質問主意書

第217回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一七第二一六号
  令和七年七月一日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員浜田聡君提出特定健康診査・特定保健指導に係る費用と効果の検証及び制度見直しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出特定健康診査・特定保健指導に係る費用と効果の検証及び制度見直しに関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 お尋ねの「特定健診等に係る国全体の年間支出額の総額」及び「公的財源の累積支出額」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、第二百十六回国会提出の「令和五年度各省各庁歳出決算報告書」における「支出済歳出額」は、「警察共済組合特定健康診査・保健指導補助金」が三百五十八万三千円、「全国健康保険協会特定健康診査・保健指導補助金」が十九億七千六百四十一万千円、「健康保険組合特定健康診査・保健指導補助金」が二十七億千七百四十三万七千円、「国民健康保険組合特定健康診査・保健指導補助金」が五億七千三百二十九万八千円、「国民健康保険特定健康診査・保健指導負担金」が百二十九億三千五百九十九万五千円であり、これらを合計すると百八十二億六百七十二万四千円である。また、平成二十年度から令和五年度までのこれらの合計額は、三千三百九億五千百二十二万円である。

一の3について

 御指摘の「費用対効果」及び「政策評価」に関しては、例えば、令和六年度行政事業レビューシートにおいて、「特定健康診査・保健指導に必要な経費」について、「点検・評価」を行い、「点検結果」として、「特定健康診査・特定保健指導の実施の推進は、加入者の健康の保持・増進及び医療費適正化の観点から重要な施策であり、国民や社会のニーズを反映している。実施主体である保険者に対して、国が各法に基づき特定健康診査・特定保健指導に要する経費の負担(補助)を行う。第四期医療費適正化計画等における特定健康診査・特定保健指導の実施率等の目標値を達成するために必要な事業であり、優先度が高い。高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、四十歳以上七十五歳未満の被保険者等に対する特定健康診査・特定保健指導に直接的に必要な費用に限定している。各法に基づき保険者に対する負担(補助)率を一/三(一/三相当)に設定し、各保険者と各健診機関との契約状況から健診に係る費用を算定しており効率的である」等としているところである。

一の4について

 御指摘の「特定健診等の費用」の具体的に指し示す範囲が明らかではないため、お答えすることは困難である。

二の1について

 御指摘の「当該研究」については把握しているが、個別の研究に関して政府として見解を述べることは差し控えたい。

二の2について

 お尋ねについては、例えば、平成二十六年度の厚生労働科学研究費補助金による政策科学総合研究事業「特定保健指導の費用対効果の評価に関する研究」(以下「本件研究」という。)において、「特定保健指導による将来的な医療費および健康状態への影響を推計するために、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病性腎症による人工透析導入の発症抑制に関して、マルコフモデルを用いた推計方法を開発し、二十年間の推計を試みた。その結果、特定保健指導の実施はこれらの疾患の発症を抑制し、介入の費用を考慮しても費用対効果に優れることが示唆」されたところである。また、「予防・健康づくりに関する大規模実証事業(特定健診・特定保健指導の効果的な実施方法に係る実証事業)」(以下「本件事業」という。)においては、「特定健診・保健指導の効果的な実施方法に関する調査研究一式 仕様書」に基づき、「NDBに含まれる二千八~二千十八年の三十九~七十五歳の約四千四百万人分」を対象として分析を行っており、厚生労働省健康局長(現在の厚生労働省健康・生活衛生局長)及び保険局長が参集を求めて開催している、医療保険者や特定健診(高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号。以下「法」という。)第十八条第一項に規定する特定健康診査をいう。以下同じ。)及び特定保健指導(同項に規定する特定保健指導をいう。以下同じ。)に関する専門的知見を有する有識者等により構成される「第四期特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会」において、特定健診及び特定保健指導の在り方についての検討が行われてきたところ、令和三年十二月九日に開催された第一回同検討会の資料二―二「予防・健康づくりに関する大規模実証事業(特定健診・特定保健指導の効果的な実施方法に係る実証事業)」において、本件事業の効果分析の結果、「我が国の特定保健指導の効果分析」に、「体重・HbA1cについては統計学的に有意な減少が認められた」ことが確認されているところである。

二の3について

 お尋ねについては、二の1についてで述べたとおり、個別の研究に関して政府として見解を述べることは差し控えたい。なお、政府としては、二の2についてで述べた本件研究及び本件事業を始め、二の2で御指摘の「発症予防に寄与している」ことの確認に当たっては、他の様々な研究を参照しながら、研究結果の妥当性を検証しているところである。

二の4について

 御指摘の「実証研究」に関しては、例えば、令和三年度に厚生労働省が委託して実施した「第四期医療費適正化計画に向けた特定健診・特定保健指導に係るエビデンス評価のための分析等業務」(以下「本業務」という。)に係る「第四期医療費適正化計画に向けた特定健診・特定保健指導に係るエビデンス評価のための分析等業務一式 調達仕様書」に基づき、「特定保健指導が必要とされた対象群において、実施群と未実施群間での比較」をし、「実施群」の医療費と「未実施群」の医療費とを比較しており、本業務の結果については、令和四年六月二十八日に開催された第四回第四期特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会効率的・効果的な実施方法等に関するワーキング・グループの参考資料三「特定健診・特定保健指導の効果検証」において、「未実施群」と比較して「実施群」の医療費が相対的に減少していることから、「「特定保健指導対象者とすること」や「特定保健指導を実施すること」が医療費を抑制する可能性を示唆している」と示しているところである。

三の1について

 お尋ねについては、二の2についてで述べたとおり、二の2で御指摘の「発症予防」に寄与していることが確認されており、御指摘のように「科学的根拠に乏しく、医療資源の有効活用が見込めない」とは考えておらず、現時点において、「特定健診等の縮小又は廃止」をすべきとは考えていない。

三の2について

 お尋ねの趣旨が明らかではないが、いずれにせよ、特定健診については、法第二十条及び特定健康診査及び特定保健指導の適切かつ有効な実施を図るための基本的な指針(平成二十年厚生労働省告示第百五十号)の規定に基づき、「糖尿病等の生活習慣病の発症や重症化を予防することを目的として、メタボリックシンドロームに着目し、生活習慣を改善するための特定保健指導を必要とする者を、的確に抽出するために行う」ことを目的として、「四十歳以上の加入者」に対し実施しており、御指摘のように「低リスク群への画一的健診」ではなく、また、厚生労働省が医療保険者等向けに作成した「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第四・二版)」(令和七年六月厚生労働省保険局医療介護連携政策課医療費適正化対策推進室作成)において、「本人同意のもとで保険者が診療における検査結果の提供を受け、特定健康診査の結果データとして活用する」こと等と示しているとおり、既に医療機関を受診している者について、診療における検査と特定健診が重複して行われないよう働きかけを行っているところである。

三の3について

 お尋ねの趣旨が明らかではないが、いずれにせよ、御指摘のような「見直し」の「検討」は行っていない。