質問主意書

第217回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一七第一〇九号
  令和七年五月十三日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員山本太郎君提出原発作業員の安全管理及び労災認定基準に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山本太郎君提出原発作業員の安全管理及び労災認定基準に関する質問に対する答弁書

一について

 令和七年三月二十四日の参議院環境委員会における御指摘の鰐淵厚生労働副大臣の答弁は、御指摘の東京都労働委員会の「命令」を踏まえ、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第一条に規定する「労働災害の防止のための・・・責任体制の明確化・・・等その防止に関する・・・対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保する」ために、御指摘の「制度見直し」が必要かどうかについて精査を行う趣旨で述べたものであるところ、厚生労働省において、当該精査を行った結果、「命令」を受けた「元請企業」については、同法第十五条第一項に規定する特定元方事業者として、例えば、同法第二十九条第一項及び第二項の規定に基づき、当該特定元方事業者の労働者のみならず、関係請負人(同法第十五条第一項に規定する関係請負人をいう。以下同じ。)及び関係請負人の労働者が、労働安全衛生関係法令の規定に違反しないよう必要な指導を行わなければならないとされ、また、当該関係法令の規定に違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行わなければならないとされているとともに、同法第三十条第一項の規定に基づき、当該特定元方事業者の労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、作業間の連絡及び調整等の必要な措置を講じなければならない等の責任が課されているところ、これらを遵守することにより、これらの労働者の安全及び健康の確保が図られるものと考えられることから、御指摘の「制度見直し」が必要との結論には至っておらず、また、御指摘のような「指示」はない。

二について

 御指摘の「固形がんの労災認定」に係る考え方については、令和七年三月二十四日の参議院環境委員会において、鰐淵厚生労働副大臣が、「定期的に最新の医学的知見を収集して専門家による検討会等も行っておりますけれども、・・・現場で活躍していただいている、活動していただいている方々の安心、安全を守ることも重要な課題でございますので、しっかりと必要に応じて検討させていただきたいと思います。」と答弁しているとおり、厚生労働省においては、こうした考え方の下、検討を行うこととしているところ、現時点では、当該「専門家による検討会等」において、三で御指摘の「二〇二三年INWORKS調査結果」については、国際的に合意されている科学的知見と相違している等と確認されていることから、当該認定に係る考え方の変更には至っておらず、また、御指摘のような「指示」はない。

三について

 お尋ねについては、例えば、平成二十四年九月に、厚生労働省労働基準局労災補償部長が参集を求めて開催していた、放射線に係る医学等の専門家等により構成される「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」が取りまとめた報告書において、「UNSCEARは、二千六年及び二千十年に報告書を取りまとめており、二千六年報告書を要約したものとして発表された二千十年報告書では、固形がんについて「百から二百ミリグレイ以上において、統計的に有意なリスクの上昇が観察される。」と述べている。百ミリシーベルト未満の被ばくによるがんのリスクの増加については、ICRPが、二千七年勧告で、「がんリスクの推定に用いる疫学的研究方法は、およそ百ミリシーベルトまでの線量範囲でのがんのリスクを直接明らかにする力を持たないという一般的な合意がある。」としている。」と示されているとおりであり、これらについては、独立行政法人放射線医学総合研究所監訳「原子放射線の影響に関する国連科学委員会UNSCEAR二千十年報告書」及び社団法人日本アイソトープ協会が翻訳し、発行した「国際放射線防護委員会の二千七年勧告」に記載されているところである。

四について

 令和七年三月二十四日の参議院環境委員会における御指摘の山中原子力規制委員会委員長の答弁は、答弁を求められた事項が原子力規制委員会の所管外であったことから、一般論として、原子力規制に反映すべき新たな知見が得られた場合には、当該知見を踏まえて対応を検討するという同委員会の基本的な姿勢を述べたものであるが、いずれにせよ、御指摘の「判断基準」を「見直すこと」については、同委員会の所管外の事項であり、お尋ねについて同委員会としてお答えする立場にはない。