質問主意書

第217回国会(常会)

答弁書

内閣参質二一七第五号
  令和七年二月四日
内閣総理大臣 石破 茂


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員神谷宗幣君提出ガバメントクラウドとデータ主権及び経済安全保障に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員神谷宗幣君提出ガバメントクラウドとデータ主権及び経済安全保障に関する質問に対する答弁書

一について

 デジタル庁が令和五年度に行った「デジタル庁におけるガバメントクラウド整備のためのクラウドサービスの提供―令和五年度募集―」(以下「令和五年度事業」という。)に係る募集に当たっては、令和五年度事業への新規事業者の参入を促進するため、その調達仕様書において、クラウド・コンピューティング・サービスの提供事業者(以下単に「提供事業者」という。)が他社の提供するソフトウェア、ハードウェア及びサービスを用いて当該提供事業者のクラウド・コンピューティング・サービスとして提供することも可能としたほか、その時点で必要な要件を満たすことができない場合であっても、当該要件を令和七年度末までに満たす計画を提出した一定の場合には、提供事業者としてガバメントクラウドの整備に係る検証作業等に参加することができることとしたことにより、日本企業であるさくらインターネット株式会社と令和五年度事業に係る契約を締結するに至っている。また、経済産業省においては、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)第八条第一項の規定に基づき経済産業大臣が定めた「インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機を他人の情報処理の用に供するシステムに用いるプログラムに係る安定供給確保を図るための取組方針」(令和五年一月十九日経済産業省公表)において、「国内に事業基盤を有し、基盤的なクラウドサービスを提供する事業者等のうち、高い機密性や可用性等が求められるクラウドを自律的に確保するために不可欠な基盤的技術のうち、我が国が保持すべき重要な技術の開発に取り組む事業者等に対して、その開発に係る費用を補助する。」としていることを踏まえ、同社による「基盤的なクラウドサービス」に用いられるプログラムの技術開発の取組について、同法第九条第四項に基づく認定を行い、その開発に係る費用を補助することとしている。

二について

 前段のお尋ねについては、地方公共団体情報システム(地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和三年法律第四十号)第二条第一項に規定する地方公共団体情報システムをいう。以下同じ。)を利用するに当たり、クラウド・コンピューティング・サービスに関連する技術を活用することが地方公共団体の行政運営の合理化及び効率化に寄与すると考えられることから、同法第十条において、地方公共団体に、当該技術を活用して地方公共団体情報システムを利用する努力義務が課されたことを踏まえ、地方公共団体情報システム機構法(平成二十五年法律第二十九号)附則第九条の二第一項第一号イにおいて「クラウド・コンピューティング・サービス関連技術・・・を活用した情報システムの共同化」が御指摘の「デジタル基盤改革支援補助金」の交付の対象とされたものである。なお、ガバメントクラウド以外のクラウド・コンピューティング・サービスを活用する場合にも、同補助金は交付され得るものである。

 後段のお尋ねについては、当該技術を活用することが国及び地方公共団体の行政運営の合理化及び効率化に寄与すると考えられることから、御指摘の附帯決議を踏まえ、一についてで述べた日本企業に対する支援のほか、地方公共団体に対して、各提供事業者が提供するクラウド・コンピューティング・サービスに係る情報提供を行うなど、ガバメントクラウドの利用の拡大に向けた取組を実施しているところであり、お尋ねの「オンプレミス継続を支援する施策」を講ずる予定はない。

三について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、地方公共団体によるガバメントクラウドの活用に係る提供事業者の選定について、地方公共団体による見直しを容易にする観点から、令和五年度事業に係る募集に当たっては、その調達仕様書において、「利用者が所有するデータのインポート及びエクスポートを利用者自らが容易に行うためのツール及びサポートサービスが提供可能であること」、「オンプレミスや他プラットフォームからのデータベースの移行のためのマネージドサービスを備えていること」等を、提供事業者が満たすべき要件として設けた上で、当該要件を満たした提供事業者と契約を締結しているところである。

四について

 お尋ねについては、「地方公共団体情報システム標準化基本方針」(令和六年十二月二十四日閣議決定)において、「基幹業務システムを利用する地方公共団体が、令和七年度(二千二十五年度)までにガバメントクラウドを活用した標準準拠システムに移行できる環境を整備することを目標」とした上で、「標準準拠システムへの移行作業については、円滑かつ安全に実施されるよう、できる限り前倒すことによる移行時期の分散が必要となることから、国は、引き続き、地方公共団体が早期に移行計画の策定や移行先システムに関わる事業者の決定を行えるよう支援する」とともに、「事業者のリソースひっ迫などの事情により、令和八年度(二千二十六年度)以降の移行とならざるを得ないことが具体化したシステム・・・については、・・・当該システムの状況及び移行スケジュールも踏まえて、標準化基準を定める主務省令において、所要の移行完了の期限を設定することとし、概ね五年以内に標準準拠システムへ移行できるよう積極的に支援する」こととしている。

五について

 お尋ねの「デジタル庁が一括してCSPに支払うガバメントクラウドの利用料」は、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律の一部を改正する法律(令和七年法律第四号)による改正後の情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成十四年法律第百五十一号)第十九条第一項に規定する「共同利用クラウド・コンピューティング・サービスの共同利用の条件に関する内閣総理大臣と当該共同利用クラウド・コンピューティング・サービスを提供する事業者との契約」に基づいて、内閣総理大臣から提供事業者に引き渡されるものであり、現時点において当該契約が締結されていないこと及びデジタル庁において御指摘の「今後五年間にわたる」ガバメントクラウドを活用する機関や情報システムの数等を正確に把握することは困難であることから、お答えすることは困難である。