質問主意書

第218回国会(臨時会)

質問主意書

質問第二〇号

「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」に基づく強制送還の実態に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年八月五日

ラサール石井


       参議院議長 関口 昌一 殿



   「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」に基づく強制送還の実態に関する質問主意書

 出入国在留管理庁は二〇二五年五月二十三日、「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」(以下「ゼロプラン」という。)を公表し、「退去強制が確定した外国人のうち、令和五年改正入管法により送還停止効の例外として送還が可能となった者や重大犯罪者などを中心に、計画的かつ確実に護送官付き国費送還を実施する。」、「出国命令制度や上陸拒否期間短縮制度の積極的な活用を促し、自発的な帰国を促進する。」との方針を打ち出した。国連の特別報告者等から、日本の入国管理制度は既に国際人権法に違反していると批判を受けているが、ゼロプラン導入によって人権侵害が一層加速することが懸念されている。

 東京出入国在留管理局(以下「東京入管」という。)は二〇二五年六月十日、在留特別許可を求めて東京地方裁判所に裁判を提起したネパール人男性に対し、同年七月第五週に強制送還を行う旨を送還予定時期通知書によって通知した。強制送還は一度中止されたが、東京入管は本人の出頭を求めており、出頭すれば収容・送還される可能性があると支援者らは危惧している。

 また、同年七月二十三日には、難民申請中のクルド人家族五人全員が仮放免を更新するため東京入管に出向いたところ収監され、直ちに護送官付きでトルコに強制送還され、トルコの空港に到着した直後に父親が現地の警察に逮捕されたという事案が発生した。同家族には日本生まれの子供も含まれていたとされており、児童の権利に関する条約で規定される各種の権利を侵害する深刻な事案である。

 ゼロプランにより、日本で暮らすことを望む外国にルーツがある人々の排除が加速されることを深く憂慮し、以下質問する。

一 ゼロプラン導入以降、強制送還された外国人の人数(及び未成年者の内数)を、出身国別に示されたい。

二 強制送還の判断基準を示されたい。庇護希望者の地位が判断される前に送還・追放されてはならないとする国際難民法の原則に違反しないために、手続の公正性は確保されているか示されたい。

三 ゼロプラン導入以降、退去強制令書が発付された件数を示されたい。また、子供のいる家族に対して発付された件数及びそのうち子供のいる家族の親のみに対して発付された件数を示されたい。

四 係争中の難民申請者を強制送還することは、日本国憲法が保障する裁判を受ける権利の侵害に当たると考えるが、政府の見解を示されたい。

五 難民申請中の子供のいる家族又はその親のみを強制送還することは、「親と引き離されない権利」、「国外に連れ去られない権利」、「難民の子供が守られ支援を受けられる権利」、「教育を受ける権利」といった、児童の権利に関する条約が規定する各種の権利を侵害すると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。