質問主意書

第217回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一七第八五号
  令和七年四月十五日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員浜田聡君提出保育所への運営費加算要件として「施設・事業所の職員の平均経験年数が十年以上」を設定すること等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出保育所への運営費加算要件として「施設・事業所の職員の平均経験年数が十年以上」を設定すること等に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「保育士の経験年数と保育の質に因果関係がある」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「保育士の経験年数と保育の質」については、令和七年四月二日の衆議院厚生労働委員会において、政府参考人が「様々な研究がございまして、OECDの報告書の中で、余り経験年数と関係しないというようなものもございますし、同じ報告書の中でも、三歳未満を対象とする施設では、職務経験と質の高さの関連を示す研究で否定的な報告をされていないというふうな報告もございます。また、国内の複数の研究でも、経験の多さが子供への一層の理解や幅広い視点から子供を捉えることにつながっているというふうに示されているものもございまして、この点につきましては、学者によってというか研究によって様々な結論がございますけれども、私どもの承知しているものの中では、平均経験年数の多さが保育の質の向上につながっているということを示すものもあるところでございます。」と答弁しているとおりである。

二について

 御指摘の「一歳児に対する保育士の配置基準を「六対一」から「五対一」に変更する施策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「当該加算要件を設定した理由」については、令和七年四月二日の衆議院厚生労働委員会において、政府参考人が「一歳児の配置改善におきましては、これまで実施してきた三歳児あるいは四、五歳児よりも、より多くの保育人材が必要となりますので、保育人材の確保が課題とされている中で、まずは、基準の見直しではなく加算措置により対応を進めることとし、あわせて、保育の質の向上の観点や、人材不足の中で持続可能な改善を図るため、職員の処遇改善や職場環境改善を進めている施設を対象として措置することとしたものでございます。・・・平均経験年数十年以上の要件につきましても、この観点から設定しているものでございますけれども、保育事業所の平均経験年数がおおむね十一年であることを踏まえまして、それよりも低く設定したものでございます。」と答弁したとおりであり、また、「保育事業所の平均経験年数がおおむね十一年であること」についてのお尋ねの「根拠」については、こども家庭庁が実施した「令和六年度施設型給付費等の基礎資料に関する調査」に基づき試算したところによると、約十一・三年となっているところである。

三について

 御指摘の「副次的効果」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、現時点では御指摘のような「悪影響」があるとは想定しておらず、また、令和七年二月二十日の衆議院予算委員会において、三原内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画)が「まず、一歳児の配置改善は五十数年ぶりでありますので、政府案として、この形で令和七年度から一歳児の配置改善加算を着実に実施し、保育現場における職員配置の改善、これを進めてまいりたいと思います。その上で、本要件の在り方につきましては、加算の取得ですとか実際の配置の状況等を踏まえてまた考えてまいりたいというふうに思っております。」と答弁しているところ、「本要件の在り方」について「また考えて」いく中で、お尋ねの「影響」についても適切に評価してまいりたい。

四について

 御指摘の「これに反証する科学的根拠」及び「当該加算要件が科学的根拠に基づいたものとは言えない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「保育士の経験年数」と「保育の質」については一についてで、また、「当該加算要件」を設けた理由については二についてで述べたとおりである。

五の前段について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、例えば、こども家庭審議会子ども・子育て支援等分科会においては、「こどもたちにきちんと向き合って保育の狙いを達成するためには、配置基準の改善を保育現場は本当に待ち望んでまいりました。一歳児についても早急に改善・・・が必要と考えておりますので、同様に御検討をお願いいたします。」、「保育士等が余裕を持って、何より子どもたちにとって安心・安全な環境で保育に当たることができる職場環境づくりが重要であり、令和六年度からの実現がかなわなかった一歳児の職員配置基準の改善については早期に実施していただくよう、強く要望します。」等の意見があったところである。

五の後段について

 お尋ねについては、こども家庭庁が令和六年十二月二十日に公表した「保育政策の新たな方向性~持続可能で質の高い保育を通じたこどもまんなか社会の実現へ~」(以下「保育政策の新たな方向性」という。)において、「保育の安全性と保育の質の確保・向上のため、職員配置基準の改善・・・を進める」と示しているとおり、御指摘のように「保育士の配置基準を手厚くすること」は「保育の質」の「向上」につながるものと考えている。

六について

 お尋ねについては、保育政策の新たな方向性において、「保育DXの推進による業務改善」として、「各種手続の標準化・簡素化を図るとともに、テクノロジーの活用による業務改善を進め、効率化できた時間で保育の質の向上に取り組むことができる環境を整備する」こととし、「保育現場における保育ICT(計画/記録、保護者連絡、登降園管理、キャッシュレス決済)や、こどもの安全対策に資する設備等の導入推進」、「給付・監査等の保育業務ワンスオンリーの実現(保育業務施設管理プラットフォームの構築と活用推進)」、「保活ワンストップの実現(保活情報連携基盤の構築と活用推進/就労証明書のデジタル化)」、「保育現場におけるテクノロジー活用を促進するための環境整備(①先端的な保育ICTのショーケース化、②ICTに関する相談窓口・人材育成、③ネットワーク形成・普及啓発、をパッケージとして行う「保育ICTラボ事業」の実施)」、「こども誰でも通園制度の利用に係るシステムの構築・運用」等と示しているところである。

七について

 お尋ねについては、三についてで述べたとおりである。

八について

 お尋ねについては、保育政策の新たな方向性において、「人口減少に対応しながら、こどもまんなか社会の実現を図るため、保育政策について、今後は、待機児童対策を中心とした「保育の量の拡大」から、「地域のニーズに対応した質の高い保育の確保・充実」と、「全てのこどもの育ちと子育て家庭を支援する取組の推進」に政策の軸を転換。あわせて「保育人材の確保・テクノロジーの活用等による業務改善」を強力に進め、制度の持続可能性を確保」と示しているところ、御指摘の「「保育士の確保」、「保育の質の向上」及び「業務の効率化」」については、いずれかがお尋ねのように「最も優先的に考えている項目」というわけではなく、いずれも重要と考えており、引き続き、こうした施策を総合的に推進してまいりたい。