質一二〇第八号。以下「答弁書」という。)において、政府は、医師法第十九条第一項の規定による応招義務の有無を判断するに当たり、「同項にいう正当な事由の有無を個々の事例に即して具体的に検討することを必要とするが、一般的には、治療費を支払うことができないこと又は不法滞在者であることのみを理由として診療を拒むことはできない。」と答弁した。 厚生労働省は令和元年十二月二十五日、「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」(医政発一二二五第四号。以下「令和元年通知」という。)を発出した。令和元年通知では、病状が安定している患者等で診療時間外に診療を求められた場合など、応招義務の及ばない例について具体的に整理している。また、外国人観光客を始めとした外国人患者への対応について、「診療しないことの正当化事由は、日本人患者の場合と同様に判断するのが原則」としている。 出入国在留管理庁によると、令和七年六月末の在留外国人は三百九十五万人を超え、令和七年七月一日現在の不法残留者数は七万一千人を超えると報告されている。政府は認めていないが、実質的な移民政策が実行されており、在留外国人は急激に増加していると思料する。 厚生労働省によると、令和六年九月一日から三十日に外国人患者の受入実績のある病院の十六・三%が、外国人患者による未収金を経験していたと報告されている。正にルールを守らない外国人である。治療費を支払うことができないこと又は不法滞在者であることを理由として診療を拒むことができないならば、外国人患者を受け入れる医療機関は未収金のリスクを負うことになる。現在、診療所・病院の経営はひっ迫しており、ノブレス・オブリージュとして不法滞在者の未収金を負担する余裕はない。 以上を踏まえて、以下質問する。 一 医師法第十九条第一項の解釈として、治療費を支払うことができないこと又は不法滞在者であることを理由に、医師が診療を拒否することは可能か示されたい。 二 答弁書において、政府は、治療費の支払は基本的には医療機関と患者の間の民法(明治二十九年法律第八十九号)上の債権債務関係として取り扱われるべき問題であるが、不法滞在者が治療費を支払えない場合に医療機関が治療費を負担するような事態が生じ、人道上の立場からもその改善について要請があることは認識しており、今後の研究課題である旨答弁している。当該研究課題に対する研究成果を示されたい。また、当該研究成果に基づく当該問題への取組方針を示されたい。 三 答弁書において、政府は、「不法滞在者に対して国公立病院が病院側の負担で医療を行うという制度を設けることは不適当と考えている。」と答弁している。治療費を支払えない不法滞在者に対しては、誰が医療を提供し、費用を負担すべきと考えているか、政府の見解を示されたい。 四 不法滞在者の発生は、政府の無策によるものと考える。医療機関が不法滞在者を受け入れた結果として未収金が発生した場合、政府がその責任を負うべきと考えるが、見解を示されたい。 五 令和元年通知において、「外国人患者についても、診療しないことの正当化事由は、日本人患者の場合と同様に判断するのが原則」とある。医師の応招義務が及ぶ外国人患者は、外国人観光客、在留外国人(中長期在留者、特別永住者)を指すと考えるが、不法滞在者も医師の応招義務が及ぶ外国人に含まれるのか、政府の見解を示されたい。 六 在留外国人は急激に増加し、三百九十五万人を超えた。しかし、政府は一貫して移民政策を採っていないとしている。国連の国際移住機関(IOM)は、一年以上自分の通常の居住国以外の国に移住し、移住先の国が実質的に新たな通常の居住国となっているような者を長期移民と定義している。 安倍晋三内閣総理大臣(当時)は平成三十年六月二十七日の国家基本政策委員会合同審査会において、移民政策の定義について、「例えば、国民の人口に比して一定程度のスケールの外国人及びその家族を期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策」と発言した。これを踏まえ、同発言当時の政府の移民の定義を示されたい。あわせて、現在の政府の移民の定義を示されたい。また、政府は現在、移民政策を行っているか示されたい。 右質問する。 |