第217回国会(常会)
内閣参質二一七第二三七号 令和七年七月一日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員神谷宗幣君提出「経営・管理」の在留資格を悪用した外国人移住の実態に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員神谷宗幣君提出「経営・管理」の在留資格を悪用した外国人移住の実態に関する再質問に対する答弁書 一について お尋ねの「名義貸しや形式的な経営実態による「経営・管理」ビザの不正取得事案」及び「こうした不正取得」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、仮にこれが出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)別表第一の二の表の経営・管理の項の下欄に掲げる活動の実態がないにもかかわらず、「経営・管理」の在留資格を取得しようとする事案についてのお尋ねであれば、当該在留資格に係る入管法第七条の二第一項に規定する在留資格認定証明書の交付申請等(以下「在留資格認定証明書交付申請等」という。)の中には、事業の実態に疑義がある事案があることは承知しているが、その件数及びこのうちお尋ねの「摘発・退去強制処分に至った事案」の内容及び件数については、在留資格認定証明書交付申請等に対する処分についてその理由別の統計を作成しているものではないため、お答えすることは困難である。また、こうした事業の実態に疑義がある事案への対策として、在留資格認定証明書交付申請等に係る審査における実地調査の強化に努めるとともに、国家公務員全体の定員の削減が求められている中で、適正な出入国在留管理行政の遂行のため、必要な人員の確保に努めてきたところであり、引き続き、必要な調査を含めた厳格な審査を行うこと及び必要な人員の確保に努めてまいりたい。 二の1について お尋ねの「ペーパーカンパニーの活用事例」については、在留資格認定証明書交付申請等に係る審査において、事業の実態がないことが判明した場合には、不交付処分等を行っている。お尋ねの「移民ブローカーによる斡旋事例」については、その具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、「経営・管理」の在留資格に係る入管法第二十条第二項の規定による在留資格の変更の申請に関し当該申請の取次ぎをした者が不正行為を行ったと疑われる事例があることは把握している。 二の2について 前段のお尋ねについては、例えば、本年二月、入管法違反を始めとする犯罪を未然に防止し、外国人の在留の公正な管理を図るため、東京出入国在留管理局、警視庁及び日本行政書士会連合会の三者間で相互に情報共有を図るための協定書を締結し、入管法等の関係法令に違反する事案や違反するおそれのある事案に関する情報交換等を行うこととしており、引き続きこのような取組を通じて適切な対応を行ってまいりたい。 後段のお尋ねについては、「こうした不正申請に関与した斡旋業者」に対する「行政処分又は刑事告発に至った事例」の有無及び内容については、政府として網羅的かつ具体的に把握していないため、「当該事例の概要」についてお答えすることは困難である。 三の1について お尋ねの「実態のない会社の設立が容易である」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、会社の設立の登記の申請書には、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第四十七条第二項等の規定に基づいて、登記すべき事項に係る事実関係等を証明するための書面を添付しなければならず、当該書面を添付しないときは、登記官は、同法第二十四条の規定により、その登記の申請を却下しなければならないものとされている。このことにより、会社の設立の登記において、登記手続の迅速性の要請にも配慮しつつ、実体に合致しない登記がされることの防止が図られている。 三の2について 現行制度においても、「経営・管理」の在留資格をもって在留する者からの入管法第二十一条第二項の規定による在留期間更新許可の申請の際には、出入国管理及び難民認定法施行規則(昭和五十六年法務省令第五十四号)別表第三の七の経営・管理の項の下欄に掲げる「経営又は管理に係る事業の損益計算書」及び「年間の収入及び納税額に関する証明書」の提出を求めており、その審査において事業が継続しているか否か等を確認している。また、当該申請に係る審査の際に事業の実態に疑義があれば、審査を担当する職員が実地調査等の必要な調査を実施した上で、当該申請の許否の判断を行っている。 四の1について お尋ねについては、把握していない。 四の2について お尋ねの「医療保険制度の適正管理を徹底するため」の「所得証明の義務化や保険料の前払制度」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、「医療保険制度」の「保険料」の納付については、令和七年四月三日の参議院厚生労働委員会において、政府参考人が「我が国の医療保険制度は、適正な在留資格を有し、日本国内に住所を有する外国人については原則として加入し、保険料を納めていただきながら保険給付が受けられるという仕組みになっております。このことは、要するに被保険者の支え合いで成り立っている医療保険制度でございますので、外国人の方にも適切に保険料納付していただくこと、極めて重要であるというふうに考えております。これまでの取組といたしましては、保険者において、外国語によるリーフレット作成などによる制度の周知、外国人を含め保険料の滞納者への納付の勧奨や相談等の取組を行っておりますが、引き続き、保険料を適切に納付いただけるよう、関係省庁ともよく連携しながらしっかり取り組んでいきたいと考えております。」と答弁したとおりである。 五の1について 御指摘の「国防動員法」及び「国家情報法」は他国の法律であり、また、お尋ねの「日本に居住する中国人が中国政府の指示により政治工作や影響力工作に従事するリスク」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、政府としては、カウンターインテリジェンスに関する機能の強化は重要と認識しており、政府の各行政機関において、必要な取組を進めてまいりたい。 五の2について お尋ねの「自治体レベルでの外国人受入れ促進が外国政府の影響力拡大に利用される懸念」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。 六の1について 住宅宿泊事業法(平成二十九年法律第六十五号)第二条第三項に規定する住宅宿泊事業及び国家戦略特別区域法(平成二十五年法律第百七号)第十三条第一項に規定する国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業を営む外国人の在留資格を網羅的に把握していないが、「経営・管理」の在留資格をもってこれらの事業を経営する者が存在することは把握している。 六の2について お尋ねの「特区民泊に関する運用実態の調査を強化し」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「経営・管理」等の在留資格認定証明書交付申請等に係る審査において、六の1でお尋ねの「民泊事業」について、その事業の実態に疑義があれば、審査を担当する職員が実地調査等の必要な調査を実施しており、正当な理由なく「経営・管理」等の在留資格に該当する活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること等が判明した場合は、入管法第二十二条の四第一項の規定による在留資格の取消手続を執ることとしているほか、入管法第二十四条に定める退去強制事由に該当する外国人に対しては、入管法に定める退去強制手続を執ることとしており、引き続きこれらの対応に努めてまいりたい。 |