質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第二一七号

医療・福祉の非営利性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年六月十九日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   医療・福祉の非営利性に関する質問主意書

 我が国の医療制度においては、医療機関の非営利性が重視されている。私が提出した「営利法人に病院等の開設が認められない法的根拠に関する質問主意書」(第二百十七回国会質問第八四号)に対する答弁書(内閣参質二一七第八四号)では、病院の開設について、「営利を目的とする者には許可を与えない」としている。また、特別養護老人ホームは福祉系の施設でありながら非営利法人のみが運営を許可されている。一方、訪問看護のように医療系のサービスでありながら営利法人の参入が認められている事例も存在する。

 このように、医療・福祉分野において、営利法人の参入可否の基準が一貫していないように見受けられる。また、過去の国会答弁においても、株式会社の参入により医療の質の低下や不必要な診療の増加を招く可能性が指摘されているが、これらの懸念は非営利法人においても同様に発生し得るものであり、必ずしも営利法人の参入を制限する理由にはならないと考える。

 現行制度における当該矛盾を明確にし、医療機関の運営形態に関する政府の方針を明らかにするため、以下質問する。

一 営利を目的とした病院の開設を認めていない理由を示されたい。参議院厚生労働委員会(平成二十九年六月一日)において、塩崎元厚生労働大臣は、「医療では、医師の裁量が大きく、また、患者が十分な情報を持っていない、いわゆる情報の非対称性」があり、「適正な医療が提供されないおそれがある」と答弁している。非営利法人であっても情報の非対称性は存在すると考えるが、政府の見解を示されたい。

二 訪問看護について、医療系のサービスであるにもかかわらず、営利企業の参入が認められている理由を示されたい。病院においては営利法人の利益最大化が医療の質の低下につながるとされているが、訪問看護においては当該懸念が生じないという見解か示されたい。前記見解の場合、訪問看護と病院の経営形態の違いにより、懸念の有無が異なる理由を具体的に説明されたい。

三 特別養護老人ホームについて、福祉系のサービスであるにもかかわらず、非営利法人のみが運営を許可されている理由を示されたい。衆議院本会議(平成二十九年三月二十八日)において、塩崎元厚生労働大臣は、「病院や特別養護老人ホーム等については、高い公益性を有する事業であり、利用者の保護を図るため、株式会社などの営利法人に対しては参入を認めて」いない旨答弁している。病院や特別養護老人ホーム等について、その他の医療・介護事業と比較して「高い公益性」を有する具体的な根拠を明らかにされたい。

四 前記厚生労働委員会における大臣の答弁では、病院や特別養護老人ホーム等に関して、株式会社等の営利法人による運営を認めない理由として、以下の点が挙げられている。

 ○患者が必要とする医療と株式会社の利益を最大化するという場合の医療とが一致をしない。

 ○利益が上がらない場合の撤退によって地域などでの医療の確保に支障が起きる。

 ○利益を上げるために不必要なあるいは不要な診療が行われて、(中略)医療費の増大も招く。

 これらの懸念は、非営利法人であっても生じるものであると考える。むしろ株式会社であれば、株主からの資金調達が可能であり、ガバナンスもより明確であることから、持続可能な経営が行われやすいと考えられるが、政府の見解を示されたい。

五 政府は、病院・特別養護老人ホームを「高い公益性を有する事業」と位置付け、株式会社等の営利法人の参入を認めていないが、その他の医療・介護事業は「高い公益性を有する事業」ではないのか示されたい。「高い公益性を有する事業」との位置付けでない場合、当該根拠を示されたい。また、営利法人の参入が認められている訪問看護のような事業と病院・特別養護老人ホームの違いについて、具体的な事例を示して説明されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。