第217回国会(常会)
内閣参質二一七第三〇号 令和七年二月二十五日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員浜田聡君提出終末期医療に関するガイドライン及び事前指示書の法的拘束力に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員浜田聡君提出終末期医療に関するガイドライン及び事前指示書の法的拘束力に関する質問に対する答弁書 一について 「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成三十年三月十四日付け医政発〇三一四第七号厚生労働省医政局長通知別添一。以下「ガイドライン」という。)において、「人生の最終段階における医療・ケアの在り方」については「医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要な原則である」としているところである。 その上で、御指摘の「より詳細かつ実践的なガイドライン」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「医療現場における判断」に関しては、ガイドラインにおいて、「人生の最終段階における医療・ケアについて、医療・ケア行為の開始・不開始、医療・ケア内容の変更、医療・ケア行為の中止等は、医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきである」とするとともに、さらに、「人生の最終段階における医療・ケアの方針の決定手続」等について具体的な記載をしているものであり、この点に関し、現時点でガイドラインを見直すことは予定していない。 二及び三について 御指摘の「人工呼吸器の取り外しに関する法的問題点を解決する」の意味するところが明らかではないが、いずれにせよ、国民の生命倫理に関わる問題については国民的議論が必要なものであるところ、厚生労働省が実施した令和四年度「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」の調査結果を踏まえると、「書面に従って治療方針を決定すること」を法律で定めることについては、国民の合意が形成されているとは言い難く、また、同省が開催した「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」が平成三十年三月二十九日に取りまとめた「人生の最終段階における医療・ケアの普及・啓発の在り方に関する報告書」においても、「人生の最終段階の医療・ケアの在り方について・・・文書にまとめたくないという方への十分な配慮が必要であること」、「本人の意思は時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて変化しうる可能性があること」、「本人の意思を文書にまとめておく場合であっても、その文書に書かれた内容が人生の最終段階の状況に当てはまらない場合があること」等とされていることを踏まえると、現時点で、御指摘のように「事前指示書に法的拘束力を持たせる方向での法整備を検討する」ことは考えていない。 四について 政府としては、御指摘のように「ACPをより一層普及、促進させるため」、国民に対する普及啓発として、「ACP」に関する動画等の作成や周知、イベントの開催等を行うとともに、医療従事者及び介護従事者を対象とした研修を行っているほか、令和六年度診療報酬改定において、入院基本料等の施設基準について、「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和六年三月五日付け保医発〇三〇五第五号厚生労働省保険局医療課長及び歯科医療管理官通知)の別添二「入院基本料等の施設基準等」第一の六でお示ししているとおり、「保険医療機関において、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、適切な意思決定支援に関する指針を定めていること」等としているところであり、引き続き、こうした取組を通じて御指摘の「ACP」の広範な普及に努めていきたいと考えている。 |