質問主意書

第217回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一七第一八五号
  令和七年六月二十四日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員浜田聡君提出医療費適正化計画における数値目標及び効果検証の妥当性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出医療費適正化計画における数値目標及び効果検証の妥当性に関する質問に対する答弁書

一の1の前段及び3について

 御指摘の「成果指標」の意味するところが必ずしも明らかではないが、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号。以下「法」という。)第八条第一項の規定により厚生労働大臣が定めた医療費適正化に関する施策についての基本的な方針(令和五年厚生労働省告示第二百三十四号。以下「基本方針」という。)においては、「令和十一年度末までに医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを全ての都道府県で八十パーセント以上とする主目標並びにバイオ後続品に八十パーセント以上置き換わった成分数を全体の成分数の六十パーセント以上とする副次目標及び後発医薬品の金額シェアを六十五パーセント以上とする副次目標が設定されたことを踏まえ、第四期都道府県医療費適正化計画の計画期間の最終年度の令和十一年度に、医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを八十パーセント以上とする目標・・・及び後発医薬品の金額シェアを六十五パーセント以上とする目標を設定することが考えられる」としており、必ずしも御指摘のように「第四期医療費適正化計画における後発医薬品の使用促進目標が、医療費を基にした金額シェアではなく数量シェアで設定されている」ものではないが、いずれにせよ、この記載は、令和六年三月十四日に開催された第百七十六回社会保障審議会医療保険部会の資料一「後発医薬品に係る新目標について」において示した「現下の後発医薬品を中心とする供給不安や後発医薬品産業の産業構造の見直しの必要性に鑑み、医療機関が現場で具体的に取り組みやすいものとする観点も踏まえ、現行の数量ベースの目標は変更しない」、「バイオシミラーについては、副次目標を設定して使用促進を図っていく」及び「バイオシミラーの使用促進や長期収載品の選定療養等により、後発医薬品の使用促進による医療費の適正化を不断に進めていく観点から、新たに金額ベースで副次目標を設定する」といった「基本的考え方」に基づくものである。

 なお、基本方針においては、使用割合の数値目標として、「後発医薬品の数量シェアを八十パーセント以上とする目標・・・及び後発医薬品の金額シェアを六十五パーセント以上とする目標を設定することが考えられる」と定めており、御指摘の「医療費削減額」の目標ではないが、令和七年四月三日に開催された第百九十三回社会保障審議会医療保険部会の資料三「第三期医療費適正化計画の実績評価及び第四期全国医療費適正化計画について」において、「第四期医療費適正化計画(二千二十四~二千二十九年度)の目標と進捗状況(全国)」の「後発医薬品・バイオ後続品の使用促進」の「適正化効果額」として「約二千百八十六億円」と示しているところである。

一の1の後段について

 御指摘の「これまで」の「目標指標」の意味するところが必ずしも明らかではないが、令和元年から令和五年までの医療費適正化計画の期間(以下「第三期医療費適正化計画期間」という。)の基本方針における「後発医薬品の使用促進に関する数値目標」と解すれば、平成二十五年四月に厚生労働省が策定した「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」において、「新たな目標の設定にあたっては、国際的な比較が容易にできることも踏まえ、後発医薬品に置き換えられる先発医薬品及び後発医薬品をベースとした数量シェアとすることとする」と示しており、これも踏まえ、第三期医療費適正化計画期間においては、基本方針において、「後発医薬品の使用促進に関する数値目標」について、「後発医薬品の使用割合が八十パーセント以上に到達しているとする目標を設定すること・・・も考えられる」としていたものである。

一の2について

 御指摘のように「金額シェアが伸び悩んでいる要因」として「高薬価ジェネリックの普及状況、先発薬との価格差、調剤報酬制度の構造」について「分析し、評価を行って」いないが、いずれにせよ、御指摘の「金額シェア」については、令和四年度から令和六年度までの医薬品価格調査の結果によると、令和四年度は五十二・二パーセント、令和五年度は五十六・七パーセント、令和六年度は六十二・一パーセントと着実に増加しており、「金額シェアが伸び悩んでいる」との御指摘は必ずしも当たらないものと考えている。

