第217回国会(常会)
内閣参質二一七第一三号 令和七年二月十二日 内閣総理大臣 石破 茂
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員齊藤健一郎君提出孤立や孤独を防ぐための環境整備に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員齊藤健一郎君提出孤立や孤独を防ぐための環境整備に関する質問に対する答弁書 一について 御指摘の「医療機関への移動支援・通院同行がセットになったサービス」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、介護保険制度では、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第四十一条の規定及び指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成十二年厚生省告示第十九号)に基づき、同条第一項に規定する居宅要介護被保険者に対して、「通院等のため、指定訪問介護事業所の訪問介護員等が、自らの運転する車両への乗車又は降車の介助を行うとともに、併せて、乗車前若しくは降車後の屋内外における移動等の介助又は通院先若しくは外出先での受診等の手続き、移動等の介助」を行った場合に、居宅介護サービス費の支給を行っているほか、同法第百十五条の四十五の規定による地域支援事業では、介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るための指針(令和六年厚生労働省告示第百六十八号)に基づき、同条第一項第一号に規定する居宅要支援被保険者等に対する「移動支援や移送前後の生活支援」を行う団体等に対して市町村が補助その他の支援を行っているところである。また、御指摘の「オンライン診療や薬の宅配を組み合わせた仕組み」に関しては、「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針」(令和五年六月三十日付け医政発〇六三〇第三号厚生労働省医政局長通知別添一)に定める「オンライン診療等の導入に関する地域における課題について把握した上で、医療機関が導入時に参考とできるような」「事例集」及び「手引き書」として、「オンライン診療その他の遠隔医療に関する事例集(令和五年八月版)」(令和五年八月三十日付け厚生労働省医政局総務課事務連絡別添)及び「オンライン診療その他の遠隔医療に関する事例集(令和六年四月版)」(令和六年四月二十三日付け厚生労働省医政局総務課事務連絡別添)並びに「オンライン診療の利用手順を示した手引書等について」(令和六年三月二十九日付け厚生労働省医政局総務課事務連絡)に添付の「オンライン診療の利用手順の手引き書(処方薬の受け渡し方法)」を作成し、都道府県等を通じて医療機関に対して周知しているところ、当該「手引き書」において、「患者が自宅で処方薬を受け取る場合」の「手順」等を示すとともに、これらの「事例集」において、御指摘の「オンライン診療や薬の宅配を組み合わせた」好事例についても示しているところである。引き続き、こうした取組などを通じて、高齢者が必要なサービスが受けられる環境を整備してまいりたい。 二について 御指摘の「行政が保証を引き受ける公的な身元保証制度」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「入院や介護施設入所時」における身元保証に関しては、「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」(平成三十年四月二十七日付け医政医発〇四二七第二号厚生労働省医政局医事課長通知)等により、都道府県を通じて医療機関等に対して、医療機関への入院に際し、身元保証人等がいないことのみを理由に、医師が入院を拒否することは、医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十九条第一項に抵触する旨周知し、また、都道府県等を通じて介護保険施設等に対して、介護保険施設への入所又は入院に際し、身元保証人等がいないことは、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十九号)第四条の二等の規定における介護保険法第四十八条第一項第一号に規定する指定介護福祉施設サービス等の提供を拒む正当な理由には該当しない旨周知しているところである。その上で、御指摘のように「身元保証人不在の高齢者が安心して入院・入所できる」ようにするため、現在、「持続可能な権利擁護支援モデル事業実施要領」(令和七年一月七日付け社援発〇一〇七第六号厚生労働省社会・援護局長通知別添三十四)に基づく「持続可能な権利擁護支援モデル事業」により、市区町村が、「単身で生活する高齢者や孤独・孤立の状態にある者等であって、医療施設・福祉施設等への入院・入所手続や日常的な金銭管理、死後の事務手続の依頼など将来の日常生活又は社会生活に不安を抱えた者」を対象とし、「日常生活の支援」に加えて、「身元保証人の有無にかかわらず、医療施設や福祉施設等に円滑に入院・入所することができるよう、地域の医療施設や福祉施設等とも緊密に連携しながら、」「医療施設へ入院(退院)又は福祉施設等へ入所(退所)等する際の手続等の援助や緊急連絡先の提供、入院・入所中の身の回りの支援、入院・入所費用の支払代行、病状説明時の同席など単身高齢者等が円滑に入退院及び入退所するために必要と考えられる支援」を行う「入院・入所時の身元保証を代替する支援」等の「支援の一部又は全部について、本人に対する一連の援助として一体的・継続的に提供する取組を試行」しているところである。 三について 御指摘の「行政が死亡後の手続や財産整理などを一定範囲で代行する」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘のような「ケース」への対応については、現在、二についてで述べた「持続可能な権利擁護支援モデル事業」における「支援」の一つである「死後事務の支援」として、「葬儀に関する事務や火葬手続に関する手続代行のほか、残存家財や遺品等の処理に関する手続代行など、単身高齢者等が死亡した後に必要と考えられる死後事務委任契約に基づく事務の支援」を「提供する取組を試行」しており、また、厚生労働省社会・援護局長が参集を求めて開催する、地域における福祉の支援等に関する専門的知見を有する有識者により構成される「地域共生社会の在り方検討会議」において、当該事業の実施状況も踏まえつつ、身寄りのない高齢者等が抱える生活上の課題への支援の在り方について議論が行われているところであり、引き続き、必要な検討を行ってまいりたい。 |