質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第二四三号

人口千人当たりの公的部門における職員数の国際比較に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年六月二十日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   人口千人当たりの公的部門における職員数の国際比較に関する質問主意書

 内閣官房ウェブサイトには「人口千人当たりの公的部門における職員数の国際比較(未定稿)」(以下「当該資料」という。)が掲載されているが、当該資料の名称には(未定稿)と付記されており、極めて異例である。当該資料は、我が国が諸外国に比して「公的部門職員数が少ない」とする主張の根拠として、識者や報道機関、地方自治体の政策資料等において引用されているが、その前提条件や統計手法の整合性について、政府は明確に説明していない。「未定稿」と銘打ちながら政府公式サイトに掲載されている当該資料は根拠が不明確であるにもかかわらず、政策議論や報道等で多用されている。以下にその一部を例示する。

 ・令和六年三月、一般財団法人地方自治研究機構が公表した報告書「地方公務員は足りているか」において、当該資料を引用し「日本の人口千人当たりの公務員数は諸外国の半分以下」と記載している。

 ・令和五年十一月、日本経済新聞の社説において「公務員数を減らすよりも効率化を進めるべき」とする論調の中で、日本の公的部門職員数の少なさが指摘された。

 ・令和五年八月、朝日新聞において、日本の公務員数が国際的に少ないとする主張が紹介されている。

 ・令和五年五月二十日、日本政策投資銀行が発行した「日本における政府部門職員数の国際比較」において、当該資料を引用し「日本の公的部門職員数は他国の半数程度」と明記されている。

 ・令和二年二月一日、日本国家公務員労働連合会が発行した報告書「公務員削減は公務・公共サービスの低下を招く」において、「日本の公的部門の職員数は、人口千人当たり三十二人とフランスやアメリカ、イギリスなどの半分以下です」と記載している。

 ・平成二十三年十二月十五日、ある地方自治体労働組合連合会が作成した「財務省資料に基づく国際比較と地方行政の課題」において、各国との比較表を掲載し、日本の低水準を強調している。

 前記事例のほか、当該資料を引用し「我が国の公務員数は他国よりも少ない」と論じた資料は様々に見受けられる。統計的信頼性や行政の説明責任の観点からも、誤認を誘発しかねない資料の取扱いについて、厳格に検証すべきと考える。当該資料の制度的な正統性、比較手法の妥当性及び誤認を招く可能性のある公表形態について明らかにすべく、以下質問する。

一 当該資料について、「未定稿」であるにもかかわらず、政府公式サイト上に掲載されている理由を示されたい。また、当該資料の作成経緯及び取扱い方針を明らかにされたい。

二 当該資料は、将来的に「確定稿」あるいは正式な政府統計資料として公表される予定があるか示されたい。予定がある場合、公表時期及び所管機関を示されたい。予定がない場合、当該理由を示されたい。

三 当該資料における「国際比較」について、各国の「公務員」の範囲や制度(中央地方の区分、軍人準公務員の扱い等)等の前提条件は統一されているか示されたい。統一されていない場合、当該資料のように異なる前提条件で公務員数を比較し提示することは、国民の誤解を招くおそれが極めて高いため、各国制度の相違点を補足する資料が必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。また、今後、当該資料の公表の見直し若しくは誤認を防ぐため、各国の公務員制度の比較資料を付すべきと思料するが、政府の見解を示されたい。

四 各国の公務員制度(職階制、採用制度、任期の有無、民間委託比率及び非正規職員の制度的取扱い等)を比較分析した資料を把握しているか示されたい。把握している場合、資料の名称、作成年月日、所管部局及び公表状況を明らかにされたい。

五 当該資料の根拠となる法令、制度、会議体及び閣議決定等について示されたい。また、当該資料の作成の根拠、目的及び所管部局を明示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。