第217回国会(常会)
内閣参質二一七第七五号 令和七年四月八日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員浜田聡君提出混合診療の解禁に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員浜田聡君提出混合診療の解禁に関する質問に対する答弁書 一、三の1及び四の1について 我が国の医療保険制度においては、一連の診療の過程において、御指摘の「混合診療」といわれる保険診療と保険外診療を併用することを原則として認めていないが、これは、保険診療を受ける患者の自己負担が不当に増大することを防ぐとともに、保険診療の過程において安全性、有効性等が確立していない医療が併用されることを防ぐ趣旨であり、お尋ねの「法的根拠」については、健康保険法(大正十一年法律第七十号。以下「健保法」という。)において、被保険者が支払うこととされている額は健保法第七十四条等において定める額に限られているほか、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号。以下「療担規則」という。)第五条等により、健保法第七十四条に定める一部負担金等を超える費用の徴収を原則として禁ずるとともに、療担規則第十八条により、特殊な療法又は新しい療法等を禁止し、さらに、療担規則第十九条により、使用薬剤の薬価(薬価基準)(平成二十年厚生労働省告示第六十号)別表に収載されている医薬品以外の薬物の使用等を原則として禁止していることによるものである。 二の1について お尋ねの「現在認められている保険外併用療養」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、保険外併用療養費(健保法第八十六条に規定する保険外併用療養費をいう。以下同じ。)の制度として「認められている」ものとしては、健保法第六十三条第二項第三号に規定する評価療養、同項第四号に規定する患者申出療養及び同項第五号に規定する選定療養があるところであり、具体的には、例えば、厚生労働省ホームページの「保険外併用療養費制度について」において、「評価療養」として「先進医療」、「医薬品、医療機器、再生医療等製品の治験に係る診療」、「薬事承認後で保険収載前の医薬品、医療機器、再生医療等製品の使用」、「薬価基準収載医薬品の適応外使用(用法・用量・効能・効果の一部変更の承認申請がなされたもの)」、「保険適用医療機器、再生医療等製品の適応外使用(使用目的・効能・効果等の一部変更の承認申請がなされたもの)」及び「プログラム医療機器の使用(薬事の第一段階承認後のもの、チャレンジ申請で再評価を目指すもの)」、「患者申出療養」並びに「選定療養」として「特別の療養環境(差額ベッド)」、「予約診療」、「時間外診療」、「大病院の初診」、「大病院の再診」、「百八十日以上の入院」、「制限回数を超える医療行為」、「歯科の金合金等」、「金属床総義歯」、「小児う蝕の指導管理」、「水晶体再建に使用する多焦点眼内レンズ」、「保険適用期間終了後のプログラム医療機器」、「間歇スキャン式持続血糖測定器」、「精子の凍結及び融解」及び「長期収載品」と示しているところである。 二の2について 御指摘の「前記1の対象範囲を拡大する等、混合診療を解禁すること」の意味するところが必ずしも明らかではないが、個別の医療行為等を保険外併用療養費の制度の支給対象に追加することについては、中央社会保険医療協議会における有効性、安全性等についての評価等を踏まえ、適切に対応することとしている。 三の2及び3について 我が国の医療保険制度においては、中央社会保険医療協議会において、個別の医療行為等の安全性、有効性等について科学的な根拠に基づく評価を行い、当該安全性、有効性等が確立した治療を保険診療の対象としているところ、お尋ねの「安全性」や「有効性」が「十分に確保されていない医療」の具体的に意味するところが明らかではなく、また、御指摘の「指摘」について承知していないことから、お尋ねについてお答えすることは困難である。 三の4について 御指摘の「保険外診療」の個別の「医療行為」については、必ずしも「安全性・有効性が確保されて」いるか否かについて確認をするものではないため、お尋ねの「確保されていない医療」についてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、「保険外診療」であるか保険診療であるかにかかわらず、個別の「医療行為」については、患者の治療に関し高度な専門性を有する医師において、医師法(昭和二十三年法律第二百一号)等を遵守しつつ、行われるものであると考えている。 三の5について お尋ねの「安全性・有効性が確保されていない医療については、混合診療を認めた上で、保険診療から段階的に除外していく」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。 四の2の前段について 御指摘の「混合診療」は原則として認めていないため、これを行うことを前提としたお尋ねの「具体的な事例や統計調査資料」は有していない。なお、御指摘の「混合診療」を原則として認めることとした場合には、一、三の1及び四の1についてでお答えしたとおり、保険診療を受ける患者の自己負担が不当に増大するとともに、保険診療の過程において安全性、有効性等が確立していない医療が併用される可能性があると考えている。 四の2の後段について 御指摘の「適切な規制」の意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、我が国においては、必要かつ適切な医療は基本的に保険診療とする一方、将来的な保険適用を目指す高度な医療等については一定の要件の下、安全性、有効性等を国において確認する等により、保険外併用療養費制度において、保険診療と保険外診療との併用を認めているところである。 五について 御指摘の「公定価格の枠内」及び「医師の指名料など」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、御指摘の「医師の指名料」については、平成二十八年一月二十九日に開催された中央社会保険医療協議会において、「診療報酬における手技料は統一的に設定されており、これを超えて特別の料金の徴収を可能とするかについては慎重な検討が必要」であること及び仮に「特別の料金の徴収」を「可能とした場合であっても、医療提供側と患者側の情報との間の非対称性がある中で、指名に係る特別の料金の設定方法に適正な指標を設定することができるかどうかも含めた検討が必要」であることが確認されているところであり、引き続き、慎重な検討が必要であると考えている。 |