第217回国会(常会)
内閣参質二一七第一一六号 令和七年五月十六日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員浜田聡君提出延命治療の実態の把握状況等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員浜田聡君提出延命治療の実態の把握状況等に関する質問に対する答弁書 一について 御指摘の「欧州や米国では、・・・医学的に勧められていないと言われている」の具体的に意味するところが明らかではないため、これに関するお尋ねについてお答えすることは困難である。なお、政府としては、令和五年度から令和七年度までの厚生労働科学研究費補助金による「地域の実情に応じた在宅医療提供体制構築のための研究」において「在宅医療が進んでいる国(フランス、ドイツ、イギリスなど)やアジア各国のACP取り組み状況についての海外の文献レビュー」等を実施しているところであり、御指摘のような「高齢で食べられなくなった人」が「人工栄養」を受けるか否かも含めた意思決定に当たっての支援に関する諸外国の取組状況についても把握を行うこととしているところである。 二について 御指摘の「QOLの改善が見込めない場合には「低価値医療」として、・・・その限界や不利益」の具体的に意味するところが明らかではないため、これに関するお尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、政府としては、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成三十年三月十四日付け医政発〇三一四第七号厚生労働省医政局長通知別添一。以下「ガイドライン」という。)において、「人生の最終段階における医療・ケアの在り方」として、「医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要な原則である」等としているところであり、引き続き、当該原則等の周知及び普及に努めてまいりたい。 三について お尋ねの「中心静脈栄養、経鼻栄養及び胃ろうについて、・・・導入数及び実施数」の意味するところが必ずしも明らかではないが、基本診療料の施設基準等(平成二十年厚生労働省告示第六十二号)別表第五の三第二号に定める「中心静脈栄養」、「経鼻胃管」による「経腸栄養」及び「胃瘻」による「経腸栄養」についての、それぞれ、開始した件数及び実施した件数と解すれば、「中心静脈栄養」及び「経鼻胃管」による「経腸栄養」については、いずれの件数も把握しておらず、「胃瘻」による「経腸栄養」については、その開始した件数は診療報酬の算定方法(平成二十年厚生労働省告示第五十九号)別表第一区分番号K664に定める「胃瘻造設術(経皮的内視鏡下胃瘻造設術、腹腔鏡下胃瘻造設術を含む。)」による「経腸栄養」の回数として、厚生労働省のホームページにおいて公表している「NDBオープンデータ」で算出可能な平成二十六年度から令和四年度までの九年間でお示しすると次のとおりであり、その実施した件数は把握していない。 平成二十六年度 六万四千三百五十八回 平成二十七年度 六万五百五十回 平成二十八年度 五万三千四百十四回 平成二十九年度 五万四千八百四十六回 平成三十年度 五万三千四百九十五回 令和元年度 五万四千五百十三回 令和二年度 五万三千百六十五回 令和三年度 五万三千五百九回 令和四年度 五万千六百二十二回 また、お尋ねの「患者本人の意思が確認されなかった数及び割合」については、把握しておらず、また、御指摘の「統計資料」はない。 なお、ガイドラインにおいて、「人生の最終段階における医療・ケアの方針決定」については、「本人の意思の確認ができる場合」は「本人と医療・ケアチームとの合意形成に向けた十分な話し合いを踏まえた本人による意思決定を基本とし、多専門職種から構成される医療・ケアチームとして方針の決定を行う」こととし、また、「本人の意思の確認ができない場合」は「家族等と十分に話し合」う等により「本人にとっての最善の方針をとることを基本とする」こととしているところである。 四について 御指摘の「前記三について・・・本人の意思と異なる医療行為が行われている可能性を示唆するもの」の意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、三についてで述べたとおり、ガイドラインを踏まえ、「人生の最終段階における医療・ケアの方針決定」については、各医療機関において必要な対応がなされているものと考えており、御指摘のような「本人の意思と異なる医療行為が行われている可能性」についての「実態の把握」はしておらず、また、現時点において「把握すべき」とは考えていない。 五について 御指摘の「本人の意思に反する医療行為の防止を目的とした制度」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、二についてでお答えしたとおり、ガイドラインにおいて、「医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要な原則である」等としているところであり、引き続き、当該原則等の周知及び普及に努めてまいりたい。 六について 御指摘の「公的保険の適用範囲外とする等」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、御指摘の「尊厳ある最期を保障する観点から、中心静脈栄養、経鼻栄養及び胃ろうといった医療行為」を「公的保険の適用範囲外とする」「見直し」については、国民の生命倫理に関わる問題として国民的議論が必要なものであり、慎重に検討すべきものと考えている。 七の前段について 御指摘の「回復の見込みがない患者に対して中心静脈栄養、経鼻栄養及び胃ろうの導入等の医療行為を行う場合」の諸外国における「医療ガイドライン」については把握していない。なお、一についてで述べたとおり、政府としては、「ACP取り組み状況についての海外の文献レビュー」等を実施しているところであり、患者が御指摘の「中心静脈栄養、経鼻栄養及び胃ろうの導入等の医療行為」を受けるか否かも含めた意思決定に当たっての支援に関する諸外国の取組状況についても、把握を行うこととしているところである。 七の後段について お尋ねについては、把握していない。 |