質問主意書

第217回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一七第二四二号
  令和七年七月一日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員浜田聡君提出FIT・FIP制度による市場のゆがみ及び再エネ賦課金による国民負担に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出FIT・FIP制度による市場のゆがみ及び再エネ賦課金による国民負担に関する質問に対する答弁書

一の1について

 お尋ねの「見込み」については、令和七年四月二十三日の衆議院経済産業委員会において、武藤経済産業大臣が「賦課金の水準の想定につきまして、二〇一二年の制度の導入時点では、FIT制度によって再エネがどの程度増えるか予測が困難だったということ、これは定量的な将来見通しは持っていなかったものと承知をしているところです。」と述べているとおりである。

一の2及び3並びに九の2について

 お尋ねの「制度設計当時、政府はどのように評価していたか」については、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第五十九号)による改正前の電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成二十三年法律第百八号。以下「旧法」という。)第三条第四項において規定されていたとおり、経済産業大臣が同条第一項に規定する調達価格等を定めるに当たっては、旧法第十六条第一項に規定する賦課金の負担が電気の使用者に対して過重なものとならないよう配慮しなければならないものと認識していたところである。

 また、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(平成二十三年法律第百八号。以下「法」という。)第三十六条第一項に規定する賦課金(以下「賦課金」という。)が、再生可能エネルギーの導入拡大を促進するため、法に基づき、再生可能エネルギーの導入拡大のメリットを受ける電気の使用者に御負担いただいているものであるところ、お尋ねの「経済に及ぼす影響」及び「国民負担の増大」については、抑制を図るべきものであると認識しており、法に基づく入札制度の導入、法第八条の九第一項に規定する価格目標(以下「価格目標」という。)の設定等の再生可能エネルギー発電設備の効率的な導入を促す仕組みの活用等を通じ、引き続き、国民負担の抑制を図りながら、再生可能エネルギーの導入拡大を促進してまいりたい。

二及び四について

 お尋ねの「当該構造が市場競争に与える影響及びコスト最適化を阻害している可能性」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「理由」については、旧法附則第七条の規定に基づき、旧法の施行の日から起算して三年間は、旧法第三条第二項に規定する特定供給者が受けるべき利潤に特に配慮して同条第一項に規定する調達価格を定めていたためであり、また、お尋ねの「国民負担が高まることに対する経済的な悪影響などの懸念点」についての考えについては、一の2及び3並びに九の2についてでお答えしたとおりである。

 なお、例えば、法第十四条は、法第二条第五項に規定する認定事業者(以下「認定事業者」という。)が法第九条第四項の認定(法第十条第一項の変更又は追加の認定を含む。以下「認定」という。)を受けた日から起算して一定の期間内に再生可能エネルギー発電事業を開始しなかったときは、当該認定は、その効力を失う旨を規定しており、政府としては、国民負担の抑制を図るため、当該規定に基づき厳格に対応しているところである。

三について

 お尋ねの「制度設計当初の想定」については、定量的な「設備認定数」を設定していたものではないが、「実績に対する分析及び評価」については、例えば、令和七年二月二十七日の衆議院予算委員会第七分科会において、武藤経済産業大臣が「FIT制度が導入された二〇一二年度からこれまで約十年で再エネ発電量を倍増させており、平地面積当たりの太陽光発電の導入量は既にドイツやイギリスよりも大きく、主要国最大となっております。」と答弁しているとおりである。

五について

 経済産業大臣において、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則(平成二十四年経済産業省令第四十六号)第五条第一項第六号及び第七号の規定に基づき、認定事業者から、再生可能エネルギー発電設備の設置に要した費用に関する情報等について提供を受けているところであり、現時点において、お尋ねの「IRR」の「制度創設時から令和六年度までの実績ベースでの年次推移」について把握すべきとは考えていない。

六について

 お尋ねの「事業者の収益構造が固定化されている」、「発電事業者の投資インセンティブが働いておらず、電力市場への統合につながっていないおそれがある」及び「バランシング義務やアグリゲーター制度の実効性が低い場合」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「FIP制度」においては、一の2及び3並びに九の2についてで述べた「FIT制度」と同様に、賦課金が、再生可能エネルギーの導入拡大を促進するため、法に基づき、再生可能エネルギーの導入拡大のメリットを受ける電気の使用者に御負担いただいているものであるところ、「国民負担への影響」については、抑制を図るべきものであると認識しており、法に基づく入札制度の導入、価格目標の設定等の再生可能エネルギー発電設備の効率的な導入を促す仕組みの活用等を通じ、引き続き、国民負担の抑制を図りながら、再生可能エネルギーの導入拡大を促進していくことが重要であると考えている。

 その上で、お尋ねの「今後、政府が行うことを予定している取組」については、現在、具体的な検討を進めているところであり、網羅的にお示しすることは困難であるが、政府として、引き続き、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第十五号の三に規定する特定卸供給事業の促進等を通じ、必要な事業環境の整備に取り組んでまいりたい。

七の1について

 お尋ねの「電力市場への定着状況」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、政府として、各電源の発電コストについては、令和七年二月に総合資源エネルギー調査会基本政策分科会発電コスト検証ワーキンググループが取りまとめた「発電コスト検証に関するとりまとめ」において試算を行っている。この中で、令和五年における各電源のキロワットアワー当たりの発電コストは、「政策経費あり」において、事業用太陽光発電は十・九円、住宅用太陽光発電は十四・五円、陸上風力発電は十六・三円、着床式洋上風力発電は三十・九円、地熱発電は十六・一円から十六・八円まで、中水力発電は十三・〇円、小水力発電は二十六・六円、バイオマス発電は三十二・九円、原子力発電は十二・六円以上、LNG火力発電は十九・一円、石炭火力発電は二十四・八円、石油火力発電は四十三・八円、天然ガスコージェネレーションは十五・八円から十六・九円まで等と試算している。

 また、令和六年十二月末時点における、認定を受けた再生可能エネルギー発電事業計画のうち、当該再生可能エネルギー発電事業計画に係る再生可能エネルギー発電設備が法第二条の二第一項に規定する交付対象区分等に該当するものの件数については、太陽光発電は千五百六十三件、風力発電は五十四件、地熱発電は零件、水力発電は四十四件及びバイオマス発電は四十件である。

七の2について

 お尋ねの「電力市場に定着していないと評価されるエネルギー」の具体的に意味するところが明らかではなく、「定着する時期の見込み及び補助を行う時期」をお答えすることは困難である。

八について

 政府として、御指摘の「電気料金高騰対策として再エネ賦課金の一部を国費により肩代わりする措置」は講じておらず、これを前提としたお尋ねについてお答えすることは困難である。

九の1について

 お尋ねの「制度全体の見直しや段階的縮小の必要性」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「FIT制度及びFIP制度」の在り方については、例えば、関係審議会において、再生可能エネルギーの発電コスト等を踏まえ、法に基づく支援の在り方を検討するなどしているところであり、引き続き、必要な検討を行っていく考えである。