第218回国会(臨時会)
内閣参質二一八第五号 令和七年八月十五日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員山本太郎君提出トランプ関税対策としての内需拡大策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員山本太郎君提出トランプ関税対策としての内需拡大策に関する質問に対する答弁書 一について 米国の関税措置に関する日米協議における議論の詳細については、事柄の性質上、お答えすることは差し控えたい。 二について 今般の米国の関税措置に関する日米協議における合意には、農産品を含め、日本側の関税の引下げは含まれていない。また、米については、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号)附属書一Aの農業に関する協定附属書五の規定を踏まえミニマム・アクセス米を輸入することとしているところ、この制度の枠内で、日本国内の需給状況等も勘案しつつ、必要な米の調達を確保することとしており、「「農業を犠牲にした交渉」を行った」との御指摘は当たらない。 三について お尋ねの「日本国内におけるトランプ関税の経済的影響」については、御指摘の「令和七年七月末時点までの経済的な影響額の評価」及び「今後一年で想定される経済的な影響額の評価」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「令和七年七月末時点まで」の我が国経済への影響については、内閣府が令和七年七月二十九日の閣議に配布した「令和七年度年次経済財政報告」において、「七月中旬時点までで利用可能な統計データを確認すると、マクロ的な輸出数量や生産指数、雇用等の指標の動きに特段の変調は確認されない一方、追加関税の発効直後には、短期的に北米向け乗用車輸出価格が大幅に低下するなど企業収益を下押しする要因がみられており」及び「具体的には、財務省「貿易統計」では、米国向け乗用車輸出の一台当たり単価(ドル換算)が大きく下落しており、日本銀行「輸出物価指数」のうち、北米向け乗用車輸出物価(契約通貨建て)でも、二千二十五年四月以降、約二割の大きな下落となっている」とお示ししているところである。また、御指摘の「今後」の我が国経済への影響については、今般の米国の関税措置に関する日米協議における合意を前提とした同府の試算によると、一定の仮定を置いて、同国における輸入価格の変化を通じた輸入需要の変化が我が国の実質GDPに与える影響を機械的に計算すると、平年度で〇・三パーセントから〇・四パーセント程度押し下げる可能性がある。ただし、当該試算については、同国における輸入価格の変化を通じた影響のみを一定の仮定の下で計算したものであることから、幅を持って理解される必要がある。 四について 御指摘の「本提言」「一」の「消費税廃止」については、急速な高齢化を背景に社会保障給付費が大きく増大する中で、国民が広く受益する社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から、社会保障の財源として位置付けられており、消費税率の引下げを前提とした検討は行っていない。また、「現金給付」については、令和七年七月二十二日の記者会見において、林内閣官房長官が「給付金を含めた物価高対策につきましては、石破総理は、自民党総裁として、「足元の物価高対策については、成長への投資を加速し、賃上げを進めていくことが基本であるが、物価上昇を上回る賃上げが実現できるまでの間の対応については、今回の選挙戦での議論を踏まえ、財政に対する責任も考えながら、党派を超えた協議を呼び掛け、結論を得たいと考えている」、そうした旨述べられているものと承知をしております。政府といたしましては、こうした点も踏まえ、検討を進めていくものと考えております。」と述べたとおりである。 御指摘の「本提言」の「二」については、必ずしも「本提言」に基づき検討したものではないが、「関税の影響を直接受ける中小零細企業への支援」は重要であるとの認識から、株式会社日本政策金融公庫等による貸付けや信用保証協会による信用保証を通じた資金繰り支援を実施している。また、政府としては、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」や「中小企業新事業進出補助金」において優先的に採択を行うこととしている。 御指摘の「本提言」の「三」については、日本銀行による金融政策に関するものであり、その具体的な手法は、同行の金融政策運営に関するものであり、同行の自主性を尊重する観点から、お尋ねについて政府としてお答えすることは差し控えたい。その上で、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二五」(令和七年六月十三日閣議決定。以下「基本方針」という。)において、「日本銀行には、経済・物価・金融情勢に応じて適切な金融政策運営を行うことにより、賃金と物価の好循環を確認しつつ、二パーセントの物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。」としているところである。 いずれにしても、政府としては、基本方針において、「関税措置による国内産業・経済への影響を想定し、資金繰り対策など、必要な支援を行うだけでなく、あらゆる事態を想定して万全の措置を講ずる」こととしており、また、令和七年七月二十五日に「米国の関税措置に関する総合対策本部」を開催し、石破内閣総理大臣から関係閣僚に対して、「全国約千か所の特別相談窓口で、丁寧にお答えできるよう速やかに措置をするとともに、中小企業・小規模事業者の方々の資金繰り等への支援についても、丁寧に御相談に応じること等により、我が国産業や雇用に与える影響の緩和に万全を期してください。」と指示を行ったところである。 |