第217回国会(常会)
内閣参質二一七第二四五号 令和七年七月一日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員浜田聡君提出薬剤師の業務規制及び医療職種の人員配置基準等の見直しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員浜田聡君提出薬剤師の業務規制及び医療職種の人員配置基準等の見直しに関する質問に対する答弁書 一の1について お尋ねの「「四十」という数値基準が定められた経緯、根拠」については、「薬事法施行規則及び薬局及び一般販売業の薬剤師の員数を定める省令の一部改正について」(平成五年四月三十日付け薬発第四一〇号厚生省薬務局長通知。以下「平成五年通知」という。)において、「患者本位の良質な医薬分業を推進するため、薬局において薬事に関する実務に従事する薬剤師の員数の算定方法を、調剤業務により重きを置いた形に改める等現行の薬局及び一般販売業の薬剤師の員数を定める省令等を見直すものである」としているとおりであり、当該見直し後の薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令(昭和三十九年厚生省令第三号)第一条第一項第二号の規定については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第五条第二号の規定に基づき、薬局(医薬品医療機器等法第二条第十二項に規定する薬局をいう。以下同じ。)における薬剤師の業務の実態を踏まえ、また、患者等との対話、薬歴管理、服薬指導、疑義照会などの薬剤師としての業務量を織り込んで、薬局において調剤に従事する薬剤師の員数の最低基準を定めているものである。また、お尋ねの「決定までに要した検討資料」については、保存期間が経過していることなどから、お示しすることは困難である。 一の2について 御指摘の「保健所等による・・・保険指定取消し等の行政処分」の意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、都道府県等においては、医薬品医療機器等法等の規定を踏まえながら、薬局開設者に対する薬事監視を行うなど、必要な対応を行っていると承知しており、政府として、お尋ねのような「件数及び詳細」を把握していない。 一の3及び4について 御指摘の「立法趣旨」、「保護法益」及び「減算」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「処方箋一人一日四十枚規制」の「趣旨」については、一の1についてで述べたとおり、平成五年通知において、「患者本位の良質な医薬分業を推進するため、薬局において薬事に関する実務に従事する薬剤師の員数の算定方法を、調剤業務により重きを置いた形に改める」としているとおりであり、また、御指摘の「処方箋受付回数が月二千回、四千回等を超える薬局に対して」の「調剤基本料の減算措置」の意味するところが必ずしも明らかではないが、特掲診療料の施設基準等(平成二十年厚生労働省告示第六十三号。以下「特掲診療料基準」という。)第十五第一号(二)イに掲げる「処方箋の受付回数が一月に四千回を超えること」等、同号(二)ロに掲げる「処方箋の受付回数が一月に二千回を超えること」等の「調剤基本料の施設基準」に基づき算定することを意味するのであれば、この「趣旨」については、平成二十八年二月十日の中央社会保険医療協議会の答申において、「大型門前薬局の評価の適正化のため、医療経済実態調査に基づく薬局の収益状況、医薬品の備蓄等の効率性等も踏まえ、規模の大きい薬局グループであって、特定の保険医療機関に係る処方せんによる調剤の割合が極めて高い等のいわゆる大型門前薬局については、調剤基本料の評価を見直す」とされているとおりである。 二について 御指摘の「医師・看護師・歯科衛生士・診療放射線技師・理学療法士等の医療職種」、「診療報酬上の施設基準、医療法・薬機法その他の法令、省令、通知等」及び「一人当たりの業務量制限」の具体的に指し示す範囲が明らかではないため、お尋ねについて網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、お尋ねの「医師」の「人員配置基準」については、「診療報酬上の施設基準」においては、例えば、令和四年二月九日の中央社会保険医療協議会総会の答申(以下「令和四年答申」という。)において、「術後患者に対する質の高い疼痛管理を推進する観点から、術後疼痛管理チームによる疼痛管理について、新たな評価を行う」とされたことを踏まえ、診療報酬の算定方法(平成二十年厚生労働省告示第五十九号。以下「算定告示」という。)別表第一区分番号A242―2に新設された「術後疼(とう)痛管理チーム加算(一日につき)」について、基本診療料の施設基準等(平成二十年厚生労働省告示第六十二号。