質問主意書

第219回国会(臨時会)

質問主意書

質問第六号

マンションの管理適正化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年十月二十一日

塩村 あやか


       参議院議長 関口 昌一 殿



   マンションの管理適正化に関する質問主意書

 我が国では、分譲マンションのストック数が令和六年末で約七百十万戸に上るなど、マンションは国民の一割以上が選択する重要な居住形態となっている。一方、築四十年以上のマンションについては、令和六年末現在で約百四十八万戸存在し、二十年後には約三・三倍に増加することが見込まれているほか、七十歳以上の世帯主割合が約五十五%となる「二つの老い」、すなわち、マンションと居住者の双方における高齢化が進行している。老朽化したマンションが適切に管理・再生されないまま放置されると、外壁等の剥落などにより居住者や近隣住民の生命・身体に危害が生じるとともに、周辺の住環境や都市環境が悪化するなど深刻な問題を引き起こす可能性があるため、マンションの管理・再生の円滑化等を図ることが必要となっている。

 こうした状況を踏まえて、建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成十四年法律第七十八号)、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成十二年法律第百四十九号)等を改正する「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和七年法律第四十七号。以下「改正法」という。)が令和七年五月に成立した。しかし、マンションの適正管理について、更に検討すべき課題が残されていると考える。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 改正法により、老朽化したマンションの建替え等に必要な決議の要件が緩和された一方、区分所有者の経済的負担は変わらないため、改正法の施行だけではマンションの建替え等が進むとは限らない。また、資力に乏しい高齢の居住者の中には修繕や建替えの意欲が低い者もいるほか、転売目的の購入や外国人による購入も増えている。将来的に、こうしたマンションは管理不全に陥り、廃墟化する可能性が高いと考える。改正法では、外壁剥落等の危険な状態にあるマンションへの勧告など地方公共団体の権限強化が措置されているが、管理不全に陥る前に建物の適切な管理を促し、長寿命化を図ることが重要である。

 1 廃墟化し、建替え等が困難となるマンションが将来増えていくことは明らかと考えるが、政府として、このような傾向について把握するための実態調査等を行っているか示されたい。

 2 廃墟化を未然に防ぐためにも、マンションの適正管理に関し、その重要性を周知徹底するほか、二十年、三十年先を見据えた抜本的対策を講ずるべきと考えるが、政府の今後の方針を具体的に示されたい。

二 今後、高経年のマンションが増加していくことが見込まれる中で、その管理が適切に行われるためには、管理組合及び区分所有者が、マンションの管理に常に関心を持ち、責任を持って携わっていくことが必要である。

 1 管理組合を機能させるために、分譲マンションの一部住戸を賃貸物件として貸し出している場合でも、賃貸人は主体的にマンション管理に取り組むとともに、賃借人も管理組合の活動に参加することにより、賃貸人と賃借人が共にマンションの管理適正化に取り組むことが必要であり、政府もそれを促すべきと考えるが、政府の見解と具体的な対策を示されたい。

 2 改正法により、区分所有法に区分所有建物の管理に関する区分所有者の相互協力義務が明記されたが、マンションの適正管理は区分所有者の責務であることを政府が広く周知徹底し、国民の意識変容を図るべきであると考える。説明会やセミナーの開催回数等の数値目標を設定した上で取組を推進するべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 管理計画認定制度を活用するなど管理に積極的なマンションがある一方、消極的なマンションもあり、今後、マンション管理の水準が二極化することを懸念している。区分所有者がマンション管理に消極的な要因としては、管理意識の低さのほか、居住者の高齢化の進行、行政の関与への拒否感などが考えられるが、管理不全状態になってしまったマンションを再生することは容易ではなく、地方公共団体が公費で支援することにも限界がある。適正管理への主体的な取組が困難なマンションへの対応を充実させるべきと考えるが、政府の具体的な対策を示されたい。

四 マンション設備の高度化や区分所有者の多様化・高齢化等を背景に、マンション管理を外部の管理会社に委託する管理組合が増えているが、管理組合が管理会社の言いなりになっている場合がある。改正法では、区分所有者への一定の説明・報告を管理会社に対して義務付けているが、区分所有者側に専門的な知識がなければ説明・報告を理解することは難しい。管理組合にマンション管理士などの専門家を派遣して助言する制度を設けている地方公共団体もあるが、これはマンション管理の適正化や管理組合の自立を促すには大変有意義な制度と考える。政府としても、このような制度を積極的に周知して利用を促進するとともに、地方公共団体への支援を強化・拡充するべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。