第217回国会(常会)
内閣参質二一七第一四四号 令和七年六月十三日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員浜田聡君提出候補者による選挙前の書籍出版の公職選挙法上の適法性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員浜田聡君提出候補者による選挙前の書籍出版の公職選挙法上の適法性に関する質問に対する答弁書 一について 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号。以下「法」という。)第百二十九条の規定に違反して選挙運動をしたか否かは、行為のなされる時期、場所、方法、対象等を総合的に勘案して判断されるべきものであり、また、法第百四十六条第一項に規定する法第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として頒布され又は掲示された文書図画であるか否かは、当該頒布され又は掲示された物の内容とともにその頒布又は掲示の時期、場所、方法等を総合的に勘案して判断されるべきものであるところ、お尋ねの「選挙に立候補予定の者が選挙の公示日又は告示日前に自身の政治的ビジョンや政策をまとめた書籍を出版すること」が、法第百二十九条又は第百四十六条の規定に違反するか否かについては、個別具体の事実に即して判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難である。 二の前段について お尋ねの「選挙運動期間中に、候補者を著者とする書籍(特に選挙公約や出馬意図を含む内容)が有料で販売された場合」が、法第百四十六条の規定に違反するか否かについては、個別具体の事実に即して判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難である。 二の後段について お尋ねの「電子書籍の発売やオンラインでの宣伝も含め、どのような行為が違法とみなされるか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、法第百四十六条第一項の規定により、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもってするを問わず、法第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として、公職の候補者の氏名若しくはシンボル・マーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し又は掲示することは禁止されている。 三の前段及び中段について お尋ねの「選挙運動や事前運動とみなされた事例」の意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に御指摘のように「選挙前に候補者が書籍を出版」し、法第百二十九条の規定に違反して選挙運動をしたとされた事例を指すのであれば、政府として把握している限りでは、そのような事例は承知していない。 三の後段について 御指摘の「違法と判断されなかった場合」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。 四の前段について お尋ねの「公職選挙法の適用に特例や異なる解釈があるか」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、御指摘の「電子書籍」や「紙媒体の書籍」を「発売」する行為が法の規定に違反するか否かについては、個別具体の事実に即して判断されるべきものと考える。 四の後段について お尋ねの「選挙運動とみなされる基準」の意味するところが必ずしも明らかではないが、法における選挙運動については、最高裁判所の判例によれば、「特定の公職の選挙につき、特定の立候補者又は立候補予定者に当選を得させるため投票を得若しくは得させる目的をもつて、直接又は間接に必要かつ有利な周旋、勧誘その他諸般の行為をすることをいうものであると解すべきである」とされている(昭和五十二年二月二十四日最高裁判所判決)と承知している。 五について 御指摘の「選挙前に候補者が書籍を出版する行為」に対するお尋ねの「規制強化」については、政治活動や選挙運動の在り方の問題であり、選挙制度の根幹に関わる事柄であることから、各党各会派において御議論いただくべきものと考えている。また、御指摘の行為が法の規定に違反するか否かについては、個別具体の事実に即して判断されるべきものと考えていることから、「ガイドラインの策定」については検討していない。 また、お尋ねの「選挙管理委員会が候補者や出版社に対して事前に注意喚起を行うなどの運用」の意味するところが必ずしも明らかではないが、法上の選挙運動に係る規制については、従来から各選挙管理委員会において周知が行われているところである。 |