質問主意書

第217回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一七第八三号
  令和七年四月十五日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員浜田聡君提出医療DXと保険者機能強化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田聡君提出医療DXと保険者機能強化に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについては、例えば、医療費適正化に関する施策についての基本的な方針(令和五年厚生労働省告示第二百三十四号。以下「医療費適正化基本方針」という。)において、「加入者の資格管理や保険料の徴収等、医療保険を運営する主体としての役割に加え、保健事業等を通じた加入者の健康管理や医療の質及び効率性向上のための医療提供体制側への働きかけを行うなど、保険者機能の強化を図ることが重要である」等としているとおりである。

二の1について

 お尋ねについては、政府として、「医療DXの推進に関する工程表」(令和五年六月二日医療DX推進本部決定。以下「工程表」という。)において、「具体的な施策及び到達点」として、「マイナンバーカードと健康保険証の一体化の加速等」、「全国医療情報プラットフォームの構築」及び「電子カルテ情報の標準化等」を掲げ、各種の取組を進めている。

二の2及び3について

 御指摘の「より包括的な医療情報」は、御指摘の「患者の診療情報」と理解した上で、お尋ねの「保険者へ提供される情報について、健診情報に限定せず、」「患者の診療情報」「を活用できるようにするための制度改革」及び「保険者が診療情報を適切に活用できる仕組み」については、「患者の診療情報」には、機微な情報や専門的な情報も含まれることから、御指摘の「個人情報保護の観点」のみならず、「現状、保険者に共有」されている「特定健康診査(特定健診)や労働安全衛生法に基づく事業者健診等の結果のデータ」の「活用」の状況も踏まえた上で、「患者の診療情報」の「活用」の方法等について、十分な時間をかけて検討を行う必要があると考えている。

二の4の前段及び中段について

 御指摘の「地域医療情報連携ネットワークの構築」については、各地域の実情に応じ、市町村、医療法人等の事業主体や「ネットワーク」の対象等が異なり、事業主体において活用されている、お尋ねの「補助金」も様々であることから、「補助金の総額」については、調査に膨大な作業を要するため、網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、令和五年三月六日の参議院予算委員会において、政府参考人が「地域において診療上必要な医療情報を電子的に共有、閲覧できる仕組みとしての地域医療情報連携ネットワークの構築につきましては、これまで地域医療介護総合確保基金等によりまして支援を行って」いる旨答弁しているところ、当該「支援」の「総額」は、「支援」が開始された平成二十一年度から令和四年度までで約六百億円である。また、お尋ねの「費用対効果」に関しては、例えば、「地域医療介護総合確保基金」については、厚生労働省において、行政事業レビューの枠組みの下で、基金シートの作成・公表等を通じ、執行状況等を継続的に把握し、点検に取り組んでいるほか、同省保険局長が参集を求めて開催する、地方公共団体、医療や介護の団体、医療制度等の専門的知見を有する有識者等により構成される「医療介護総合確保促進会議」において、例えば、令和七年三月三日、「令和五年度地域医療介護総合確保基金の交付状況について」、「令和五年度基金事業における主な取組例」、「前年度基金事業における主な取組例の事後評価」等について確認を受けるなど、毎年度、同基金の交付状況等について確認を受けているところであり、各都道府県の実情に応じて、同基金が活用されているものと考えている。

二の4の後段について

 お尋ねの「今後、地域医療情報連携ネットワークを有効活用するための方策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、工程表においては「オンライン資格確認等システムを拡充し、保健・医療・介護の情報を共有可能な「全国医療情報プラットフォーム」を構築する」としているところ、御指摘の「地域医療情報連携ネットワーク」については、今後その現状把握を行った上で、「地域医療情報連携ネットワーク」と「全国医療情報プラットフォーム」の適切な役割分担を図りながら、地域の実情に応じた医療機関による医療情報の利活用が進むよう取り組むこととしている。

三の1の前段及び2について

 医療保険制度が異なる我が国と諸外国とを単純に比較することは適当でないと考えられるため、御指摘の「認識しているか」とのお尋ねについて一概にお答えすることは困難であり、したがって、「認識している」ことを前提としたお尋ねについてもお答えすることは困難である。

三の1の後段について

 お尋ねの「保険者の問題点及び課題点」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、一についてでお答えしたとおり、医療費適正化基本方針において、「保険者機能の強化を図ることが重要である」としているところである。

三の3及び四の1について

 御指摘の「前記三の1及び2を踏まえて」の意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、御指摘の「健康管理支援」については、医療費適正化基本方針において、「保険者等の取組」として、「保健事業の実施主体として、特定健康診査等について、令和六年度から始まる第四期特定健康診査等実施計画の計画期間から、特定保健指導にアウトカム評価を導入することや、ICTの活用等により実施率の向上を図ることとされることを踏まえ、効果的かつ効率的な実施を図るほか、加入者の健康の保持増進のために必要な事業を積極的に推進していく役割を担い、データヘルス計画に基づく事業を実施する。さらにその中で、日本健康会議の取組とも連動しつつ、医療関係者と連携した重症化予防に係る取組や、加入者の健康管理等に係る自助努力を支援する取組など、効果的な取組を各保険者等の実情に応じて推進していくことが期待されている」としており、これに基づく取組を推進していくこととしている。

三の4について

 御指摘の「低価値・無価値な医療」については、政府として定義していないため、これに関するお尋ねについてお答えすることは困難であるが、御指摘の「保険給付の適正化」については、医療費適正化基本方針において、「急性気道感染症や急性下痢症に対する抗菌薬処方などの効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療については知見が集積されており、・・・こうした医療について、地域ごとに都道府県や関係者が地域の実情を把握するとともに、適正な実施に向けた必要な取組について検討し、実施することが考えられる」等としており、これに基づく取組を推進していくこととしている。

三の5について

 御指摘の「より積極的に医療データを活用できるような法整備や制度設計の見直し」の意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、御指摘の「保険者の役割」については、一について、三の3及び四の1について並びに三の4についてでお答えしたとおりである。

四の2について

 御指摘の「データの利活用を進めるため、保険者と医療機関・自治体との連携を強化する方策」の意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、例えば、保険者が「健康管理や疾病予防の観点から、被保険者に対する適切な指導や介入を行う役割を担」うことに資する情報連携の方策については、令和六年十月三十日に開催された第百十一回社会保障審議会医療部会において、「オンライン資格確認等システム」を拡充し、「各種健診結果を医療保険者及び全国の医療機関等や本人等が閲覧できる」ようにすることが確認され、このことも含む医療法等の一部を改正する法律案を今国会に提出しているところである。

四の3について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、「保険者の機能強化」については一についてで、「健康管理支援」については三の3及び四の1についてで、「将来的な医療費の増大」については三の4についてでお答えしたとおりである。

四の4について

 御指摘の「低価値・無価値な医療」については、政府として定義していないため、これに関するお尋ねについてお答えすることは困難である。