質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第二四二号

FIT・FIP制度による市場のゆがみ及び再エネ賦課金による国民負担に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年六月二十日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   FIT・FIP制度による市場のゆがみ及び再エネ賦課金による国民負担に関する質問主意書

 再生可能エネルギーの固定価格買取制度(以下「FIT制度」という。)及び市場連動型制度(以下「FIP制度」という。)については、当初設定された高価格や事業者内部収益率(IRR)の水準が、現在に至るまで国民の大きな負担要因となっている。特に、FIT制度導入初期に認定された案件については、高利回りでの長期にわたる固定価格買取が保証されており、再エネ賦課金の総額は令和七年度に過去最高の三・一兆円に達すると見込まれている。また、FIP制度については、効率的な事業運営を前提としてコストと適正な利潤を反映するとされながら、実質的にはFIT制度と同水準の基準価格が適用されており、国民負担軽減や市場競争促進の観点から実効性に疑問が生じている。電気事業連合会「FEPC INFOBASE 二〇二四」(以下「当該資料」という。)や資源エネルギー庁「「法制度」の観点から考える、電力のレジリエンス」においても、FIT制度の課題として、需給調整インセンティブの欠如や事業規律の低下が指摘され、FIP制度導入の目的が「再エネの自立化と市場統合の促進」であると示されている。

 こうした背景を踏まえ、再エネ補助政策の目的、運用の妥当性及び国民負担の構造的問題について、以下質問する。

一 再エネ賦課金について、制度開始当初の二〇一二年度には約千三百億円であったが、二〇二五年度には約三・一兆円に達する見込みとなっている。

 1 再エネ賦課金の総額の増加推移について、FIT制度設計当初の見込みとの乖離はあるか示されたい。ある場合、どの程度乖離しているか示されたい。

 2 再エネ賦課金の増加推移について、FIT制度設計当初から増加することが見込まれていたと思料するが、再エネ賦課金総額の増加は国民負担の増加と同義である。この点について、制度設計当時、政府はどのように評価していたか示されたい。また、FIT制度設計当初から現在に至るまでの再エネ賦課金の実績の推移を踏まえ、再エネ賦課金の国民負担額が経済に及ぼす影響について、政府の評価を示されたい。

 3 当該資料においては、FIT制度に起因する累積的な国民負担の増大が課題として示されているが、政府も同様の見解か示されたい。また、当該課題に対する政府の取組について示されたい。

二 FIT制度導入当初、非住宅用太陽光発電の調達価格は十キロワット以上のものについては一キロワット当たり四十円に設定されるなど、極めて高利回りであった。

 1 FIT制度導入当初、高利回りとした理由を示されたい。

 2 前記二の1について、高利回りとする方針を検討した際に、国民負担が高まることに対する経済的な悪影響などの懸念点について、どのように評価したか示されたい。

三 高利回りであった時代において、多数のメガソーラーを含む発電事業者が一斉に設備認定を受けたことで、結果的に大量の高額案件が制度に残存する構造となっている。発電事業者の設備認定数推移について、制度設計当初の想定どおりか否か示されたい。また、当該実績に対する分析及び評価について、政府の見解を示されたい。

四 FIT制度では、一度認定された価格で十年から二十年間にわたる固定買取が保証されているため、価格が見直されたとしても過去の高利回りであった時代に起因する国民負担が長期にわたり継続することとなっている。当該構造が市場競争に与える影響及びコスト最適化を阻害している可能性について、政府の評価を示されたい。

五 FIT制度導入当初に設定された買取価格の根拠の一つとされるIRRについて、制度創設時から令和六年度までの実績ベースでの年次推移は把握しているか示されたい。把握している場合、IRRの年次推移を全て明らかにされたい。把握していない場合、把握すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

六 FIP制度における基準価格は、「事業が効率的に行われた場合、通常必要となるコストを基礎に、価格目標や適正な利潤などを勘案して定め」るとされている。にもかかわらず、現行のFIP基準価格がFITの買取価格と実質的に同額に設定されている。

 1 市場競争を促すためのFIP制度がFIT制度と同様の補助効果を有することにより、事業者の収益構造が固定化されていると思料するが、政府の見解を示されたい。

 2 FIP制度におけるプレミアム単価(補助額)がFIT制度と同様に高価格で長期にわたり支払われ続けることによる国民負担への影響について、政府の評価を示されたい。

 3 現行のFIP制度については、発電事業者の投資インセンティブが働いておらず、電力市場への統合につながっていないおそれがあると思料するが、政府の見解を示されたい。

 4 電気事業連合会「二〇二二年度からFIP制度開始 再エネの「自立化」を促進」において指摘されているように、バランシング義務やアグリゲーター制度の実効性が低い場合、FIP制度が本来の目的を果たせないと考えるが、政府の見解を示されたい。

 5 再エネを電力市場に定着させ競争を促すというFIP制度の目的を達成するために、今後、政府が行うことを予定している取組を全て示されたい。

七 再エネ政策の目的は、本来、技術開発を支援し電力市場に定着させることであるが、現行制度は既に市場競争力を持つ太陽光発電等にも長期的に補助が続いている。

 1 再エネ政策において補助されている各エネルギーについて、現在の市場競争力ないし電力市場への定着状況について、政府の評価をそれぞれ示されたい。

 2 前記七の1について、電力市場に定着していないと評価されるエネルギーについて、定着する時期の見込み及び補助を行う時期について、政府の見解を示されたい。

八 令和五年度においては、電気料金高騰対策として再エネ賦課金の一部を国費により肩代わりする措置が講じられ、国民負担は一時的に軽減された。このような一時的補助の是非と今後の財政支出との関係について、政府の見解を示されたい。

九 令和七年度の再エネ賦課金総額が過去最大の三・一兆円とされる中、現行のFIT制度及びFIP制度の構造的な見直しが必要との意見もある。

 1 制度全体の見直しや段階的縮小の必要性について、政府の検討状況を示されたい。

 2 再エネ賦課金の総額が増加することによる国民負担の増加が懸念されるが、国民負担増加に対し、政府は何らかの対応を採る考えはあるか示されたい。ある場合は、当該対応について、具体的に示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。