質問主意書

第217回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一七第一八〇号
  令和七年六月二十四日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員浜田聡君提出医療費適正化計画に係る政策評価に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出医療費適正化計画に係る政策評価に関する質問に対する答弁書

一の1について

 お尋ねについては、現在、令和七年四月二十三日に中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会から同協議会総会に報告された「長期処方やリフィル処方の実施状況調査報告書」(以下「調査報告書」という。)を精査しているところであり、これを踏まえ、高齢者の医療の確保に関する法律第八条第一項の規定に基づき定める計画(令和七年厚生労働省告示第百八号)に定める「具体的な指標」について「設定」することとしている。

一の2について

 お尋ねについては、調査報告書において、例えば、「医師調査」では「リフィル処方箋の普及に向けた課題」として「患者への制度の周知が十分でないこと」や「かかりつけ薬剤師制度の普及が十分でないこと」等が、「保険薬局調査」では「薬局でリフィル処方箋を受けるにあたっての課題」として「患者が処方箋を紛失してしまうことへの対応」や「リフィル処方箋を受付する機会が少なく対応に不慣れであること」等が示されていると承知しており、今後、こうした課題に対応するために必要な御指摘の「改善策」について、検討することとしている。

一の3について

 お尋ねの「リフィル処方箋の年間発行件数」については、厚生労働省の集計によれば、令和五年度において四十五万千八百六十七件である。お尋ねの「対象患者数・薬剤種別・医療費削減額」については把握していない。

二の1について

 お尋ねの「日本国内での発生頻度」に関しては、「抗微生物薬適正使用の手引き 第三版」(令和五年十一月一六日厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課作成。以下「手引き」という。)において、「日本の医療現場における抗微生物薬の不適正使用の頻度・割合は現状として判然としないものの・・・日本においても、六十五歳以下の患者の下痢症で過剰に抗菌薬が処方され、小児の肺炎でガイドラインを遵守して抗菌薬を処方している施設が四分の一しかない」と示しているとおりである。

 また、お尋ねの「医療費への影響」に関しては、令和七年四月三日に開催された第百九十三回社会保障審議会医療保険部会の資料三「第三期医療費適正化計画の実績評価及び第四期全国医療費適正化計画について」において、「第四期医療費適正化計画(二千二十四~二千二十九年度)の目標と進捗状況(全国)」の「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療の適正化(急性気道感染症・急性下痢症に対する抗菌薬処方の適正化)」の「適正化効果額」として「約二百七十億円(半減の場合)」と示しているとおりである。

 さらに、お尋ねの「耐性菌リスク」に関しては、手引きにおいて、「近年、・・・不適正な抗微生物薬使用に伴う有害事象として、薬剤耐性菌とそれに伴う感染症の増加が国際社会でも大きな課題の一つ」と示しているとおりである。

二の2について

 お尋ねについては、医療費適正化に関する施策についての基本的な方針(令和五年厚生労働省告示第二百三十四号。以下「基本方針」という。)において、「急性気道感染症及び急性下痢症に対する抗菌薬処方の適正化のために、都道府県域内の医療関係団体に対して、・・・抗菌薬適正使用の周知の実施を求めることが考えられる」と都道府県に対して示しているほか、例えば、御指摘の「ガイドライン」として、手引きについて、「「抗微生物薬適正使用の手引き 第三版」の周知について」(令和五年十一月十七日付け感感発一一一七第五号厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課長通知)等により、公益社団法人日本医師会及び都道府県を通じて、医療機関等に対して周知する等に取り組んでいるところであり、引き続き、こうした取組を進めてまいりたい。

