第219回国会(臨時会)
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質問第一号 奨学金返還に係る負担軽減策に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年十月二十一日 塩村 あやか
参議院議長 関口 昌一 殿 奨学金返還に係る負担軽減策に関する質問主意書 独立行政法人日本学生支援機構(以下「JASSO」という。)の「令和四年度学生生活調査結果」によると、何らかの奨学金を受給している者(大学学部(昼間部))の割合は、令和四年度で五十五・〇%となっており、令和二年度の四十九・六%から五・四ポイント増加している。大学等の学費を含め物価が上昇している昨今、奨学金に頼らなければ大学等に進学できない者が一層増加することが想定される。 貸与型の奨学金の返還に係る負担軽減策について、政府は、減額返還制度、返還期限の猶予や返還の免除など、奨学金制度の中できめ細やかな対応を図っているとしている。しかし、労働者福祉中央協議会が令和六年六月に実施した「高等教育費や奨学金負担に関するアンケート」調査によれば、JASSOの奨学金利用者の約七割が返済に不安を感じ、四割以上が返済の負担感に苦しんでいる。同調査では、JASSOの奨学金利用者の借入総額の平均額は三百四十四・九万円に上るとの結果も示されており、若者は社会に出た瞬間から多額の借金を背負わなければならず、また、奨学金返還の負担が結婚や出産をためらう要因になっているとの指摘もある。負担軽減策の抜本的な見直しは待ったなしの状況である。 以上を踏まえて、以下質問する。 一 奨学金返還の負担が重いという国民の悲痛な声に対する政府の認識を示されたい。あわせて、政府が把握している負担の実態及び政府に対して国民から寄せられている負担軽減についての意見や要望を示されたい。 二 私自身も奨学金を頼り、その返還には長い期間が掛かった。物価上昇が続く中で、奨学金を返還している者の負担が更に増すことが懸念されており、それを軽減するには、奨学金の返還額について所得控除又は税額控除を認めることが必要であると考える。 税制度においては様々な経費等について所得控除又は税額控除が認められていると承知しているが、両控除の特徴や効果の違いについてそれぞれ説明されたい。あわせて、対象とする経費等の性格や目的とする政策との親和性など、控除を適用する際に考慮する要素や基準等が一般的にあるのか示されたい。 三 令和七年三月二十六日の参議院本会議において、あべ俊子文部科学大臣は、貸与型奨学金の返還について、「返還額を所得控除の対象とすることについては、既に返還を完了した方との公平性の観点や、経済困難にもかかわらず奨学金の貸与を受けずに大学等を卒業した方との公平性の観点などから慎重な検討が必要と考えています。」と答弁している。 1 当該答弁は、税制措置を受けていない者との公平性を勘案するものと思料する。この意味での公平性は、住宅ローン控除、ふるさと納税や認定NPO法人への寄附等の寄附金控除など、他の政策的な税制措置においても創設に際し同様の課題が生じたと思われるが、現に税制措置として成立している。政府は、これらの税制措置には公平性に課題がないと認識しているのか示されたい。 2 前記1の税制措置について公平性に課題がない、あるいは、仮に公平性の観点から課題があるとしてもそれが当該税制措置創設に当たっての障害にはならないと整理した場合、貸与型奨学金の返還額を所得控除の対象としない理由として公平性を掲げるのは不適切と思料するが、政府の見解を示されたい。 四 貸与型奨学金の返還額を所得控除の対象とすることについて、政府は、前記の公平性の観点のほか、所得控除の効果が限定的であること(令和七年五月九日衆議院財務金融委員会、財務省主税局長答弁)を理由に慎重な立場を取っている。 これら以外に、貸与型奨学金の返還額を所得控除の対象とする場合の課題等について政府の認識を示されたい。あわせて、貸与型奨学金の返還額を税額控除の対象とする場合の課題等について政府の認識を示されたい。 五 政府として、これまでに貸与型奨学金の返還額を所得控除や税額控除の対象とすることについて検討を行った実績はあるか。検討を行っていた場合、その検討状況と実現しなかった理由を示されたい。 六 近年、政府は教育無償化や奨学金の拡大といった取組を行っているが、これらの施策の導入前後で教育に係る負担の世代間格差が拡大していると思料する。物価上昇局面における奨学金返還の負担軽減という観点に併せて、当該格差の是正の観点からも、奨学金の返還額について所得控除又は税額控除を認めることが必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。 右質問する。 |