質問主意書

第219回国会(臨時会)

質問主意書

質問第三号

物価高対策としてのエネルギー自給率向上及び産業基盤強化等の必要性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年十月二十一日

塩村 あやか


       参議院議長 関口 昌一 殿



   物価高対策としてのエネルギー自給率向上及び産業基盤強化等の必要性に関する質問主意書

 近時の物価高、特に輸入物価の上昇は、エネルギーを始めとする原材料価格の高騰や為替レート等による影響が大きく、資源の多くを輸入に頼る我が国の経済の脆弱性を改めて浮き彫りにしている。特に、円安基調の下でエネルギー資源の輸入コストが増大し、鉱物性燃料の輸入額は二〇二〇年の約十一兆円から二〇二四年には二十五兆円を超える規模へと拡大した。このことは、国富の流出を招くのみならず、家計や企業活動に深刻な打撃を与えている。

 我が国で講ずべき物価高対策は、こうした輸入依存からの脱却を図ることである。ばくだいな輸入コストが生じるエネルギー分野においては、国産の再生可能エネルギー(以下「再エネ」という。)や蓄電池等を活用し、エネルギー自給率を向上させ、自立化を目指すことが重要である。

 二〇一二年七月の固定価格買取制度の開始以降、我が国における再エネの導入は進展してきているものの、太陽光パネルや風力発電の大型風車、更には蓄電池においても、主要な機器・部材については海外製品への依存度が高い。日本企業は技術開発に優れ、初期市場は確保するものの、市場の拡大に伴い産業基盤の強化が十分に図られず、海外勢に市場シェアを奪われる状況が繰り返されている。

 物価高から国民生活を守るため、政府は、中長期的視野に立ったエネルギー自給率の向上に向け、責任ある制度設計とその実施に取り組むべきである。

 また、国民生活の更なる向上を図るためには、我が国の将来を見据えた産業戦略、研究開発強化策等を示すことも必要である。我が国の産業の国際競争力が高まれば、輸出の拡大を通じた海外からの所得の流入が期待できる。政府は物価高対策の実施に当たり、多額の国債発行を余儀なくされているが、これは、将来世代へ負担を先送りすることに他ならず、財政の健全性を確保する上で看過できない。我が国の経済を長期的に展望すれば、投資を促進し、産業の各分野において世界の先導的地位を確立するための施策を講ずることが必要である。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 我が国の二〇二三年度のエネルギー自給率は、わずか十五・三%である。政府は、二〇四〇年度におけるエネルギー需給見通しにおいて、エネルギー自給率三割から四割程度を達成するとしているが、その目標を確実に達成することが重要である。目標の達成に向けた戦略・施策を具体的に示されたい。また、物価高対策としてのエネルギー自給率向上の重要性について、政府の見解を示されたい。

二 政府は、二〇四〇年度における電源構成について、再エネが四割から五割程度になるとしている。エネルギー自給率向上には、国産のエネルギー源である再エネや蓄電池の導入拡大が必須であると考える。エネルギー自給率向上に向けた現状の課題について、政府の認識を示されたい。また、エネルギー自給率向上の確実な実現に向け、政府はどのような計画を策定するのか、具体的に示されたい。

三 太陽光パネル、大型風車、蓄電池分野において、海外勢にシェアを奪われてきた過去の失敗について、政府はその責任をどのように受け止め、要因をどのように分析しているか示されたい。

四 我が国が、かつてのように様々な産業において世界の先導的地位を確立するためには、新たな産業への積極的な投資を行うとともに、投資すべき分野の選択が必要であると考える。いかなる産業戦略を策定・実行し、世界市場の獲得を目指していくのか、政府の具体的方針について示されたい。

五 ペロブスカイト太陽電池、洋上風力、蓄電池の各分野は、エネルギー安全保障と産業競争力強化の両立に資すると考えられる。これらの分野において、国内技術の確立、産業基盤の強化を確実に実現していく必要があると考えるが、その具体的な工程を示されたい。

六 世界市場を獲得するための次世代技術については、重点的に予算を割いて研究開発を支えていくことが必要である。また、研究開発を担う人材の数・質を確保することが不可欠である。近年、我が国では、科学技術分野の研究開発予算が十分に確保されていないとの指摘が各方面からなされている。大学等における基盤的研究費の不足は、中長期的には人材育成に支障を来すなど我が国の国益を毀損しかねない。研究開発を支える予算の拡充や人材育成について、政府の取組方針を具体的に示されたい。

七 我が国で次世代技術の研究開発を推進していくためには、義務教育や高等学校における教育の果たす役割が大きい。質の高い研究者を増やすためには、我が国の将来を担う子供たちへの教育の質を確保することが不可欠と考える。そのためには質の高い教育を行うことができる教師の確保が極めて重要である。教師不足が課題となっている状況下において、質の高い教師を十分に確保する必要性について、政府の認識を示されたい。また、教師の確保に当たっては、抜本的な制度改正や改革が必要であると考えるが、質の高い教師を確保し、我が国の科学技術を再び発展させるための政府の方針について、具体的な計画や数値目標を含めて示されたい。

  右質問する。