第217回国会(常会)
内閣参質二一七第九二号 令和七年四月十八日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員浜田聡君提出高額療養費自己負担上限額引上げの優先度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員浜田聡君提出高額療養費自己負担上限額引上げの優先度に関する質問に対する答弁書 一について お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「改革工程にある各取組」については、令和七年三月五日の参議院予算委員会において、福岡厚生労働大臣が「改革工程については、二千二十八年度までにそれぞれ速やかに検討すべきものでございまして、既に多くの項目が検討に着手しています。例えば、その地域医療構想の見直しや医療DX推進のための法案は今国会に提出させていただいていますし、また、被用者保険の適用拡大のための法案提出に向けた検討、長期収載品の選定療養、金融所得、金融資産の勘案など実務的な検討に着手するなど、ほかの分野も様々なことを今並行的に進めさせていただいています。その上で、高額療養費につきましては、前回の見直しから約十年が経過いたしまして、その総額が医療費全体の倍のスピードで伸びている中で、制度の持続可能性や現役世代を中心とした保険料負担の観点から課題があることを踏まえ、負担能力に応じて配慮を行いつつ、先送りすることなく今回見直しを行うこととさせていただいたところでございます。」と答弁しているとおりである。 二について お尋ねの「薬剤保険給付の在り方の見直し」については、令和七年四月八日の参議院厚生労働委員会において、福岡厚生労働大臣が「薬剤の保険給付の在り方の見直しにつきましては、一昨年末の改革工程におきましても、医療保険制度の持続可能性を確保するための検討項目として掲げられてございまして、この改革工程に沿って改革を進めていくことになります。」と答弁しているところ、今後具体的な検討を進めていくこととしており、お尋ねの「現時点の検討状況」及び「今後の検討スケジュール」については、現時点で具体的にお答えすることは困難である。 また、お尋ねの「医療・介護の三割負担(「現役並み所得」)の適切な判断基準設定等」については、これまでも、社会保障審議会医療保険部会及び介護保険部会において議論を行ってきたところであるが、「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」(令和五年十二月二十二日閣議決定)において、お尋ねの「医療」の「三割負担(「現役並み所得」)の適切な判断基準設定等」については、「現役世代の負担が増加することや、二千二十二年十月に施行された後期高齢者医療制度における窓口負担割合の見直し(一定以上所得のある者への二割負担の導入)の施行の状況等に留意」しつつ、お尋ねの「介護」の「三割負担(「現役並み所得」)の適切な判断基準設定」については、「医療保険制度との整合性、介護サービスは長期間利用されること等の利用者への影響等を踏まえ」つつ、「引き続き検討」を行うこととしているところ、お尋ねの「今後の検討スケジュール」については、現時点で具体的にお答えする段階にない。 三の1及び2について お尋ねの「定義と具体的内容」については、平成二十三年十一月九日に開催された第四十八回社会保障審議会医療保険部会の資料五「高額療養費の見直しと受診時定額負担について」において、「制度的な給付率の変更に伴い、医療費の水準が変化することが経験的に知られており、この効果を「長瀬効果」と呼んでいる。」等と示し、また、例えば、令和七年二月二十一日の衆議院予算委員会において、福岡厚生労働大臣が「長瀬効果の金額につきましては、個々の医療や見直しの内容を踏まえて分析されるものではなく、実効給付率が変化した場合に経験的に得られている計算式に機械的に当てはめて、単純に医療費の増減効果を試算したものです。」と答弁しているとおりであり、また、御指摘の「学術的なエビデンス」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「採用している理由」については、制度改正による「医療費の増減効果」を機械的に試算することを目的として用いているためである。 三の3について 御指摘の「過去の高額療養費上限額引上げ時に」「実際の変化」が生じた医療給付費の額のうち、「長瀬効果」による「変化」の額はその一部であり、また、当該額については正確に算出することも困難であることから、「乖離はどの程度であったか」とのお尋ねについてお答えすることは困難である。 四の1について お尋ねについては、令和七年二月二十一日の衆議院予算委員会において、福岡厚生労働大臣が「長瀬効果の金額につきましては、個々の医療や見直しの内容を踏まえて分析されるものではなく、実効給付率が変化した場合に経験的に得られている計算式に機械的に当てはめて、単純に医療費の増減効果を試算したものです。」と答弁しているとおりであり、御指摘のように「推計したもの」ではない。 四の2の前段について 御指摘の「資料で示されている所得区分ごとの引上げ率」については、令和七年一月二十三日に開催された第百九十二回社会保障審議会医療保険部会の資料二「高額療養費制度の見直しについて」(以下「令和七年一月二十三日医療保険部会資料二」という。)において、「年収約千百六十万円」からは「十五パーセント」、「年収約七百七十」から「千百六十万円」までは「十二・五パーセント」、「年収約三百七十」から「七百七十万円」までは「十パーセント」、「年収約三百七十万円」までは「五パーセント」、「住民税非課税」及び「住民税非課税(所得が一定以下)」は「二・七パーセント」と示しているとおりである。 