第217回国会(常会)
内閣参質二一七第二二二号 令和七年七月一日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員石川大我君提出男性のDV被害と自殺に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員石川大我君提出男性のDV被害と自殺に関する質問に対する答弁書 一について 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成十三年法律第三十一号。以下「配偶者暴力防止法」という。)の前文において、「配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合女性であり、経済的自立が困難である女性に対して配偶者が暴力を加えることは、個人の尊厳を害し、男女平等の実現の妨げとなっている。このような状況を改善し、人権の擁護と男女平等の実現を図るためには、配偶者からの暴力を防止し、被害者を保護するための施策を講ずることが必要である。」とされているところであり、政府としてもこのような認識の下で、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に取り組んでいる。 二について お尋ねについては、令和六年五月十四日の参議院法務委員会において、政府参考人が「配偶者からの暴力は、加害者に加害の意識が薄い傾向にあり、被害が深刻化しやすいという特性がございます。また、加害者は、自らの行為を正当化する場合や、自らが被害を受けているとの認識を持つ場合があることも指摘されております。被害者からの相談対応をする職員においても、こうした加害者の特性等を十分理解した上で対応に当たる必要があると考えております。」と答弁したとおりであり、また、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護は、一つの機関だけで対応することは困難であることから、幅広い分野にわたる関係機関、関係団体、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関連する職務に従事する者その他の関係者との連携及び協力を図る場として、配偶者暴力防止法第五条の二第一項に規定する協議会の積極的な活用を促している。 三について 政府としては、男性を含む多様な被害者が相談しやすい環境の整備は重要であると認識しており、例えば、地方公共団体に対し、被害者の性別にかかわらず、相談しやすい環境の整備に配慮することが望ましいことを周知するなど、地方公共団体の取組を促すとともに、配偶者暴力相談支援センターにおける相談の対応等において、多様な被害者の立場に立った配慮が行われるよう、配偶者暴力相談支援センターにおける取組の状況を整理し、地方公共団体に情報提供を行っており、今後も引き続き、これらの取組を進めていくこととしている。 四について 御指摘の「「DVを原因とする自殺は男性の方が多い」との主張」の具体的な内容が必ずしも明らかではなく、また、お尋ねの「断定」の意味するところが必ずしも明らかではないが、警察庁の自殺統計における「自殺の原因・動機」のうち、「夫婦関係の不和(DV)」は、「婚姻関係にある配偶者との不仲を苦にするもので、不仲の原因が配偶者間の暴力(性的犯罪を含む。)に起因する場合をいう。」と定義されているところ、厚生労働省及び同庁が公表し、同省のホームページに掲載されている資料「令和六年中における自殺の状況」においては、「自殺の多くは多様かつ複合的な原因及び背景を有しており、様々な要因が連鎖する中で起きていることに留意が必要である」とした上で集計結果を公表しており、当該集計結果のうち、「自殺の原因・動機」として「夫婦関係の不和(DV)」に分類されたものについて、政府として、当該集計結果をもってお尋ねのように「DVを原因とする自殺」は「男性の方が多い」との「評価」をしているわけではない。 五について 御指摘のような「事件」や「自殺又は自殺未遂の例」の発生状況や背景等については、政府として網羅的に把握していないが、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等のための施策に関する基本的な方針(令和五年内閣府・国家公安委員会・法務省・厚生労働省告示第一号)において、「加害者(配偶者からの暴力が行われた場合における当該配偶者又は配偶者であった者をいう。・・・)に罪の意識が薄いという傾向にある。このため、周囲も気付かないうちに暴力がエスカレートし、被害が深刻化しやすいという特性がある。」と示しているところ、個々の事案に応じて、被害者やその関係者等の安全の確保に関係機関が連携して取り組んでまいりたい。 |