第217回国会(常会)
内閣参質二一七第一〇三号 令和七年四月三十日 内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 林 芳正
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員浜田聡君提出保険者がレセプトや電子カルテ等の医療情報にアクセスして医療の質や費用対効果を分析できる環境整備の重要性等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員浜田聡君提出保険者がレセプトや電子カルテ等の医療情報にアクセスして医療の質や費用対効果を分析できる環境整備の重要性等に関する質問に対する答弁書 一の1及び2について お尋ねの「アクセスすること」及び「アクセスが不可能又は制限」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「レセプトデータ」及び「電子カルテデータ」は、病歴等を含む個人情報であることから、医療保険者は、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)その他の関係法令の規定に基づき、これらのデータを取り扱うことが原則であるところ、「レセプトデータ」については、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第七十六条第四項等において、「保険者は、保険医療機関又は保険薬局から療養の給付に関する費用の請求があったときは、・・・審査の上、支払うものとする」等と規定されているとおり、医療保険者が審査を行うこととされており、また、「電子カルテデータ」については、現行法令上、当該データを医療保険者が取得し、又は提供を受けることについて定めた規定はない。 一の3について 御指摘の「個別の医療情報」の具体的に指し示すものが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、一の1及び2についてで述べたとおり、医療保険者は、個人情報の保護に関する法律や健康保険法等に基づき、「医療情報」を取り扱うこととなっている。 二の1から3まで及び5について 御指摘の「明らかに過剰・不適切と認めた医療行為」及び「保険者が医療の質が著しく低いと評価している医療機関」の具体的に指し示すものが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、我が国においては、健康保険法第七十六条第四項等において、「保険者は、保険医療機関又は保険薬局から療養の給付に関する費用の請求があったときは、・・・審査の上、支払うものとする」等と規定されているとおり、医療保険者が診療報酬の審査及び支払を行うこととされており、また、同条第五項等に基づき、医療保険者は、当該審査及び支払に関する事務について、審査支払機関に委託することができることとされ、当該審査支払機関が、個別の診療報酬請求の審査において、個別の症例に応じて、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号)、診療報酬の算定方法(平成二十年厚生労働省告示第五十九号)等に基づき、適切に行っているところである。 二の4について お尋ねについては、健康保険法第七十六条第二項等において、「療養の給付に要する費用の額は、厚生労働大臣が定めるところにより、算定するものとする」と規定されているとおり、現行法令上、御指摘の「保険者が独自に・・・調整を行うこと」は認められておらず、お尋ねの「理由及び趣旨目的」に関しては、令和五年三月二十九日の衆議院厚生労働委員会において、加藤厚生労働大臣(当時)が「国民皆保険の下で誰もがどこでも一定の自己負担で適切な医療を受けられるという意味において、一律の点数が設定される、これは被保険者間の公平も期すということでつくられている。・・・基本はどこでも同じような負担で医療が受けられる、そういった必要性から一律の診療報酬になっている」と答弁しているとおりである。 三の1及び2について 御指摘の「医療の質・・・を基に」及び「誘導を行うこと」の具体的に意味するところが明らかではないため、これに関するお尋ねについてお答えすることは困難であるが、御指摘の「費用、受診履歴等のデータを基に、」「受診」の「推奨」を「行うこと」については、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第八条においては、厚生労働大臣は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図る観点から、医療に要する費用の適正化を総合的かつ計画的に推進するため、当該適正化に関する施策についての基本的な方針を定めることとされ、同条に基づき同大臣が定める医療費適正化に関する施策についての基本的な方針(令和五年厚生労働省告示第二百三十四号)において、「生活習慣病の発症予防として、個人の生活習慣の改善を促す取組を進めることや重症化するリスクの高い医療機関未受診者等に対して医療機関の受診を勧奨し、必要な治療を行うことなど、その重症化を予防するための取組を進めることが重要である。生活習慣病予防の対策のため、平成二十年度から、特定健康診査等・・・の実施が保険者に義務付けられている。・・・令和六年度から始まる第四期の特定健康診査等実施計画・・・の計画期間においては、特定保健指導にその成果が出たことを評価する評価体系(アウトカム評価)の導入、ICTの活用等により、特定健康診査等の実施率の向上を図り、更に効果的かつ効率的な取組を進めていくことが期待される。また、糖尿病の重症化予防の取組としては、「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」(平成二十八年四月策定、平成三十一年四月改定)に基づき、都道府県、市町村(特別区を含む。・・・)をはじめとする保険者等と地域の医師会等の関係者が協働・連携し、ハイリスク者に対する受診勧奨、保健指導等の取組が進められている」としているとおりであり、これに基づく取組を推進していくこととしている。 三の3について 御指摘の「保険者への支援」については、三の1及び2についてで述べたとおりであり、また、御指摘の「法整備」については、例えば、先の答弁書(令和七年四月十五日内閣参質二一七第八三号)四の2についてで述べたとおり、令和六年十月三十日に開催された第百十一回社会保障審議会医療部会において、「オンライン資格確認等システム」を拡充し、「各種健診結果を医療保険者及び全国の医療機関等や本人等が閲覧できる」ようにすることが確認され、このことも含む医療法等の一部を改正する法律案を今国会に提出しているところである。 四の1、4及び5について 御指摘の「医療費適正化と医療の質向上との両立を目的とした制度」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「米国」の「Accountable Care Organization(ACO)」及び「Pay for Performance(P4P)」については把握している。 また、御指摘の「同制度の導入」、「P4Pを導入したもの」及び「P4Pを組み込んだ制度改革」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「米国」の「P4P」を我が国に導入することについては、平成二十年十月二十九日に開催された規制改革会議第十三回医療タスクフォースにおいて、厚生労働省から、「我が国の医療保険制度においては、診療行為に応じて支払いがなされる出来高払い方式を原則としており、米国とは支払制度そのものが異なるため、その導入の必要性を含め、慎重な検討が必要であると考えている」と回答しているとおりであり、現在も同様の考え方である。 四の2及び3について 御指摘の「前記四の1について」及び「医療の質・・・に資する取組を行う保険者」の具体的に指し示すものが明らかではないため、これに関するお尋ねについてお答えすることは困難であるが、御指摘の「保険者による」「費用対効果に資する取組」及び「重症化予防、健康指導、医療費適正化等の取組」に関しては、例えば、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第七十二条第三項の規定に基づき、被保険者の健康の保持増進、医療の効率的な提供の推進その他医療に要する費用の適正化等に係る取組について「評価」を行い、交付金の交付による「財政的措置」を行っているところである。 |