以下「基本診療料基準」という。)第八第三十五号の二の二(二)に基づき、「手術後の患者の疼(とう)痛管理を行うにつき十分な体制が整備されていること」とし、「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和六年三月五日付け保医発〇三〇五第五号厚生労働省保険局医療課長及び歯科医療管理官連名通知)により、「麻酔に従事する常勤の医師」等を配置することとしている。また、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)においては、例えば、病院については、同法第二十一条第一項第一号の規定において、「当該病院の有する病床の種別に応じ、厚生労働省令で定める員数の医師」を有しなければならないこととされているところ、同号の規定による病院に置くべき医師の員数の標準は、医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)第十九条第一項第一号において、「精神病床及び療養病床に係る病室の入院患者の数を三をもつて除した数と、精神病床及び療養病床に係る病室以外の病室の入院患者(歯科、矯正歯科、小児歯科及び歯科口腔(くう)外科の入院患者を除く。)の数と外来患者(歯科、矯正歯科、小児歯科及び歯科口腔(くう)外科の外来患者を除く。)の数を二・五(精神科、耳鼻咽喉科又は眼科については、五)をもつて除した数との和(以下この号において「特定数」という。)が五十二までは三とし、特定数が五十二を超える場合には当該特定数から五十二を減じた数を十六で除した数に三を加えた数」と定められている。 お尋ねの「看護師」の「人員配置基準」については、「診療報酬上の施設基準」においては、例えば、令和六年二月十四日の同協議会総会の答申(以下「令和六年答申」という。)において、「高齢者の救急患者をはじめとした急性疾患等の患者に対する適切な入院医療を推進する観点から、高齢者の救急患者等に対して、一定の体制を整えた上でリハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に提供することについて、新たな評価を行う」とされたことを踏まえ、算定告示別表第一区分番号A304に規定する「地域包括医療病棟入院料(一日につき)」(以下「地域包括医療病棟入院料(一日につき)」という。)について、基本診療料基準第九第六号の四(一)ロに基づき、「当該病棟において、一日に看護を行う看護職員の数は、常時、当該病棟の入院患者の数が十又はその端数を増すごとに一以上であること。ただし、当該病棟において、一日に看護を行う看護職員の数が本文に規定する数に相当する数以上である場合には、当該病棟における夜勤を行う看護職員の数は、本文の規定にかかわらず、二以上であることとする」としている。また、同法においては、例えば、病院については、同法第二十一条第一項第一号の規定において、「当該病院の有する病床の種別に応じ、・・・都道府県の条例で定める員数の看護師」を有しなければならないこととされているところ、同条第三項の規定に基づき、都道府県が条例を定めるに当たって従うべき基準として、同令第十九条第二項第二号において、「看護師及び准看護師」は、「療養病床、精神病床及び結核病床に係る病室の入院患者の数を四をもつて除した数と、感染症病床及び一般病床に係る病室の入院患者(入院している新生児を含む。)の数を三をもつて除した数とを加えた数(その数が一に満たないときは一とし、その数に一に満たない端数が生じたときは、その端数は一として計算する。)に、外来患者の数が三十又はその端数を増すごとに一を加えた数」と定められている。 お尋ねの「歯科衛生士」の「人員配置基準」については、「診療報酬上の施設基準」においては、例えば、令和六年答申において、「質の高い在宅歯科医療の提供を推進する観点から、歯科訪問診療料の評価を見直すとともに、歯科訪問診療の後方支援等を行う病院について新たな評価を行う」とされたことを踏まえ、算定告示別表第二区分番号C000に規定する「歯科訪問診療料(一日につき)」等に新設された「在宅療養支援歯科病院」について、特掲診療料基準第三第六号の四(三)に基づき、「歯科衛生士が一名以上配置されていること」としている。また、同法においては、例えば、病院については、同法第二十一条第一項第一号の規定において、「当該病院の有する病床の種別に応じ、・・・都道府県の条例で定める員数の・・・従業者」を有しなければならないこととされているところ、同条第三項の規定に基づき、都道府県が条例を定めるに当たって従うべき基準として、同令第十九条第二項第二号ただし書において、「歯科、矯正歯科、小児歯科又は歯科口腔(くう)外科」においては「看護師及び准看護師」「のうちの適当数を歯科衛生士とすることができる」と定められている。 