質問主意書

第217回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一七第一三〇号
  令和七年六月三日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員川田龍平君提出CFD取引に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出CFD取引に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「利益相反行為による弊害」の意味するところが必ずしも明らかではないが、金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律(平成十二年法律第百一号)第二条において、いわゆるCFD取引を含む金融サービスの提供等に係る業務を行う者は、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならないとされている。また、いわゆるCFD取引を含むデリバティブ取引を業として行う場合、当該行為は、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第八項に規定する金融商品取引業に該当するため、同法第二十九条において、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができないとされているほか、同法第五十一条において、内閣総理大臣は、金融商品取引業者の業務の運営等に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認められるときは、当該金融商品取引業者に対し、業務の運営等の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができるとされている。

二について

 前段のお尋ねについて、「金融商品取引業を適確に遂行する組織形態が存在しないと判明した場合」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として申し上げれば、金融商品取引法第二十九条の四第一項第一号から第三号までのいずれかに該当する事実等が金融商品取引業者において判明した場合には、その事案の背景事情等も勘案した上で、同法第五十二条の規定に基づき、当該金融商品取引業者の登録を取り消すことがある。

 中段及び後段のお尋ねについては、金融庁のウェブサイトの「行政処分事例集」(令和七年三月三十一日時点。以下「事例集」という。)に掲載されている、平成十四年四月から令和七年三月までの間の行政処分において、いわゆるCFD取引を業として行うことができる第一種金融商品取引業者に対して、「人的構成を有しない」こと等から登録取消処分を行った事例に係るお尋ねの「時期」及び登録取消処分の時点における金融商品取引業者の名称は、それぞれ次のとおりである。

 平成二十三年八月十二日 新東京シティ証券株式会社

 平成二十四年十月二十六日 ジー・スター証券株式会社

 平成三十年七月二十四日 JC証券株式会社

 令和五年六月十六日 ロンナル・フォレックス株式会社

三について

 御指摘の「約款」及び「重要事項説明書」については、その提出が法令上義務付けられていないため、金融庁において、全ての金融商品取引業者の作成するこれらの文書を把握しているわけではない。

四について

 お尋ねについて、「通常人のレベルから見て理解できないような記載」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として申し上げれば、金融商品取引業者の作成する御指摘の「約款」及び「重要事項説明書」に関し、金融庁が、その内容に不備等があるおそれを把握した場合、その内容を確認し、修正を求めることがある。

五について

 前段のお尋ねについては、「関係者」、「無断売買」及び「通報又は告知」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に、「無断売買」が金融商品取引業等に関する内閣府令(平成十九年内閣府令第五十二号)第百十七条第一項第十一号に規定する「あらかじめ顧客の同意を得ずに、当該顧客の計算により有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等(有価証券等清算取次ぎを除く。)をする行為」を意味するものであるとすれば、金融商品取引業者が「無断売買」を行っているとの情報提供を受けた場合、必要に応じ、当該金融商品取引業者に対し、事実確認を行うことがある。

 中段のお尋ねについては、監督官庁が金融商品取引業者に対して行政処分を行う際は、法令違反行為の有無のみならず、その重大性、悪質性、当該行為の背景となった経営管理態勢及び業務運営態勢の適切性等についても勘案して、当該行政処分を行っているところであり、事例集により把握する限り、お尋ねのように、いわゆるCFD取引を業として行うことができる第一種金融商品取引業者に対し、「無断売買」のみを理由として行政処分を行った事例はない。

 後段のお尋ねについては、「無断売買等」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に、「無断売買等」が商品先物取引法施行規則(平成十七年農林水産省・経済産業省令第三号)第百三条第一項第三号に規定する「顧客の指示を受けないで、顧客の計算によるべきものとして取引をすること(受託契約準則に定める場合を除く。)。」を意味するものであるとすれば、農林水産省及び経済産業省において、商品先物取引法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第二条第二十三項に規定する商品先物取引業者が、お尋ねの「過去五年間」に同号に規定する行為をしたことに対し行った行政処分の件数は、いずれも零件である。

六について

 お尋ねの「関係者」、「無断売買」及び「通報又は告知」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、また、外部からの情報提供の件数を網羅的に把握することは困難であるため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、仮に、「無断売買」が商品先物取引法施行規則第百三条第一項第三号に規定する行為を意味するものであるとすれば、お尋ねの「過去五年間」において、農林水産省及び経済産業省が、調査を行った事業者の中で、同号に規定する行為に係る外部からの情報提供を受けた件数は、一件である。

七について

 金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律第二条において、いわゆるバイナリーオプション取引を含む金融サービスの提供等に係る業務を行う者は、顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならないとされている。

 また、いわゆるバイナリーオプション取引は、金融商品取引業等に関する内閣府令第百二十三条第八項に規定する特定店頭オプション取引に該当するため、金融商品取引法第四十条第二号及び同号の規定に基づく同令第百二十三条第一項の規定により、その取引期間及び期限について、顧客が金融商品市場における相場その他の指標の実勢条件に基づき公正な方法により算出された対価の額で取引を行うために、必要かつ適切なものとすることが求められているなど、既に投資者保護のための規制が設けられていると考えている。

八について

 前段のお尋ねについて、「当該業者が提供する全てのCFD銘柄について、当該業者が原市場において実際にポジションを保有しているか又は原市場との間で適切な契約関係を有しているか」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として申し上げれば、金融庁は、金融商品取引業者に対し、いわゆるCFD取引も含め、その提供する金融商品に係る事実確認を行うことがある。

 後段のお尋ねについて、「原市場の銘柄と類似した名称のCFD銘柄」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として申し上げれば、投資家保護の観点から、金融商品取引業等に関する内閣府令第百十七条第一項第二号において、金融商品取引業者は、「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」を行ってはならないとされており、当該規定を踏まえ、金融商品取引業者において適切に対応すべきものと考える。