一の4について

 御指摘の「差」に係る「医師・患者の受容性、製品供給体制、保険上の経済的誘因」について「分析して」いないが、御指摘の「バイオ後続品の使用促進」に係る「分析」については、令和六年九月に厚生労働省が策定した「バイオ後続品の使用促進のための取組方針」において、「バイオ医薬品が使用できる疾患領域の中でもバイオ後続品の使用できる対象疾患はさらに限られているため、バイオ後続品を採用している医療機関はまだ多くはないのが現状であり、国民におけるバイオ後続品の認知度は十六・六パーセントと低い」、「バイオ後続品の開発・生産等においては、バイオテクノロジーや高度な品質管理技術等を用いるため、化学合成品の後発医薬品とは生産工程や品質管理、産業構造等が大きく異なる。したがって、バイオ後続品メーカーは、専門人材や多額の開発・製造費用を要し、初期投資も膨大であるという製造上の課題がある」、「バイオ医薬品は化学合成品に比べて薬価が高額なものが多く、特に高額なバイオ後続品については高額療養費制度が適用されることで先行バイオ医薬品を使用した場合とバイオ後続品を使用した場合で自己負担額が変わらず、バイオ後続品を使用するインセンティブが患者に生じないことがある。しかし、医療保険制度の持続可能性を高める観点から、バイオ後続品の使用を促進することは、避けて通れない重要な施策であるため、バイオ後続品を使用するメリット等を患者・国民に理解いただくため、継続的に普及活動を行っていくことが必要である」としているとおりである。その上で、御指摘の「置き換えの進捗の差を是正する」のではなく、「置き換えの進捗」が遅れているものも含め、全ての「バイオ後続品」の「使用促進」に向けて取り組んでまいりたい。

二の1について

 御指摘の「改善措置」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、厚生労働省のホームページ(以下「ホームページ」という。)で公表している「二千二十三年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況について」において、特定健康診査(法第十八条第一項に規定する特定健康診査をいう。以下同じ。)の「実施率」は、令和三年度は五十六・五パーセント、令和四年度は五十八・一パーセント、令和五年度は五十九・九パーセント、特定保健指導(同項に規定する特定保健指導をいう。以下同じ。)の「実施率」は、令和三年度は二十四・六パーセント、令和四年度は二十六・五パーセント、令和五年度は二十七・六パーセントとそれぞれ上昇傾向にあり、引き続き、御指摘の「実施率」を向上すべく、令和六年度からは、これまでの目標値(特定健康診査及び特定保健指導(以下「特定健診等」という。)の実施に係る目標値をいう。)は維持した上で、同省が医療保険者等向けに作成した「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第四・二版)」(令和七年六月厚生労働省保険局医療介護連携政策課医療費適正化対策推進室作成)において、「利用者の利便性確保の観点から、特定保健指導の対象者の利用環境や働き方に合わせて遠隔面接等を受けることは可能である」こと、「特定健康診査の受診後早期に面接を行うことで、健康意識が高まっている時に受診者に働きかけることができるため、全ての検査結果が判明しない場合でも、次のとおり、特定健康診査実施日から一週間以内において初回面接の分割実施を可能とする」こと等を示すとともに、同手引きについて、ホームページ等を通じて周知すること等に取り組んでいるところである。

二の2について

 お尋ねについては、例えば、厚生労働省健康局長(現在の厚生労働省健康・生活衛生局長)及び保険局長が参集を求めて開催する、医療保険者や特定健診等に関する専門的知見を有する有識者等により構成される「第四期特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会」において、令和三年十二月九日に開催された第一回同検討会の資料二―三「特定保健指導のモデル実施の効果検証分析」の「A:モデル実施導入前後の比較」における「従来の積極的支援終了者と同様に、モデル実施者(モデル実施終了者及びモデル実施未達成者で積極的支援終了者)は、積極的支援未実施者と比較して、翌年度の健診時に、ほとんどの検査項目で数値の改善傾向を認めた」ことが確認されているところである。

二の3及び4について

 御指摘の「実証研究」を令和三年度に厚生労働省が実施した「第四期医療費適正化計画に向けた特定健診・特定保健指導に係るエビデンス評価のための分析等業務」(以下「本業務」という。)と解すれば、本業務においては、御指摘のような「当該成果の費用対効果の評価(健診費用・人件費・行政経費等を含むコストとの比較)、ネットベネフィット分析」は行っていないが、本業務に係る「第四期医療費適正化計画に向けた特定健診・特定保健指導に係るエビデンス評価のための分析等業務一式 調達仕様書」に基づき、「特定保健指導が必要とされた対象群において、実施群と未実施群間での比較」をし、「実施群」の医療費と「未実施群」の医療費を比較しており、本業務の実施に当たっては、学識経験者からなる検討委員会を設置し、当該委員会において効果検証の評価が行われ、その上で、本業務の結果について、ホームページにおいて公表しているところであり、お尋ねのように「客観的」に「信頼性」のあるものであると考えている。