三の1から3まで及び4の後段について

 基本方針においては、「医療の効率的な提供の推進」において、「第四期都道府県医療費適正化計画の計画期間においては、「高齢者の医薬品適正使用の指針」における取扱いを踏まえ、高齢者に対する六種類以上の投与を目安として取り組む」こととするとともに、基本方針別紙「標準的な都道府県医療費の推計方法」(以下「基本方針別紙」という。)の「地域差縮減に向けた取組による効果算定」において、「複数種類の医薬品の投与の適正化については、令和元年度の医薬品を九種類以上投与されている六十五歳以上の患者数と一人当たりの調剤費等を用いて、・・・算定する」こととしている。その上で、お尋ねの「加算制度(ポリファーマシー加算・服薬調整支援料等)」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に、診療報酬の算定方法(平成二十年厚生労働省告示第五十九号。以下「算定告示」という。)別表第一区分番号A250に規定する「薬剤総合評価調整加算」(算定告示別表第二区分番号A245において準用する場合を含む。)、算定告示別表第一区分番号B008―2に規定する「薬剤総合評価調整管理料」及び算定告示別表第二区分番号B008―2に規定する「薬剤総合評価調整管理料」並びに算定告示別表第三区分番号10の2の注4に規定する「調剤管理加算」及び算定告示別表第三区分番号14の3に規定する「服用薬剤調整支援料」と解すれば、これらについては、平成二十四年九月二十四日に公表された「Geriatrics&Gerontology International」の「High risk of adverse drug reactions in elderly patients taking six or more drugs: Analysis of inpatient database」を基に、御指摘の「外来高齢者医療の実態」を踏まえ、平成二十七年十一月六日に開催された中央社会保険医療協議会総会において、「高齢者では、六剤以上の投薬が特に有害事象の発生増加に関連している」とされたことから設定している。これも踏まえ、基本方針においては、「医療の効率的な提供の推進」において、「六種類以上の投与を目安」としている。また、御指摘の「妥当性評価」の意味するところが必ずしも明らかではないが、基本方針別紙における「効果算定」については、令和四年十一月十七日に開催された社会保障審議会医療保険部会において「六種類以上ということにしますと、どれも必要な薬で減らせないというケースが多々入ってまいりますので、六種類以上にしたから一律に多剤投与の効果が得られるというわけではない」との発言もあり、御指摘の「平成十七年の米国論文」も参考に、令和五年六月二十九日に開催された同部会において、「九種類以上投与されている六十五歳以上の患者数と一人当たりの調剤費等を用いて、・・・算定する」こととする基本方針の案を示し、同部会における議論を経て、決定したものである。

三の4の前段について

 御指摘のように「国内外の様々な研究」があることは承知しているところ、御指摘の「Beers Criteria」は、平成二十七年十一月六日に開催された中央社会保険医療協議会総会の資料「個別事項(その四 薬剤使用の適正化等について)」において示されているとおり、「多剤処方による有害事象を減少させるための減薬手法例」の一つとして「米国の老年医学分野において広く活用されている」ものと承知しているが、御指摘のように「国際基準」であるとは認識していないため、このことを前提としたお尋ねにお答えすることは困難である。

三の5の前段について

 御指摘の「「多剤投与」の定義」及び「慢性疾患の併存や医師の裁量」の「考慮」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「多剤投与」に関しては、厚生労働省医薬・生活衛生局長(現在の厚生労働省医薬局長)が参集を求めて開催する、高齢者の薬物療法に関する専門的知見を有する有識者等により構成される「高齢者医薬品適正使用検討会」が平成三十年五月に取りまとめた「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」において、「多剤服用の中でも害をなすものを特にポリファーマシーと呼び、・・・ポリファーマシーは、単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態である。何剤からポリファーマシーとするかについて厳密な定義はなく、患者の病態、生活、環境により適正処方も変化する」とされており、「ポリファーマシーの是正に際しても、一律の剤数/種類数のみに着目するのではなく、安全性の確保等からみた処方内容の適正化が求められる」ことを示しているところである。

三の5の後段について

 お尋ねの「与えた影響」の「評価結果」については把握していない。なお、令和七年四月三日に開催された社会保障審議会医療保険部会の資料三「第三期医療費適正化計画の実績評価及び第四期全国医療費適正化計画について」において、「第四期医療費適正化計画(二千二十四~二千二十九年度)の目標と進捗状況(全国)」の「多剤投与の適正化」の「適正化効果額」として「約九百六十八億円(半減の場合)」と示しているところである。

三の6について

 御指摘のように「政府は本施策により年間約二千億円の医療費削減が可能と推計」していないため、お尋ねにお答えすることは困難である。

三の7について

 個別の御指摘の「民間調査等」に関し、お答えすることは差し控えたいが、いずれにせよ、御指摘の「現行推計」については、基本方針に定める「式」により三の5の後段についてで述べたとおり算定しているところであり、これが御指摘のように「過少である」とは考えていない。