第217回国会(常会)
内閣参質二一七第一二八号 令和七年六月三日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員浜田聡君提出「同和関係者」及び「アイヌ」を適用対象とする雇用保険法の特例延長措置の憲法適合性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員浜田聡君提出「同和関係者」及び「アイヌ」を適用対象とする雇用保険法の特例延長措置の憲法適合性に関する質問に対する答弁書 一、四及び五について お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、政府としては、同和問題に関する施策は、昭和五十七年までは同和対策事業特別措置法(昭和四十四年法律第六十号)、昭和六十二年までは地域改善対策特別措置法(昭和五十七年法律第十六号)、平成十四年までは地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和六十二年法律第二十二号)等に基づき行い、御指摘の「特例」等については、その後においても、「同和問題の早期解決に向けた今後の方策について」(平成八年七月二十六日閣議決定)において、「地域改善対策特定事業の一般対策への円滑な移行に関する法的措置等について」、「なお残されている事業課題、地方公共団体の財政状況、これまでの施策の成果に支障を来さないこと等を考慮して・・・措置を講ずる」、「一般対策への移行に際して・・・一般対策に工夫(既存の一般対策の改善又は新規の一般対策の創設)を加えて対応すること」とされていることを踏まえ、行ってきたところであり、さらに、各施策は、部落差別の解消の推進に関する法律(平成二十八年法律第百九号)第一条に基づき、「現在もなお部落差別が存在する・・・ことを踏まえ、全ての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとり、部落差別は許されないものであるとの認識の下にこれを解消することが重要な課題であることに鑑み、・・・部落差別の解消を推進し、もって部落差別のない社会を実現することを目的」として実施しているものであり、また、アイヌの人々に関する施策は、先の答弁書(令和七年一月十日内閣参質二一六第五四号)一についてで述べたとおり、アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平成三十一年法律第十六号)に基づき、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができ、及びその誇りが尊重される社会の実現を図り、もって全ての国民が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的として実施しているところであり、いずれも法の下の平等を定める憲法第十四条に反するものではないと認識している。 こうした考えの下、例えば、所定給付日数(雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号。以下「法」という。)第二十二条に規定する所定給付日数をいう。以下同じ。)の取扱いについては、都道府県労働局において、法第二十二条第二項の規定及び雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)第三十二条第五号の規定に基づき、「雇用保険に関する業務取扱要領」(平成二十二年十二月二十八日付け職発一二二八第四号(令和七年三月三十一日最終改正)厚生労働省職業安定局長通達別添)の「五〇三〇四(四)就職困難な者の確認」において、社会的事情により就職が著しく阻害されている者(同号に掲げる「社会的事情により就職が著しく阻害されている者」をいう。以下同じ。)については、「a アイヌ地区住民」、「b 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第二十二条の規定に基づく中高年齢失業者等求職手帳を所持する者」及び「c その他教育・就労環境等により安定所長が就職が著しく困難であると認める者であって、三十五歳以上のもの」と示し、当該cに該当するかどうかの確認については、「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の失効後における対応等に係る留意事項等について」(平成十四年四月一日付け職総発第〇四〇一〇〇一号・職開発第〇四〇一〇〇二号・職保発第〇四〇一〇〇一号・職業発第〇四〇一〇〇一号・職高高発第〇四〇一〇〇二号厚生労働省職業安定局総務課長、雇用開発課長、雇用保険課長及び業務指導課長並びに高齢・障害者雇用対策部高齢者雇用対策課長連名通達。以下「平成十四年課長通達」という。)において、「公共職業安定所長が本人の申し出に基づき個別具体的に行うものであり、その判断の参考とするため・・・隣保館等における相談(就労に関する相談を含む。)の実態をきめ細かに確認すること」としているところ、当該a又は当該bに該当するかどうかの確認も含め、必要かつ適切に行いながら、実施しているところである。 また、御指摘の「隣保館」の「運用」については、社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第三項第十一号の規定及び「隣保館設置運営要綱」(平成十四年八月二十九日付け厚生労働省発社援第〇八二九〇〇二号(平成二十四年四月五日最終改正)厚生労働事務次官通知別紙)に基づき、市町村において「地域社会全体の中で福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとして、生活上の各種相談事業や人権課題の解決のための各種事業を総合的に行う」ことを目的に設置及び運営することとしているとおりであり、さらに、御指摘の「生活館」の「運営」については、同号の規定及び「地方改善事業費(隣保館運営費等)の国庫補助について」(平成十年十二月十一日付け社援第二九五一号(平成二十年三月三十一日最終改正)厚生省社会・援護局長通知)に基づき、「アイヌ集落を有する市町村」において「アイヌ集落住民及びその周辺地域の住民に対して生活上の各種相談事業をはじめ、社会福祉等に関する事業を総合的に行うことにより地域住民の生活環境の改善を図ることを目的に」設置及び運営することとしているところである。 二及び三について 御指摘の「主観的な調査」及び「就職差別の実態」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、同和問題に係る調査に関しては、例えば、令和二年六月に法務省人権擁護局が公表した「部落差別の実態に係る調査結果報告書」において、「部落差別の被害又は加害経験(親族・知人を含む。)があると答えた七百二十八人が経験した、その部落差別の内容・・・「就職や職場」(二十六・八パーセント)」と示しているとおりであり、また、アイヌの人々に係る調査については、例えば、令和七年四月に内閣官房アイヌ総合政策室が公表した「国民のアイヌに対する理解度についての意識調査(令和六年度)」において、「アイヌの人々に対して、現在は差別や偏見があると思うか」との質問に対し、「あると思う」と回答した割合が「全国」で「二十一・四パーセント」であると示しているとおりである。 また、お尋ねの「直近五会計年度における実績」について、社会的事情により就職が著しく阻害されている者として法第十三条の規定に基づく基本手当の支給を受けた者の人数及びこれらの者に対する支給額は、それぞれ、令和五年度は七百九十一人及び約五・六億円、令和四年度は八百三十八人及び約五・八億円、令和三年度は九百五十二人及び約六・五億円、令和二年度は九百六十八人及び約七・一億円、令和元年度は千二人及び約七・〇億円である。これらについての御指摘のような「同和関係者」やアイヌの人々等といった内訳については把握していないが、「雇用保険に関する業務取扱要領」及び平成十四年課長通達に基づく確認により、「その他教育・就労環境等により安定所長が就職が著しく困難であると認める者であって、三十五歳以上のもの」に該当するものの人数については、都道府県労働局に報告を求めており、その集計結果では、令和五年度は三百四十一人、令和四年度は三百四十五人、令和三年度は三百五十三人、令和二年度は四百六十八人、令和元年度は四百三十四人である。 その上で、御指摘の「政策効果の検証方法」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、所定給付日数の取扱いについては、これらの調査結果等も踏まえつつ、その必要性等を確認しながら、適切に検討していくこととしている。 |