第217回国会(常会)
内閣参質二一七第六三号 令和七年三月二十八日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員浜田聡君提出令和六年財政検証の諸前提が実態と乖離している可能性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員浜田聡君提出令和六年財政検証の諸前提が実態と乖離している可能性に関する質問に対する答弁書 一の1について お尋ねの「合計特殊出生率」の「直近十年間の推移」については、厚生労働省の「人口動態統計」によると、平成二十六年が一・四二、平成二十七年が一・四五、平成二十八年が一・四四、平成二十九年が一・四三、平成三十年が一・四二、令和元年が一・三六、令和二年が一・三三、令和三年が一・三〇、令和四年が一・二六、令和五年が一・二〇である。 一の2について お尋ねの「令和六年財政検証」における人口の前提の「合計特殊出生率」については、国立社会保障・人口問題研究所が令和五年四月二十六日に公表した「日本の将来推計人口(令和五年推計)」における「合計特殊出生率」の「仮定値」を用いているところ、御指摘の「中位の場合」の当該「合計特殊出生率」の「一・三六」については、同日の第二十三回社会保障審議会人口部会において「新型コロナウイルス感染拡大の影響を除外するため、初婚については二千十九年まで、出生については二千二十年までのデータを用いて長期の水準を投影により求める」とした上で、「将来の出生率については、①「結婚する女性の割合」、②「夫婦の最終的な平均子ども数」、③「離死別や再婚が出生に与える影響」の三つの要素を勘案して計算」することが確認され、当該計算に基づき設定されたものと承知している。 二の1について お尋ねの「実質賃金上昇率」の「直近十年間の推移」については、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第二十八条に規定する標準報酬の対前年度比率を総務省が公表している「消費者物価指数」による「全国(年平均)」の「総合指数」(以下「消費者物価指数(総合指数)」という。)の対前年比率で除した率(以下「厚生年金保険被保険者の実質賃金上昇率」という。)でお答えすると、平成二十六年度が約マイナス一・六パーセント、平成二十七年度が約マイナス〇・五パーセント、平成二十八年度が約〇・一パーセント、平成二十九年度が約マイナス〇・二パーセント、平成三十年度が約マイナス〇・二パーセント、令和元年度が約〇・一パーセント、令和二年度が約マイナス〇・五パーセント、令和三年度が約一・二パーセント、令和四年度が約マイナス一・一パーセント、令和五年度が約マイナス一・五パーセントである。 二の2について お尋ねの「令和六年財政検証」における「実質賃金上昇率」の前提については、社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会(以下「経済前提専門委員会」という。)において、金融や経済の専門家により検討され、令和六年四月十二日に「令和六年財政検証の経済前提について(検討結果の報告)」(以下「経済前提専門委員会報告書」という。)が公表されているところ、経済前提専門委員会報告書において、「長期の実質賃金上昇率(対物価)は、・・・労働生産性上昇率を基礎に次式により設定する。実質賃金上昇率(被保険者一人あたり賃金、対CPI)=労働生産性上昇率+(GDPデフレーター上昇率―CPI上昇率)+被保険者の平均労働期間の変化率」とされ、当該式による計算に基づき設定されたものである。 三の1について 御指摘の「過去三十年における」「令和六年財政検証の諸前提と同じ条件下」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「令和六年財政検証の諸前提」を検討する際に把握できた当該諸前提に係る「実績平均数値」について、お尋ねの「労働力率」については、総務省の「労働力調査(基本集計)」による「十五歳以上人口」に占める十五歳以上の「労働力人口」の割合でお答えすると、平成六年から令和五年までの単純平均で約六十一・三パーセント、お尋ねの「全要素生産性(TFP)上昇率」については、内閣府の「GDPギャップ、潜在成長率(二〇二三年十―十二月期四半期別GDP速報(一次速報値))」による「全要素生産性」の上昇率でお答えすると、平成六年一―三月期四半期から令和五年十―十二月期四半期までの単純平均で約〇・八パーセント、お尋ねの「物価上昇率」については、消費者物価指数(総合指数)の対前年比率でお答えすると、平成六年から令和五年までの単純平均で約〇・四パーセント、お尋ねの「(実質(対物価))賃金上昇率」については、厚生年金保険被保険者の実質賃金上昇率でお答えすると、平成五年度から令和四年度までの単純平均で約〇・〇パーセント、お尋ねの「実質(対物価)運用利回り」については、総務省、財務省、文部科学省及び厚生労働省が令和六年三月に取りまとめた「令和四年度厚生年金保険法第七十九条の九第一項に基づく積立金の管理及び運用の状況に関する報告書」(以下「運用報告書」という。)による「年金積立金全体の実績(厚生年金と国民年金の合計)」の「名目運用利回り」を消費者物価指数(総合指数)の対前年比率で除した率でお答えすると、年金積立金管理運用独立行政法人が年金積立金の自主運用を開始した平成十三年度から令和四年度までの平均で約三・四パーセント、お尋ねの「スプレッド(対賃金)運用利回り」については、運用報告書による「年金積立金全体の実績(厚生年金と国民年金の合計)」の「実質的な運用利回り」でお答えすると、同期間の平均で約三・七パーセントである。 