質問主意書

第217回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一七第一八一号
  令和七年六月二十四日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員浜田聡君提出消費税減税がインフレを加速させる旨の主張に係る政府の見解に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出消費税減税がインフレを加速させる旨の主張に係る政府の見解に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 一のお尋ねについて、消費税率の引下げが日本経済や物価に対して及ぼす影響は、一時的に物価を引き下げることも考えられる一方、物価の引下げに伴う購買力の増加や、それにより物価が一定程度押し上げられることも考えられるなど、様々なものが考えられるところ、これらは、内外経済状況等様々な要因によってその程度が異なるため、一概に申し上げることはできない。なお、諸外国の例については、令和七年五月二十六日の参議院決算委員会において、加藤財務大臣が「諸外国では付加価値税という形になりますが、コロナ禍で税率を引き下げた事例がありますが、例えば、ドイツにおいては引下げ前後で価格が変更されていない商品が多数存在をした、あるいはイギリスにおいても飲食店の多くは値下げをしていなかったとの報道もあるものと承知をし、税率引下げ時に相当する値下げがなされたとはなかなか言い切れない、こうした状況もあったのではないかというふうに推察をしております」と述べているとおりである。

 また、二及び三のお尋ねについて、消費税は、急速な高齢化を背景に社会保障給付費が大きく増大する中で、国民が広く受益する社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から、社会保障の財源として位置付けられており、消費税率を引き下げることは考えていないため、消費税率の引下げを前提とした検討を行っておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。

四の1について

 お尋ねの「制度的・技術的観点」の意味するところが必ずしも明らかではないが、令和七年度予算においては、地方交付税分を除いた国分の消費税収は二十・一兆円である一方、国の社会保障四経費(制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用)は三十四・〇兆円と当該税収を大幅に上回っており、その結果、十三・九兆円を国債の発行等により確保する必要がある。こうした中で、消費税については、一から三までについてで述べたとおり、消費税率を引き下げることは考えていないため、消費税率の引下げを前提とした検討を行っておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。

四の2について

 消費税については、一から三までについてで述べたとおり、消費税率を引き下げることは考えていないため、消費税率の引下げを前提とした検討を行っていないが、その上で、お尋ねについては、令和七年五月十二日の衆議院予算委員会において、加藤財務大臣が「現在の財政や経済の状況、またGDP、金利動向を含む経済状況の今後の見通し、また人口減少、少子高齢化、気候変動といった構造的な変化の動向、さらには、これまでの財政運営に対する評価や今後の財政運営に対する政府の姿勢、また、それを支える制度面の枠組みなども含めた今後の財政運営に対する見通しなどを総合的に勘案した結果として、大事なことは、市場参加者の皆さん方から財政の持続性に対する評価が下されるということでございます」、「我が国として、これまでも厳しい財政事情の中で、災害、コロナなど予想外の事態にも対処してまいりました。そうした中でも対処できたということも、やはりこれまでの財政健全化に対する取組があり、また、それに対する市場からの信認を維持してきたからだと考えているところでございます。」及び「同時に、将来、国民の安全と安心を預かる政府として、今後起こり得る様々な有事に備え財政余力を確保することも重要であると考えておりますので、恒久的な歳出増や歳入減につながる施策については安定的な財源の確保を行っていく、こういった姿勢で取り組んでいくことが必要と考えております。」と述べているとおりである。その上で、同年三月二十五日の参議院財政金融委員会において、同大臣が「これまでも恒久的な措置については安定財源が必要であるという基本的な考え方をお示しをし、その旨説明させていただきました。」と述べているとおりである。

五について

 毎年度の「経済財政運営と改革の基本方針」(以下「基本方針」という。)では、税制改革を含む政府の経済財政政策に関する基本的な方針を示しており、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二五」(令和七年六月十三日閣議決定)においても、今後の税制改革の方針を示しているところである。

 その上で、毎年度の税制改正に当たっては、税制は国民に広く負担を求めるものであることから、政府としては、基本方針の下、翌年度予算の閣議決定と併せて、与党税制調査会の議論等を踏まえた具体的な税制改正案を「税制改正の大綱」として閣議決定し、当該閣議決定に係る法律案を国会に提出しているところであり、御指摘のように「現在のプロセスでは、歳出改革との整合を前提とした一体的な財政運営が困難である」とは考えておらず、また、「現在の意思決定プロセスを改める」ことは考えていない。