第219回国会(臨時会)
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質問第四号 匿名・流動型犯罪グループに関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年十月二十一日 塩村 あやか
参議院議長 関口 昌一 殿 匿名・流動型犯罪グループに関する質問主意書 匿名・流動型犯罪グループは、詐欺、強盗・窃盗等の各種犯罪によって得た収益を吸い上げる中核部分は匿名化され、SNSを通じてメンバー同士が緩やかに結び付くなどの特徴を有する。SNS上で高額な報酬を示唆して犯罪の実行者を募集し、応募してきた者に犯罪を実行させるなど、その実行者を言わば使い捨てにしている実態がみられる。これらの犯罪をめぐる情勢は極めて深刻な状況にあり、治安上の脅威となっている。そのため、匿名・流動型犯罪グループを撲滅することが肝要である。 以上を踏まえて、以下質問する。 一 匿名・流動型犯罪グループが関与する犯罪への対策として、政府は、法改正や警察組織の体制整備等を行っていると承知している。その一方で、匿名・流動型犯罪グループが関与する犯罪は増加しており、被害は拡大し続けている。現状、匿名・流動型犯罪グループが関与する犯罪への対策が被害の拡大に追いついていないと考えるが、政府の見解を示されたい。 二 匿名・流動型犯罪グループが関与する悪質ホストクラブ問題への対応として、第二百十七回国会において「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律(令和七年法律第四十五号)」が成立し、一部を除き施行された。しかし、悪質ホストクラブ問題の被害は期待されたほど減っておらず、街頭で売春の客待ち等を行ういわゆる「立ちんぼ」は増えていると認識している。現在の悪質ホストクラブ問題に係る被害状況について政府の認識を示されたい。あわせて、政府の対策及びその効果を示されたい。 三 悪質ホストクラブ問題に関しては、匿名・流動型犯罪グループと密接な関係にあるエージェントが、海外における売春をあっせんする事案が発生しており、そうした事案の撲滅が喫緊の課題となっている。こうしたエージェントに係る具体的な情報が写真などと共に被害者や関係者から提供されたにもかかわらず、特段進展がないまま二年近くが経過しようとしている事案もある。慎重な捜査が肝要であることは承知しているが、命懸けで情報提供した被害者等に何度も警察署に足を運ばせるなど、情報提供者に過度に依存した捜査が行われているといった疑念を招きかねない。こうしたエージェントの迅速かつ確実な検挙に向けて主体的かつ積極的に捜査等を行っているのか、政府の取組状況を示されたい。また、海外における売春あっせん事案に関し、警察等の活動による具体的な成果を示されたい。 四 海外での売春をあっせんする組織を始めとする犯罪組織への捜査に時間を掛けるほど、犯罪組織に捜査を察知され、組織を一旦畳み別組織を立ち上げるなどのいわゆる「検挙逃れ」につながるリスクが高まる。このような検挙逃れを許すことは絶対にあってはならないと考えるが、政府の見解を示されたい。加えて、犯罪組織に係る確度の高い情報提供があるにもかかわらず、警察が積極的に捜査をせず、犯罪組織に検挙逃れを許すことが常態化すれば、警察に情報提供した被害者や内部告発者が、今後、情報提供しなくなる可能性もあると考えるが、政府の認識を示されたい。また、以上の指摘を踏まえて、犯罪組織に対する今後の捜査の考え方や方針を示されたい。 五 政府が匿名・流動型犯罪グループに対する各種取組を行っていることは承知しているが、匿名・流動型犯罪グループの撲滅に向けた具体的な数値目標や撲滅に至るまでの年限を含むロードマップなどは示されていない。匿名・流動型犯罪グループが引き起こす各種犯罪に対する具体的な数値目標や匿名・流動型犯罪グループ撲滅に向けたロードマップ、今後の方向性等を具体的に示すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 六 匿名・流動型犯罪グループは、フィリピン、カンボジア、ミャンマー、ラオス等、東南アジアを中心に海外拠点を設け、日本人に対する詐欺などを行っている。また、海外拠点で犯罪が行われることで、現地の治安が悪化し、日本及び日本人の印象を悪くしていると考える。海外拠点の取締りのために政府が行っている各国の捜査機関との協力を始めとする取組及びその成果を示されたい。加えて、フィリピンを始めとする海外における日本人による犯罪数の推移等について政府の認識を示されたい。 七 匿名・流動型犯罪グループによる犯罪を撲滅するためには、使い捨てにされている末端の実行者を検挙するだけでは不十分であり、首謀者や指示役の検挙、海外拠点の取締り、悪用されている通信手段に係る対策といった匿名・流動型犯罪グループそのものの解体につながる取組、抜本的な対策が必要と考える。匿名・流動型犯罪グループを解体・撲滅するため、政府は今後どのような対策を講ずる予定か、具体的に示されたい。 八 匿名・流動型犯罪グループに対抗するためには、既存の枠組みにとらわれない警察の捜査体制の構築が重要であると考える。警察庁・警視庁は令和七年十月、匿名・流動型犯罪グループ対策に係る新組織を設置したが、新組織に配置する人材とその規模、新組織に期待される成果を示されたい。また、新組織については、海外の体制や機関を参考に体制を構築することが重要であると考えるが、海外の組織体制を調査・研究しているか示されたい。海外の組織体制を調査・研究している場合、調査・研究の対象、新組織の参考とした機関等について具体的に示されたい。 右質問する。 |