質問主意書

第217回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一七第一一一号
  令和七年五月十三日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員浜田聡君提出介護保険料の上限設定と介護給付費の適正化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出介護保険料の上限設定と介護給付費の適正化に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「医療保険料及び年金保険料に上限が定められている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「標準報酬月額」が算定される健康保険及び厚生年金保険における「医療保険料」及び「年金保険料」の保険料率の「上限」については、被保険者の保険料負担の予見可能性を高める等の観点から設定しているところである。

二について

 御指摘の「介護保険料及び保険料率に上限が設けられていない理由」については、「医療保険料及び年金保険料」と異なり、先の答弁書(令和七年三月十八日内閣参質二一七第五二号。以下「前回答弁書」という。)一及び二についてでお答えしたとおり、市町村(特別区を含む。)において介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第七十条第十項に規定する日常生活圏域における同法第百十七条第二項各号に定める介護給付等対象サービスの種類ごとの量等を十分に見込めなくなるおそれがあることなどがあるため、「医療保険料及び年金保険料」と「介護保険料」とを同列に論ずることは適当ではないと考えている。

 なお、同法の制定時においては、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第百五十六条第一項第一号に規定する一般保険料率と同法第百六十条第十六項に規定する介護保険料率の合計に対して「上限」を設けることとされていたところ、介護保険法の施行に際し、介護保険料の確実な徴収と医療保険制度の安定を図る観点から、健康保険法等の一部を改正する法律(平成十二年法律第百四十号)により、一般保険料率についてのみ「上限」を設けることとされたところである。

三の前段について

 「「介護給付適正化計画」に関する指針」(令和五年九月十二日付け老介発〇九一二第一号厚生労働省老健局介護保険計画課長通知別紙。以下「適正化指針」という。)に定める「要介護認定の適正化」については、適正化指針において、「要介護認定の変更認定又は更新認定に係る認定調査の内容について、市町村職員等が訪問又は書面等の審査を通じて点検することにより、適切かつ公平な要介護認定の確保を図る」等と示した上で、「保険者は、・・・着実に実施することとし、・・・趣旨・実施方法等を踏まえ、必要に応じて見直しながら取り組むこととする」とし、これに基づき、各保険者において、地域の実情等を踏まえ実施されているものであるところ、これらの御指摘の「具体的な内容」の詳細を網羅的に把握していないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

三の後段について

 御指摘の「介護給付費の抑制効果」の「定量評価及び実績詳細」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、適正化指針に定める「要介護認定の適正化」は、要介護認定の申請から認定までの間の手続が適正に行われるよう点検及び支援を行うことを主たる目的としているものであり、これによる「介護給付費」の増減について試算できるものではないため、当該増減についてお答えすることは困難である。

四の前段について

 適正化指針に定める「ケアプラン等の点検」については、適正化指針において、「介護支援専門員が作成した居宅サービス計画、介護予防サービス計画の記載内容について、事業者に資料提出を求め又は訪問調査を行い、市町村職員等の第三者が点検及び支援を行うことにより、個々の受給者が真に必要とする過不足のないサービス提供を確保するとともに、その状態に適合していないサービス提供等の改善を図る」等と示した上で、「保険者は、・・・着実に実施することとし、・・・趣旨・実施方法等を踏まえ、必要に応じて見直しながら取り組むこととする」とし、これに基づき、各保険者において、地域の実情等を踏まえ実施されているものであるところ、これらの御指摘の「具体的な実施内容」の詳細を網羅的に把握していないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

四の後段について

 御指摘の「過剰・不要なサービス利用が是正された実績や介護給付費の削減効果」の「定量評価及び実績詳細」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、厚生労働省が毎年度実施している「介護給付適正化実施状況調査」(以下「実施状況調査」という。)によれば、「ケアプラン」の「点検」の実施に係る「過誤申立金額」は、平成三十年度において〇・六億円、令和元年度において一・二億円、令和二年度において〇・八億円、令和三年度において〇・九億円、令和四年度において一・一億円である。

五の前段について

 適正化指針に定める「医療情報との突合・縦覧点検」については、お尋ねの「医療情報の詳細、突合・縦覧点検する際の基準」を含め、適正化指針において、「医療担当部署との更なる連携体制の構築を図りつつ、受給者の後期高齢者医療や国民健康保険の入院情報と介護保険の給付情報を突合し、給付日数や提供されたサービスの整合性の点検を行い、医療と介護の重複請求の排除等を図る」等と示しているところであり、また、御指摘の「不適正なサービス利用等」の具体的に指し示すものが明らかではないため、これに関するお尋ねについてお答えすることは困難である。

五の中段について

 適正化指針に定める「医療情報との突合・縦覧点検」については、適正化指針において、「保険者は、・・・着実に実施することとし、・・・趣旨・実施方法等を踏まえ、必要に応じて見直しながら取り組むこととする」とし、これに基づき、各保険者において、地域の実情等を踏まえ実施されているものであるところ、これらの御指摘の「具体的な実施内容」の詳細を網羅的に把握していないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

五の後段について

 御指摘の「介護給付費の適正化」の「定量評価及び実績詳細」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、実施状況調査によれば、「医療情報との突合・縦覧点検」の実施に係る「過誤申立」の「金額」は、平成三十年度において十・八億円、令和元年度において十三・一億円、令和二年度において十一・九億円、令和三年度において十三・二億円、令和四年度において十八・五億円である。

六について

 御指摘の「介護給付費」の「増加」は、主に高齢化の進展などによるものであり、「これらの施策を実施したにもかかわらず、介護給付費が増加してきたことについて、施策が不十分、若しくは、施策の運用に問題があった」とは考えていない。

 いずれにせよ、政府としては、適正化指針に基づき、「受給者が真に必要とする過不足のないサービスを、事業者が適切に提供するよう促すこと」等を目的に、「介護給付の適正化のために保険者が行う適正化事業」として、「要介護認定の適正化」、「ケアプラン等の点検」、「医療情報との突合・縦覧点検」等を推進しているところである。

七について

 御指摘の「保険料負担の上限や給付の範囲等」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、御指摘の「保険料負担の上限」に係る「制度的な見直し」については、二について並びに前回答弁書一及び二についてでお答えしたとおりであり、また、「給付の範囲」に係る「制度的な見直し」については、前回答弁書五及び七についてでお答えしたとおりである。