第219回国会(臨時会)
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質問第一一号 米価格高騰及び米の増産に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年十月二十一日 山本 太郎
参議院議長 関口 昌一 殿 米価格高騰及び米の増産に関する質問主意書 農林水産省は、令和六年からの米価格高騰の要因を「流通の目詰まり」とし、小売業者等への調査を行っていた。しかし、令和七年七月三十日の食料・農業・農村政策審議会食糧部会において、流通の目詰まりを裏付けるデータはなかったことが示された。 令和七年八月五日の第三回米の安定供給等実現関係閣僚会議(以下「当該会議」という。)において、小泉進次郎農林水産大臣は、米の生産量が需要量に対して不足し、民間在庫が減少したことで調達競争が発生したと説明した。また、こうした状況の下、農林水産省は「玄米ベースの生産量は足りているとの認識」から、「流通実態の把握に消極的」で、「政府備蓄米についても、不作時に放出するという硬直的なルールの下、放出時期が遅延した」ため、更なる米価格高騰を招いたと説明した。その上で、石破茂内閣総理大臣は、「生産量に不足があったことを真摯に受け止め、今後の需給ひっ迫に柔軟かつ総合的に対応できるよう、今後の政策の方向性」として「増産に舵を切る」と発言した。 以上を踏まえて、以下質問する。 一 農林水産省は、令和七年九月二十九日から十月五日までの一週間における米の平均価格が五キログラム当たり四千二百五円であったと発表した。米の平均価格は五週連続で四千円台を超え、これまでの最高値である五キログラム当たり四千二百八十五円(同年五月中旬)に迫る水準になった週もあった。 石破内閣総理大臣は令和七年五月二十一日の国家基本政策委員会合同審査会において、「米は三千円台でなければならないと思っております。四千円台なぞということはあってはならない」と発言した。また、小泉農林水産大臣はNHKの番組において、随意契約によって放出する政府備蓄米は五キログラム当たり二千円で店頭に並ぶようにすると述べた。 しかし、米価格が再び急上昇し、五キログラム当たり四千円台を超えたことを受けて、消費者からは「年金生活で、高くてお米が買えないので、今はカリフォルニア米」、「子どもがたくさん食べるので高くて買えない」といった声も出ている。 農林水産省は、値上がりの要因として、政府備蓄米の販売を終えた店舗が増加したことや新米が本格的に出回り始めたことを挙げている。政府のこれまでの米価格高騰対策は失敗であったと考えるが、政府の見解を示されたい。また、米価格の再高騰による消費者負担の増大への対策及びその計画を示されたい。また、いつまでにその計画を実施する予定か、併せて示されたい。 二 石破内閣総理大臣は当該会議において、今後の需給ひっ迫に柔軟かつ総合的に対応するため、増産に舵を切ると発言した。一方、令和八年度農林水産予算概算要求においては、水田を活用して、麦や大豆、飼料用米などの主食用米以外への転作を進める農業従事者等へ助成金を支給する「水田活用の直接支払交付金等」について、前年度予算よりも九十億円多い二千九百六十億円が要求されている。 主食用米以外への転作の奨励と、石破内閣総理大臣が示した増産に舵を切る方針は矛盾すると考えるが、政府の見解を示されたい。 三 小泉農林水産大臣は当該会議において、「増産に向けた政策強化のため、農地の大区画化や、スマート農業技術の活用、新たな農法を通じた生産性向上を図る」と説明した。しかし、中山間地域では、大規模化や機械化は難しく、スマート農業技術の導入は困難である。農林水産省における農業DX構想検討会においても、農業従事者から「常に中山間地域が差別される側にまわる気がしてなりません」との懸念が示されている。 政府が、米の増産のため、農地の大区画化やスマート農業技術の活用を推進した場合において、全国の耕地面積、総農家数、農業粗生産額の約四割を占める中山間地域が切り捨てられると考えるが、政府の見解を示されたい。 四 石破内閣総理大臣は増産に舵を切る方針を述べたが、増産によって米価格が下落することが想定できる。増産に伴う影響や農業従事者の減収を引き起こすその他の事態に備えるとともに、農産物の供給力を保つため、米農家を含む全ての農業従事者に対し安定的に所得を補償する所得補償制度の法制化が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。 右質問する。 |