三の2について 御指摘の「過去三十年投影ケース」における「令和六年財政検証の諸前提において設定された数値」について、三の1で御指摘の「労働力率」の前提については、独立行政法人労働政策研究・研修機構が令和六年三月十一日に公表した「二千二十三年度版 労働力需給の推計」の「成長率ベースライン・労働参加漸進シナリオ」の数値を用いており、令和七年で六十三・〇パーセント、令和二十二年で六十四・四パーセントである。 また、三の1で御指摘の「全要素生産性(TFP)上昇率」、「物価上昇率」、「(実質(対物価))賃金上昇率」、「実質(対物価)運用利回り」及び「スプレッド(対賃金)運用利回り」の前提については、それぞれ、経済前提専門委員会報告書において、〇・五パーセント、〇・八パーセント、〇・五パーセント、二・二パーセント及び一・七パーセントとされている。その上で、お尋ねの「数値の乖離に対する政府の見解」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「差分」は、これらの経済前提専門委員会等において専門家による検討を経て適切に設定された数値と三の1についてでお答えしたそれぞれの数値の差である。 三の3について 御指摘の「数値が大きく乖離しているのであれば」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「「過去三十年投影ケース」という名称」については、経済前提専門委員会報告書において、「全要素生産性(TFP)上昇率の設定はシナリオの基軸となるものであり、長期推計における仮定や近年の実績を参照し、長期(二千三十四年度~)の仮定を次の通り設定する。(中略)現状投影ケース・・・は、直近三十年間の分布も踏まえ設定」とされたこと等を踏まえたものであり、御指摘のように「名称を見直すべき」とは考えていない。 四の1について 御指摘の「可処分所得割合」については、所得代替率(国民年金法等の一部を改正する法律(平成十六年法律第百四号)附則第二条第一項第一号に掲げる額と同項第二号に掲げる額とを合算して得た額の同項第三号に掲げる額に対する比率をいう。以下同じ。)を算出するに当たり、同号に掲げる額を算出するため、総務省の「家計調査」による「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」の「実収入」に占める「可処分所得」の割合として算出しているところ、お尋ねの「〇・八一三という数値」については、同調査の令和五年度の数値を用いて算出したものである。 四の2について 御指摘のように「個々人の所得に応じて」「可処分所得割合」は様々であることから、御指摘の「一定の可処分所得割合」として、その平均値を用いることは妥当であると考えている。 四の3について 御指摘の「可処分所得割合」については、過去の実績等に基づく推計が困難であることから、将来にわたり一定と仮定することが適当であると考えている。 五の1について お尋ねの「直近の政府の調査における単身世帯、片働き世帯及び共働き世帯」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、厚生労働省の「国民生活基礎調査」による令和五年の「単独世帯」の数は千八百四十九万五千世帯であり、また、令和六年十一月十五日の第二十回社会保障審議会年金部会の参考資料「被用者保険の適用拡大及び第三号被保険者制度を念頭に置いたいわゆる「年収の壁」への対応について 参考資料」において、令和四年の「共働き世帯数」を千百九十一万世帯、「専業主婦世帯数」を四百三十万世帯と示しているところである。 五の2及び3について お尋ねの「単身世帯及び共働き世帯」の「将来の所得代替率」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、所得代替率については、令和六年三月十八日の参議院予算委員会において、武見厚生労働大臣(当時)が「現在の所得代替率、法律上に計算方法が定義されておりまして、この定義の下で将来にわたって所得代替率が五十パーセントを上回ることとされていることでありますから、継続性の観点から今後も引き続きこの算出方法の下で所得代替率をお示ししていく必要性がございます。他方で、ライフコースが多様化する中で、様々な世帯における年金給付水準の示し方は今後の検討課題の一つという問題意識は私ども持っておりますので、社会保障審議会年金部会等において議論を開始をしたところでございます。」と答弁しており、御指摘の「令和六年財政検証」においては、同年七月三日の第十六回社会保障審議会年金部会の資料一「令和六(二千二十四)年財政検証結果の概要」において、御指摘の「モデル世帯」における年金額の将来見通しを示すとともに、同日の同部会の資料四―二「令和六(二千二十四)年財政検証関連資料②―年金額の分布推計―」において、個人単位の年金額の将来見通しについても新たに示しているところであり、また、厚生労働省が令和七年一月二十四日に公表した「令和七年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から一・九パーセントの引上げです~」において、「個人単位での公的年金加入履歴から、各世代の六十五歳時点における老齢年金の平均額や分布の将来見通し(年金額の分布推計)を作成」し「当該推計を基にした令和六年度に六十五歳になる者の加入期間や収入を基礎に、経歴類型・男女別の令和七年度の年金額を概算」した「多様なライフコースに応じた年金額」を示しているところである。 |