質問主意書

第217回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一七第一五四号
  令和七年六月十七日
内閣総理大臣臨時代理        
国務大臣 林 芳正


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員神谷宗幣君提出教科書検定基準における近隣諸国条項及び中立性の確保に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出教科書検定基準における近隣諸国条項及び中立性の確保に関する質問に対する答弁書

一から四までについて

 お尋ねの「これらの教科書」、「教育の中立性及び国家観の涵養との整合性」、「教育行政全体としての整合性」、「著しい偏り」、「教育の公平性・歴史的バランス」、「このような記載のある教科書」及び「誤報を含む情報が拡散された経緯を踏まえ、事実関係を丁寧に記述するよう指導することは検定制度上の課題である」の意味するところが必ずしも明らかではないが、小学校、中学校、高等学校等における教科用図書については、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第三十四条等の規定により、文部科学大臣の検定を経た教科用図書等を使用することとされているところ、我が国の教科用図書検定制度は、民間の申請図書の発行者等が著作編集した申請図書の具体的な記述について、教科用図書検定基準等に従い、教科用図書検定調査審議会(以下単に「審議会」という。)が専門的・学術的な調査審議を行い、検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本として実施しているものであり、学習指導要領を踏まえどのように記述するかについては、このような欠陥のない範囲において申請図書の発行者等の判断に委ねられており、政府としては、適切に検定が行われているものと考えている。

五について

 前段のお尋ねについては、「我が国に配慮義務を一方的に課す近隣諸国条項は、相互主義に反し、教育の中立性を損なうのみならず、他国からの内政干渉を許す構造となっている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いわゆる「近隣諸国条項」については、教科用図書において、近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていることを求める観点から、教科用図書検定基準に定められているものであるところ、我が国の教科用図書検定制度は教科用図書検定基準等に従い、審議会が専門的・学術的な調査審議を行い、検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本として実施されており、他国の見解によって影響を受けるものではないと考えている。

 中段のお尋ねについて、いわゆる「近隣諸国条項」に基づき検定意見が付された例としては、平成三年度に実施された教科用図書検定において、申請図書中の「アジアの諸国の人々との関係においては、・・・第二次世界大戦で大きな被害をあたえるなど、過去に迷惑をかけた歴史をもっていることを忘れてはならない」という記述に対し検定意見が付され、「アジアの諸国の人々との関係においては、・・・第二次世界大戦で大きな被害をあたえるなど、過去にたえがたい苦しみをもたらした歴史をもっていることを忘れてはならない」と修正されたものがある。

 後段のお尋ねについては、その趣旨が必ずしも明らかではないが、教科書制度の在り方は各国の判断に委ねられるべきものであると考えており、お尋ねの「配慮」を諸外国に対し求めることは考えていない。

六について

 前段のお尋ねについては、令和五年三月九日の参議院文教科学委員会において、永岡文部科学大臣(当時)が「国会の承認を要する人事というのは、ポストの独立性とか、あとは重要性等を鑑みまして、・・・各根拠法に基づきまして定められているものと承知をしております。教科書の調査官は文部科学大臣により任命をされまして、命を受けて、検定申請のあった教科書用図書の調査を行う職でございまして、国会承認事項とするべきものには該当しないと考えております。教科書の調査官の任命におきましては、透明性確保のため、公募による採用ですとか略歴を公表する等の取組を行っているところでございます」と答弁しているとおりであり、お尋ねの「国会の承認」及び「第三者評価」の必要はないと考えている。

 後段のお尋ねについては、同日の同委員会において、政府参考人が「教科書検定調査審議会は、行政処分の前提となる審査を行うものであり、外部からの圧力がなく、静ひつな環境の下、委員が自らの識見に基づき、専門的、学術的に審議するとともに、委員が自由闊達に議論することを通して合意形成を図っていくことが重要であることから、議事録ではなく議事要旨を作成し、検定審査終了後に公開をしている」と答弁しているところであり、引き続き教科用図書検定手続の透明性の確保を図ってまいりたい。