お尋ねの「診療放射線技師」の「人員配置基準」については、「診療報酬上の施設基準」においては、例えば、令和四年答申において、「安心・安全で質の高い医療の提供を推進する観点から、病院全体の医療安全の一環として行われる、画像診断報告書や病理診断報告書の確認漏れによる診断又は治療開始の遅延を防止する取組について、新たな評価を行う」とされたことを踏まえ、算定告示別表第一区分番号A234―5に新設された「報告書管理体制加算(退院時一回)」について、基本診療料基準第八第二十九号の五(四)に基づき、「医療安全対策に係る研修を受けた専任の臨床検査技師又は専任の診療放射線技師等が報告書確認管理者として配置されていること」としている。また、同法においては、例えば、病院については、同法第二十一条第一項第一号の規定において、「当該病院の有する病床の種別に応じ、・・・都道府県の条例で定める員数の・・・従業者」を有しなければならないこととされているところ、同条第三項の規定に基づき、都道府県が条例を定めるに当たって参酌すべき基準として、診療放射線技師は、同令第十九条第三項第一号において、「病院の実状に応じた適当数」と定められている。 お尋ねの「理学療法士」の「人員配置基準」については、「診療報酬上の施設基準」においては、例えば、令和六年答申において、「高齢者の救急患者をはじめとした急性疾患等の患者に対する適切な入院医療を推進する観点から、高齢者の救急患者等に対して、一定の体制を整えた上でリハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に提供することについて、新たな評価を行う」とされたことを踏まえ、地域包括医療病棟入院料(一日につき)について、基本診療料基準第九第六号の四(一)ニに基づき、「当該病棟に常勤の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が二名以上配置されていること」としている。また、同法においては、例えば、病院については、同法第二十一条第一項第一号の規定において、「当該病院の有する病床の種別に応じ、・・・都道府県の条例で定める員数の・・・従業者」を有しなければならないこととされているところ、同条第三項の規定に基づき、都道府県が条例を定めるに当たって参酌すべき基準として、理学療法士は、同令第十九条第三項第二号において、「療養病床を有する病院にあつては、病院の実状に応じた適当数」と定められている。 その上で、例えば、同法第一条の目的規定において、「この法律は、・・・病院・・・の・・・管理に関し必要な事項・・・を定めること等により、医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与すること」と定められているところ、御指摘の「医師」等に係るこれらについてのお尋ねの「規定の目的」についても、これと同様であり、また、これらの規定は、令和五年十一月十六日の参議院厚生労働委員会において、政府参考人が「衛生規制として医療機関が有するべき最低限の人員の基準を示したもの」と答弁しているとおりである。 三について 御指摘の「「一人当たりの業務量上限」等の各種規制」の具体的に指し示す範囲が明らかではないが、例えば、御指摘の「処方箋一人一日四十枚規制」については、必ずしも御指摘のような「医療の効率化・省力化に対する制約」とは考えていないところ、いずれにせよ、「規制改革実施計画」(令和四年六月七日閣議決定)において、「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令・・・に規定する薬局において配置が必要な薬剤師の員数に関する規制について、調剤業務の機械化や技術発展による安全性及び効率性の向上を踏まえ、薬剤師の対人業務を強化する観点から、規制の在り方の見直しに向け、課題を整理する」とされたことを踏まえ、厚生労働省医薬・生活衛生局長(当時)が参集を求めて開催していた、薬剤師の業務等に関する専門的知見を有する有識者により構成される「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が令和四年七月に取りまとめた「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループとりまとめ~薬剤師が地域で活躍するためのアクションプラン~」において、「現状の診療報酬の体系が処方箋受付時の評価が中心であることを踏まえれば、単純に四十枚規制を撤廃又は緩和すると、処方箋の応需枚数を増やすために、処方箋受付時の対人業務(服薬指導等)が軽視される危険性がある。・・・このため、処方箋の四十枚規制の見直しを検討する場合は、厚生労働省においては、診療報酬における評価等も含めて、対人業務の充実の方向性に逆行しないように慎重に行うべきである」等とされているところであり、これらを踏まえ、厚生労働省において、引き続き、必要な検討を進めてまいりたい。 |