質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第二三八号

薬価改定の課題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年六月十九日

小西 洋之


       参議院議長 関口 昌一 殿



   薬価改定の課題に関する質問主意書

 私は、令和四年に「毎年薬価改定の見直しに関する質問主意書」(第二百八回国会質問第四四号)及び「薬価の中間年改定の在り方等に関する質問主意書」(第二百十回国会質問第八〇号)を、令和五年に「薬価改定を含む医薬品の諸問題に関する質問主意書」(第二百十二回国会質問第一二三号)を、令和六年に「薬価中間年改定の廃止の必要性に関する質問主意書」(第二百十三回国会質問二三八号)をそれぞれ提出し、薬価改定に関する諸問題について繰り返し指摘してきた。

 薬価改定については、従来、診療報酬改定に合わせて二年に一回行われてきたが、令和三年度以降、診療報酬改定のない年にも改定を行う、いわゆる「中間年改定」が行われている。診療報酬改定のない年である令和七年度における中間年改定の是非をめぐっては、関係団体から、「令和七年度に中間年改定を実施する状況にはない」、「品質の高い医薬品を安定供給し続けることができる体制を再構築するために、医薬品産業全体を疲弊させ、様々なゆがみを生み出す要因である中間年改定を廃止していただきたい」といった意見が出ていたにもかかわらず、最終的に政府は、これまでの中間年改定とは異なり品目ごとの性格に応じて改定の対象範囲を設定する形ではあるが、中間年改定の実施を決定した。中間年改定は、平成二十八年十二月二十日に決定された「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、財務大臣、厚生労働大臣決定)に基づき実施されてきたものであるが、日本経済のデフレからインフレへの移行、停滞する医薬品の流通改善、新薬創出力の低下、ドラッグラグ及びドラッグロスの再燃など、同基本方針が決定された当時とは前提や取り巻く環境が大きく変化しており、時代に合っていないことは明らかである。にもかかわらず、中間年改定を廃止することなく実施したことは遺憾である。なお、立憲民主党は、医薬品の安定供給、イノベーション創出の基盤を強固にし、国民に品質の高い医薬品を安定して供給できるようにするため、国民民主党及び社会民主党と共同で、令和六年十二月に「健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律の一部を改正する法律案」(第二百十六回国会衆第二三号)を提出し、診療報酬改定の改定時期を法律に位置付け、慣例で二年に一回行われている診療報酬改定を法律に位置付けることにより、薬価の中間年改定は飽くまで通常改定に対する例外的な改定であることを明確化することを提案している。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 令和六年十二月十一日に開催された中央社会保険医療協議会薬価専門部会(第二百三十回)では、意見聴取を行った関係団体から、「急激かつ持続的な物価高騰、円安あるいは原材料の調達が困難を増してきていること、また、賃上げ対応など、国内のサプライチェーン維持に係る現在の環境を踏まえれば、令和七年度に中間年改定を実施する状況にはない」、「中間年の薬価改定については、医薬品の安定供給が持続的に確保されるよう、廃止をしていただきたい」といった意見が示された。こうした意見があったにもかかわらず、令和七年度に中間年改定を実施するに至った理由を示されたい。

二 厚生労働大臣は、令和七年四月九日の衆議院厚生労働委員会において、ドラッグロスの要因の一つに薬価改定がある旨及び様々な製薬企業、団体から日本の医薬品市場の予見性確保が重要だという指摘を受けている旨の発言をしている。中間年改定の実施による頻繁な薬価改定が、日本の医薬品市場の予見性を損ない、それがドラッグロスの要因の一つとなっていると考えるが、政府の認識を示されたい。

三 令和六年十一月二十一日の「革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品創出のための官民対話」では、日本製薬団体連合会から、令和六年の医薬業種の賃上げ率が低水準であった旨の説明がなされている。政府は、医薬品産業における近年の賃上げ状況を把握しているか。把握している場合には、直近五年間の賃上げ率の推移を示されたい。

四 中間年改定の実施によって頻繁な薬価改定が行われることが、医薬品産業における経営の予見可能性を損ない、賃上げを妨げる一因になっているとともに、度重なる薬価引下げが、医薬品産業の体力を奪い、人員削減や賃上げの低迷を招いているのではないかと考える。これまでの中間年改定が医薬品産業における賃上げに与えた影響について、政府の見解を示されたい。

五 令和七年六月十三日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針二〇二五」では、「医療・介護・障害福祉等の公定価格の分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保がしっかり図られるよう、コストカット型からの転換を明確に図る必要がある」ことが明記されている。また、薬価に関し、「国民負担の軽減と創薬イノベーションを両立する薬価上の適切な評価の実施」をすることが記載されているが、創薬イノベーションを進めるためには人材確保が重要であり、医薬品産業における着実な賃上げが必要であると考える。令和八年度の薬価改定において、医薬品産業における賃上げを後押しする改定を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

六 医薬品の供給不安を解消し、創薬イノベーションを進めるため、今後、急激な物価高騰など医薬品の安定供給に大きな影響を与える特殊な事情がある場合には、医薬品の不採算が確実に解消されるよう、即時に薬価を引き上げる仕組みの創設を検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。