第217回国会(常会)
内閣参質二一七第六七号 令和七年四月一日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員塩村あやか君提出診療報酬の付増請求等及び保険医療機関の支援に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員塩村あやか君提出診療報酬の付増請求等及び保険医療機関の支援に関する質問に対する答弁書 一について 御指摘の「過剰診療との相関関係」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「令和六年度の厚生労働科学研究」については、「令和六年度 厚生労働科学研究費補助金公募要項(一次)」(令和五年十二月二十二日厚生労働省大臣官房厚生科学課作成)に基づき、「こどもの医療費無償化による」「受診行動の変化により、抗菌薬等の薬剤処方の動向やその後の健康状態等への影響についても分析」が行われ、当該研究の結果について、現在取りまとめが行われているところと承知しており、現時点において、お尋ねの「研究成果」及びこれを前提とした「見解」についてお答えすることは困難である。 二について お尋ねの「毎年度・・・示されたい」の具体的に指し示す範囲が明らかではないが、例えば、令和四年度及び令和五年度において、お尋ねの「被保険者からの情報提供」が「端緒となった」「保険医療機関等の指定取消」の「件数」は、それぞれ、八件及び五件であり、また、「保険医療機関等」の「指定取消処分全体の件数」のうち、これらの「件数」の「割合」は、それぞれ、約四十四・四パーセント及び約二十三・八パーセントである。 三について お尋ねの「連絡先及びその周知方法」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「被保険者が診療報酬の付増請求等に気付いた」場合等における被保険者からの情報の提供先としては、厚生労働省組織規則(平成十三年厚生労働省令第一号)第七百十条の四等の規定及び厚生労働省組織規則第七百三十五条の二及び第七百五十一条の二に規定する地方厚生局及び四国厚生支局の分室の公の名称に関する訓令(平成二十年厚生労働省訓第五号)において、「保険医療機関、・・・保険医・・・に対する監督を行うこと」等を所掌事務とする厚生労働省の各地方厚生局(地方厚生支局を含む。以下同じ。)の医療課及び指導監査課並びに各地方厚生局に置く分室の各事務所を想定しているところ、御指摘の「周知」や「啓発」については、今後、必要に応じて検討してまいりたい。 四の前段について 御指摘の「診療が過剰か否か」の意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に、例えば御指摘の「抗菌薬の処方」の「必要性」が「乏しい」「か否か」と解すれば、お尋ねの「確認」については、「抗菌薬の処方」に係る個別の診療報酬請求の審査において、審査支払機関が、個別の症例に応じて、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号)、診療報酬の算定方法(平成二十年厚生労働省告示第五十九号)等に基づき、適切に行っているところである。 四の後段について お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「保険医療機関及び保険医療養担当規則第二十条の規定」の遵守を「担保」する仕組みとしては、例えば、健康保険法(大正十一年法律第七十号。以下「法」という。)第八十条第一号等の規定や「保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について」(平成七年十二月二十二日付け保発第百十七号厚生省保険局長通知)の別添一「指導大綱」及び別添二「監査要綱」に基づき、「被保険者等から診療内容又は診療報酬の請求に関する情報の提供があり、」「地方厚生(支)局及び都道府県が共同で行う」「都道府県個別指導が必要と認められた保険医療機関等」については、地方厚生局において、「原則として全件都道府県個別指導を実施する」こととするとともに、「指導の結果、」「診療内容に不正又は著しい不当があったことを疑うに足りる理由があるとき」に「該当すると判断した場合」等については監査を行った上で、「故意に不正又は不当な診療を行ったもの」等に「該当するときには」、法第八十条の規定に基づく保険医療機関等の指定の取消し又は法第八十一条の規定に基づく保険医等の登録の取消しを行い、「速やかにその旨を公示する」こととしており、加えて、四の前段についてでお答えしたとおり、審査支払機関において、個別の症例に応じて、個別の診療報酬請求の審査を行っているところである。 五について 御指摘の「地方公共団体におけるこどもの医療費助成」については、地方自治体が地方単独事業として実施しているものであることから、これに関するお尋ねについて政府としてお答えする立場にない。なお、御指摘の「診療明細書等の被保険者への交付」については、保険医療機関は、保険医療機関及び保険医療養担当規則第五条の二第一項において、「患者から費用の支払を受けるときは、正当な理由がない限り、個別の費用ごとに区分して記載した領収証を無償で交付しなければならない」とし、同条第二項において、「前項に規定する領収証を交付するときは、正当な理由がない限り、当該費用の計算の基礎となつた項目ごとに記載した明細書を交付しなければならない」とした上で、「医療費の内容の分かる領収証及び個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書の交付について」(令和六年三月五日付け保発〇三〇五第十一号厚生労働省保険局長通知。以下「令和六年通知」という。)において、「明細書を常に交付することが困難であることについて正当な理由」があって「患者から求められたときに交付することで足りる」とされている診療所等を除き、「レセプト電子請求が義務付けられた保険医療機関及び保険薬局は、公費負担医療の対象である患者等、一部負担金等の支払いがない患者(当該患者の療養に要する費用の負担の全額が公費により行われるものを除く。)についても、明細書を無償で発行しなければならないこと」としているところである。 六について 御指摘の「個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書」については、令和六年通知において、「療養の給付に係る一部負担金等の費用の算定の基礎となった項目・・・ごとに明細が記載されているものとし、具体的には、個別の診療報酬点数又は調剤報酬点数の算定項目・・・が分かるものであること」とし、御指摘の「それぞれの算定項目の金額」については、「診療明細書等」の「個別の診療報酬点数」に、診療報酬の算定方法第二号に規定する「一点の単価」の「十円」を乗じることにより、算出することが可能であり、また、御指摘の「診療明細書等」に「診療報酬点数」を「記載」することは、医療従事者等関係者の間に定着していることから、御指摘のように「金額が分かる記載に改めるべき」とは考えていない。 七について 御指摘の「影響等」及び「自動的に反映される仕組み」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「次期診療報酬改定」における「物価や賃上げ」への対応については、令和七年三月五日の参議院予算委員会において、政府参考人が「令和六年度の診療報酬改定や昨年の補正予算において物価高騰や賃上げに対応する観点から対策を行うとともに、来年度予算案におきましても、低所得者に配慮しつつ、医療機関の入院時の食費基準の引上げを行うこととしており、まずは、これらの取組を通じて必要な支援が医療現場に届くように取り組んでまいりたいと思っております。・・・物価等の動向、医療機関の経営状況など、足下の情勢もよく把握した上で次期診療報酬改定を始めとした必要な対応を検討してまいりたい」と答弁しているとおりである。 八について お尋ねについては、令和七年三月十四日の衆議院厚生労働委員会において、福岡厚生労働大臣が「令和六年度の診療報酬改定であったり、また、昨年末に成立いたしました補正予算におきまして、物価高騰や賃上げに対応する観点から対応を行っておりますとともに、令和七年度の予算案では、低所得者の方に配慮しながら、医療機関の入院時の食費基準の引上げなどを行うこととしておりまして、まずはこうした措置を着実に実施し、必要な支援が医療現場に行き届くように取り組んでいきたいと考えています。その上で、今後、これから現場に行き届く補正予算の効果であったり、物価などの動向、経営状況など、・・・情勢の変化もしっかりと把握した上で適切に対応してまいりたい」と、また、同月二十一日の参議院予算委員会において、同大臣が「従来より、福祉医療機構による資金繰り支援のための融資行わせていただいておるところでございますが、・・・今後、この資金繰りの支援のための融資の特例などの対策について進めてまいりたい」と答弁しているとおりである。 |