また、お尋ねの「根拠」については、令和七年一月二十三日医療保険部会資料二においてそれぞれ、「十パーセント」については「前回見直しを行った約十年前からの平均給与の伸び率が約九・五~約十二パーセントであることを踏まえ、平均的な所得層の引き上げ幅を十パーセントに設定」と、「二・七パーセント」については「引き上げ率は年金改定率と同じ」と示しているとおりであり、「十五パーセント」、「十二・五パーセント」及び「五パーセント」については「平均的な収入を超える所得区分については、平均的な引き上げ率よりも高い率で引き上げる一方で、平均的な収入を下回る所得区分の引き上げ率は緩和するなど、所得が低い方に対して一定の配慮を行う。」と示している考え方に基づき設定したものである。 四の2の後段について お尋ねについては、令和七年一月二十三日医療保険部会資料二において、「能力に応じて全世代が支え合う全世代型社会保障を構築する観点から負担能力に応じた負担を求める仕組みとする。具体的には、平均的な収入を超える所得区分については、平均的な引き上げ率よりも高い率で引き上げる一方で、平均的な収入を下回る所得区分の引き上げ率は緩和するなど、所得が低い方に対して一定の配慮を行う。」と示しているとおりである。 四の3について 御指摘の「自己負担限度額の引上げ率」については、四の2の前段についてでお答えしたとおりであり、お尋ねのように「七十歳以上と七十歳未満の自己負担限度額の引上げ率に差異がある」ものではない。 五について お尋ねについては、令和七年一月二十三日に開催された第百九十二回社会保障審議会医療保険部会において、厚生労働省から、「年収三百七十万から七百七十万ということで、いわゆる平均的な所得層でございますけれども、これが前回見直しを行った約十年前からの平均給与の伸び率が十パーセントから十二パーセントぐらいであったことを踏まえて、平均的な所得層の今回の引上げ幅を十パーセントに設定した上で、それより所得がある方については引上げ幅を若干多めにさせていただく、・・・能力に応じた支え合いということを行っていくというものでございます。」と説明しているとおりである。 六の1及び2の前段について お尋ねの「高額療養費の支給総額及びその内訳」については、厚生労働省が毎年度公表している「医療保険に関する基礎資料」によれば、例えば、直近の令和四年度について、お尋ねの「支給総額」は約二・九七兆円であり、お尋ねの「年代別」の支給額は、七十五歳以上の高齢者等を被保険者とする後期高齢者医療制度については約〇・八四兆円、後期高齢者医療制度以外の七十五歳未満の者等を被保険者等とする医療保険制度については約二・一三兆円である。また、お尋ねの「所得区分別」の支給額は、調査に膨大な作業を要することから、網羅的にお示しすることは困難であるが、例えば、同資料によれば、後期高齢者医療制度について、「現役並み所得者」については約〇・一二兆円、「一定以上所得者」については約〇・一二兆円、「現役並み所得者及び一定所得者以外」については約〇・六〇兆円である。さらに、お尋ねの「性別」、「入院・外来別」及び「疾患別」の支給額については、高額療養費を支給決定する際には、世帯単位で、それぞれの者が受けた、それぞれの医療に係る医療費を合算した金額に応じて支給されるものであり、それぞれの医療に応じた支給額があるものではないことから、把握することは困難である。 六の2の後段について 御指摘の「高額療養費上限額引上げ時の影響」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることが困難であるが、高額療養費の見直しに当たっては、例えば、令和六年十二月五日に開催された第百八十八回社会保障審議会医療保険部会の資料一「医療保険制度改革について」において、「高額療養費と実効給付率の推移」や「住民税非課税区分を除く各所得区分の細分化・・・を行った上で、自己負担限度額を機械的に一律の率で引き上げた・・・場合の保険料等への影響」についての「機械的なモデル試算の結果」等を示しており、また、令和七年一月十日の閣議後記者会見において、福岡厚生労働大臣が「見直しに当たっては、各界の有識者から構成される審議会、これは医療保険部会ですが、そこにおいて、高齢者に比較的多い疾患例を用いて、その場合の自己負担額や、外来特例に該当している患者の割合、過去同様の見直しを行った際の患者の受診行動や、一人当たり診療費の変化といったデータに基づき、ご議論いただいているところです。」と答弁しているとおり、各種のデータに基づき、検討しているところである。 七について お尋ねについては、令和七年三月三十一日の衆議院本会議において、石破内閣総理大臣が「高額療養費制度は、全社会型社会保障の改革工程において、見直しについて検討を行うこととされておりますが、今般、検討プロセスに丁寧さを欠いたと御指摘をいただいたことを重く受け止め、本年秋までに改めて方針を検討し、決定することといたしました。・・・他方、この見直しは、高額な薬剤の登場などにより、その総額が医療費全体の倍のスピードで伸びていく中で、現役世代を中心とした保険料負担の抑制や制度の持続可能性の確保の観点から提案させていただいたものであり、これらの必要性が変わるものではございません。今後の検討に当たりましては、高額療養費制度の持続可能性を確保しつつ、患者の経済的な御負担が過重なものとならないようにすることが重要であり、関係者と丁寧な議論を重ねつつ、増大する高額療養費を能力に応じてどのように分かち合うかという観点から検討を進めてまいります。」と答弁しているとおりである。 |