第217回国会(常会)
内閣参質二一七第二一七号 令和七年七月一日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員浜田聡君提出医療・福祉の非営利性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員浜田聡君提出医療・福祉の非営利性に関する質問に対する答弁書 一の前段について お尋ねの「営利を目的とした病院の開設を認めていない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第七条第七項において「営利を目的として、病院・・・を開設しようとする者に対しては、・・・許可を与えないことができる」と規定している理由等については、先の答弁書(令和七年四月十五日内閣参質二一七第八四号。以下「前回答弁書」という。)一から三までについてでお答えしたとおりである。 一の後段について 平成二十九年六月一日の参議院厚生労働委員会において、塩崎厚生労働大臣(当時)が「医療では、医師の裁量が大きく、また、患者が十分な情報を持っていない、いわゆる情報の非対称性と呼ばれているものですが」と述べた上で、「こういう中で、株式会社等の営利を目的とした経営主体による医療機関の経営への参入につきましては、まず第一に、患者が必要とする医療と株式会社の利益を最大化するという場合の医療とが一致をしないということがあり得て、適正な医療が提供されないおそれがあるというのがまず第一点にございます。・・・それから、利益を上げるために不必要なあるいは不要な診療が行われて、患者さんにとってもプラスにならず、・・・こういうような懸念が指摘をされている」旨述べているとおりであり、「非営利法人であっても情報の非対称性は存在すると考えるが、政府の見解を示されたい」とのお尋ねの趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難である。 二の前段について お尋ねについては、「規制緩和推進三か年計画」(平成十年三月三十一日閣議決定)において、「各種参入規制を緩和・撤廃、国際的整合化等の方向で見直しを行う」とされたことを踏まえ、御指摘のように「訪問看護」に「営利企業の参入が認められている」ところ、その「理由」については、例えば、「規制改革についての第二次見解」(平成十一年十二月十四日行政改革推進本部規制改革委員会公表)において、「多様なサービス提供主体の参入を促し、介護サービスの供給量を増加させる」等としているとおりである。 二の後段について お尋ねに関しては、一の後段についてで述べたとおり、平成二十九年六月一日の参議院厚生労働委員会において、塩崎厚生労働大臣(当時)が「医療では、医師の裁量が大きく、また、患者が十分な情報を持っていない、いわゆる情報の非対称性と呼ばれているものですが、こういう中で、株式会社等の営利を目的とした経営主体による医療機関の経営への参入につきましては、・・・適正な医療が提供されないおそれがある」旨述べているところ、指定訪問看護(健康保険法(大正十一年法律第七十号)第八十八条第一項に規定する指定訪問看護をいう。以下同じ。)については、指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成十二年厚生省令第八十号)第十六条第二項の規定において、「指定訪問看護事業者は、指定訪問看護の提供の開始に際し、主治の医師による指示を文書で受けなければならない」等としていることから、当該「株式会社等の営利を目的とした経営主体による」指定訪問看護への「参入」であっても、その実施に当たっては、必ずしも指定訪問看護事業者(同法第八十八条第一項の規定により厚生労働大臣の指定を受けた指定訪問看護事業者をいう。以下同じ。)の「裁量が大き」いとは言えないことから、御指摘の「病院」への「参入」と単純に比較することは適当ではないと考えている。その上で、御指摘の「営利法人」が指定訪問看護を実施する場合も含め、必ずしも御指摘のような「懸念が生じない」というわけではないことから、御指摘の「営利法人」が指定訪問看護事業者として指定を受けるためには、同法第八十九条第四項第一号、指定訪問看護事業者の指定を受けることができる者(平成四年厚生省告示第三十二号)第十三号等の規定に基づき、厚生労働大臣の認定を受ける必要があるところ、当該認定に際しては、「指定訪問看護事業者の指定を受けることができる者について」(平成十二年三月三十一日付け保発第七十三号・老発第三百九十九号厚生省保険局長・老人保健福祉局長連名通知)において、「申請者の定款又は寄附行為等の目的、資産・収支の状況、当該申請に係る訪問看護等の事業を行う事業所の概要、併設施設の状況等からみて、指定訪問看護等の事業を健全に永続的に運営できると認められる者についてのみ認定する」ことと示しているほか、指定訪問看護が利用者の個別の状況に応じて適切に提供されるよう、地方厚生局等を通じて指定訪問看護事業者に対して、「指定訪問看護の提供に関する取扱方針について」(令和六年十月二十二日付け厚生労働省保険局医療課事務連絡)において、「訪問看護ステーションの看護師等が利用者の個別の状況を踏まえずに一律に訪問看護の日数等を定めるといったことや、利用者の居宅への訪問に直接携わっていない指定訪問看護事業者の開設者等が訪問看護の日数等を定めるといったことは認められない」と示しているところである。 三の前段について お尋ねについては、令和五年五月十日の参議院決算委員会において、政府参考人が「特別養護老人ホームにつきましては、重度の方が入居するついの住みかという側面がございましたり、低所得の方が入居しているという実態がございます。また、市町村による措置入所の受入先という側面もございますので、こういった事情を総合的に踏まえまして、その設置主体を地方公共団体や社会福祉法人等に限定されているところでございます」と答弁しているとおりである。 三の後段及び五の前段について 御指摘の「病院」に関しては、御指摘のように「その他の医療・・・事業と比較して「高い公益性」を有する」及び「その他の医療・・・事業は「高い公益性を有する事業」ではない」とは述べていないため、このことを前提としたお尋ねについてお答えすることは困難である。また、御指摘の「特別養護老人ホーム」に関しては、三の前段についてで述べたとおりである。 四について お尋ねについては、例えば、平成二十五年十月三十日の衆議院厚生労働委員会において、田村厚生労働大臣(当時)が「株式会社は、利益を出して株主に還元する、それが使命で、それをやらなければ経営者自体がかわってしまう、そういう使命を帯びているんですね。ですから、そういう意味からしますと、やはり、非営利であるところよりかは、利益を何としても、それが例えば、完全に悪いことではない、違法ではない、しかし、こういうやり方をやれば利益がとれるんだということになれば、いろいろな方法を合法的にお考えになられる」と答弁し、また、前回答弁書五の3についてで述べたとおり、平成二十七年三月二十五日の衆議院厚生労働委員会において、塩崎厚生労働大臣(当時)が「医療は、税金を払っているけれども非営利を追求するということになっています。株式会社の参入というのがよく言われますが、・・・株式会社の本質はやはり株主が配当を受けるということ」と答弁しているとおりである。 五の後段について お尋ねの「訪問看護」と「病院」の「違い」に関しては、二の後段についてで述べたとおりである。 また、お尋ねの「訪問看護」と「特別養護老人ホーム」の「違い」については、その趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難である。 |