第217回国会(常会)
内閣参質二一七第二一五号 令和七年七月一日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員浜田聡君提出ストレスチェックの対象拡大に伴う予算措置及び政策効果に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員浜田聡君提出ストレスチェックの対象拡大に伴う予算措置及び政策効果に関する質問に対する答弁書 一の1について 御指摘の「労働者数五十人未満の事業場に対してストレスチェックを義務化すること」については、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和七年法律第三十三号。以下「改正法」という。)の公布の日(令和七年五月十四日)から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日の施行に向けた準備を進めているところであるため、現時点においてお尋ねについてお答えすることは困難である。 一の2について 御指摘の「小規模事業場におけるストレスチェック実施に対する支援策(助成金、外部委託支援等)の具体的内容及び予算規模」については、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第六十六条の十第一項の規定に基づく心理的な負担の程度を把握するための検査(以下「ストレスチェック」という。)に関連する事業として、地域産業保健センターにおいて、ストレスチェックの結果、心理的な負担の程度が高い者に対する医師の面接指導等を行っている産業保健活動総合支援事業等(以下「産業保健活動総合支援事業等」という。)があり、産業保健活動総合支援事業等の予算額のうち、ストレスチェックに関する予算額については、令和七年度は約五十二億円の内数である。なお、今後の「支援策(助成金、外部委託支援等)の具体的内容及び予算規模」については、一の1についてでお答えしたとおり、改正法の施行に向けた準備を進めているところであるため、現時点でお答えすることは困難である。 一の3について お尋ねの「ストレスチェックの実施に関する」「国費支出額」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に、産業保健活動総合支援事業等の「支出額」に関する御質問であるとすれば、これらの「支出額」のうち、ストレスチェックに関する「支出額」は、令和元年度が約五十億円の内数、令和二年度が約五十一億円の内数、令和三年度が約五十一億円の内数、令和四年度が約六十一億円の内数及び令和五年度が約四十五億円の内数である。 二の1及び2について お尋ねの「労働者のメンタルヘルス不調の予防」「に寄与しているとする科学的根拠(エビデンス)」及び「エビデンスの研究デザイン(ランダム化比較試験、観察研究等)」については、平成三十年七月発行の「Journal of Occupational Health」に掲載された論文「Effect of the National Stress Check Program on mental health among workers in Japan: A 1-year retrospective cohort study」において、ストレスチェックの受検と労働時間の短縮、働き方の改善、職場内のコミュニケーションの改善等の職場環境の改善について両方経験した労働者は、いずれも経験していない労働者に比べて心理的ストレスが低下したことがコホート研究により確認されている。また、御指摘の「エビデンスの信頼性」の意味するところが必ずしも明らかではないが、当該論文の結果においては、統計的に有意差があることが示されている。一方、「医療費の削減」「に寄与しているとする科学的根拠(エビデンス)」及び「エビデンスの研究デザイン(ランダム化比較試験、観察研究等)」については、政府として把握していない。 二の3について お尋ねについては、御指摘の「労働者の自殺率やメンタルヘルス関連の労災請求件数」の「変化」には様々な要因が影響するものと考えており、お尋ねの「有意な変化があったか」については、一概にお答えすることは困難であるが、お尋ねの「統計データ」については、例えば、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)に基づく補償を受けるべき労働者若しくは遺族又は葬祭を行う者の同法に基づく請求のうち、精神障害に係る請求件数は、「ストレスチェックを導入」する前の平成二十六年度において千四百五十六件、令和五年度において三千五百七十五件であり、このうち自殺に係る請求件数は、平成二十六年度において二百十三件、令和五年度において二百十二件であることを把握している。 三の1について お尋ねについては、令和七年一月十七日の労働政策審議会において、「今後の労働安全衛生対策について(報告)」の建議が行われ、同建議において「労働者のプライバシー保護の観点から、原則として、外部委託を推奨することが適当である」「五十人未満の事業場におけるストレスチェックの実施については、その円滑な施行に資するよう、国においては」「五十人未満の事業場に即した、労働者のプライバシーが保護され、現実的で実効性のある実施体制・実施方法についてのマニュアルの整備(特に十人未満等の小規模な事業場については、その実情を考慮した取り組み可能な実施内容を示す)」「高ストレス者の面接指導に無料で対応している地域産業保健センターの体制整備」「など、五十人未満の事業場に対する十分な支援策を講じるべきである」とされたところであり、これを踏まえ、御指摘の「外部機関の活用やプライバシー保護の観点」も含め、お尋ねの「実施体制」について今後検討してまいりたい。 三の2について 御指摘の「ストレスチェックの効果が限定的である場合」の「見直し(任意制度化、民間主導への移行等)」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、二の1及び2についてでお答えしたとおり、ストレスチェックの受検と労働時間の短縮、働き方の改善、職場内のコミュニケーションの改善等の職場環境の改善について両方経験した労働者は、いずれも経験していない労働者に比べて心理的ストレスが低下したことがコホート研究により確認されており、また、令和七年四月八日の参議院厚生労働委員会において福岡厚生労働大臣が答弁したとおり、「ストレスチェック制度は、高ストレス者に対する医師の面接指導と相まって、労働者が自身のストレスの状況への気付きを得る機会となるものでございまして、こうした機会は小規模事業場の労働者であっても与えられることが望ましい」ことから、改正法により、一の1で御指摘のように「労働者数五十人未満の事業場に対してストレスチェックを義務化すること」とされたものである。 |