第217回国会(常会)
内閣参質二一七第二二一号 令和七年七月一日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員石川大我君提出DVからの避難等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員石川大我君提出DVからの避難等に関する質問に対する答弁書 一について 配偶者からの暴力は、相談への対応、保護、自立支援等多くの段階にわたって、多様な関係機関等による切れ目のない支援を必要とする複雑な問題であり、被害者の保護は、一つの機関だけで対応することは困難であることから、幅広い分野にわたる関係機関、関係団体、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関連する職務に従事する者その他の関係者が様々な形で効果的に連携し、被害者の支援を行っていくことが重要であるとの認識の下に、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成十三年法律第三十一号)に基づく配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等のための施策に関する基本的な方針(令和五年内閣府・国家公安委員会・法務省・厚生労働省告示第一号)を策定し、被害者の支援に取り組んでいるところである。 二について お尋ねについては、「「実子誘拐指南、教唆」、「実子誘拐ビジネス」等と非難すること」の具体的に意味するところが明らかではなく、また、犯罪の成否は、捜査機関により収集された証拠に基づき個々に判断されるべき事柄であり、さらに、民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百九条の不法行為に該当するか否かについては、個別具体的な事案に応じて判断されるべきものであることから、お答えすることは困難である。 なお、一般論として申し上げれば、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」と認められる場合には刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百三十条第一項の名誉毀損罪が、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し」たと認められる場合には同法第二百三十三条の信用毀損罪が、「人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした」と認められる場合には同法第百七十二条の虚偽告訴等罪が、それぞれ成立し得ることとなり、また、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うこととなる。 三の1について 御指摘の「このような誤解又は曲解を助長している一因が警察庁の通達・・・であると考えられる」及び「国会議員などが積極的に宣伝しており、「実子誘拐・連れ去り」対策であると捉えられてしまっている現状」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、警察においては、配偶者間における子の養育等を巡る事案に係る被害の相談等があれば、平成十五年三月十八日最高裁判所第二小法廷決定及び平成十七年十二月六日最高裁判所第二小法廷決定も踏まえて対応することが重要であると考えており、現時点では、「配偶者間における子の養育等を巡る事案に対する適切な対応について(通達)」(令和五年三月二十九日付け警察庁丁捜一発第三十三号警察庁刑事局捜査第一課長通達。以下「令和五年通達」という。)を見直す考えはない。 三の2について 御指摘の「あたかも同居親による「実子誘拐・連れ去り」なるものが刑事事件となり得る、有罪たり得る根拠であるかのように流布されている状況」及び「未成年者略取誘拐罪の構成要件及び適用可能性について抽象的一般的に述べることは、このような誤誘導を防ぐものではなく、むしろ助長するものであることは明らかである」の具体的に意味するところ並びに「政府の説明、発信の在り方を改めるべき」とのお尋ねの趣旨が明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。 三の3について お尋ねの「同通達は、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律等の運用上の留意事項について」(令和六年三月一日付通達)といわば対のものであるとの認識が警察庁より示されている」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、警察においては、配偶者間における子の養育等を巡る事案に係る被害の相談等があれば、令和五年通達及び「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律等の運用上の留意事項について(通達)」(令和六年三月一日付け警察庁丙人少発第十三号、丙人発第三十五号、丙犯被発第十号、丙刑企発第十九号及び丙捜一発第十号警察庁生活安全局長、長官官房長及び刑事局長通達)等も踏まえつつ、法と証拠に基づき適切に対応しているものと認識している。 四について 犯罪の成否は、捜査機関により収集された証拠に基づき個々に判断されるべき事柄であることから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、一般論として申し上げれば、二についてで述べたとおり、「人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした」と認められる場合には刑法第百七十二条の虚偽告訴等罪が成立し得ることとなる。 五について お尋ねの「親子交流の調停、審判を申し立てる等の権利」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「DV等支援措置」がとられたこと自体は、民法上の親子関係に影響を及ぼすものではなく、子を監護していない方の親は、「DV等支援措置」の申出の相手方となっているとしても、親子交流を許容することを求めて、家庭裁判所に家事調停又は家事審判の申立てをすることができる。 六について お尋ねについては、総務省としては、「ドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための住民基本台帳事務における支援措置に関する事務の適正な執行の徹底について」(令和元年六月二十七日付け総行住第三十五号総務省自治行政局住民制度課長通知)等の通知において、お尋ねの「DV等支援措置の安全な運用」を徹底すべきであることを助言するとともに、毎年度実施している市区町村の住民基本台帳事務担当者を対象とした説明会等において事務の適正な執行を要請してきたところである。また、「DV等支援措置」の実施に当たっては、警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等の関係機関の意見を聴取し、支援の必要性を確認することとしており、各市区町村においては、関係機関との必要な情報の共有を含め、「DV等支援措置」に係る事務の適正な執行に努めているものと考えている。 |