質問主意書

第217回国会(常会)

質問主意書

質問第二一六号

特定健康診査・特定保健指導に係る費用と効果の検証及び制度見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年六月十九日

浜田 聡


       参議院議長 関口 昌一 殿



   特定健康診査・特定保健指導に係る費用と効果の検証及び制度見直しに関する質問主意書

 平成二十年度に開始された「特定健康診査・特定保健指導」(以下「特定健診等」という。)は、生活習慣病予防を目的として四十歳から七十四歳の被保険者・被扶養者に義務化された制度である。これまでに数千億円規模の公的支出がなされているが、その効果及び妥当性に関して十分に検証されているか疑問である。令和二年に公表された京都大学・福間真悟氏らの研究(Fukuma S, Iizuka T, Ikenoue T, Tsugawa Y, Association of the National Health Guidance Intervention for Obesity and Cardiovascular Risks With Health Outcomes Among Japanese Men,全国土木建築国民健康保険組合の男性健診受診者七万五千人の分析)では、特定保健指導の介入による肥満度の改善は軽微であり、血圧・血糖・脂質といった心血管リスクの指標には有意な改善が認められなかったと報告されている(以下「当該研究」という。)。特定健診等が当初目指した「糖尿病等の発症・重症化を予防し、医療費適正化に資する」という目標が実現されていないのであれば、限られた公的財源の適正配分の観点からも、不要な健診の縮小又は廃止を検討する必要がある。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 費用構造及び支出の妥当性について

 1 特定健診等に係る国全体の年間支出額の総額及び保険者ごとの内訳をそれぞれ示されたい。

 2 平成二十年度の開始以降、公的財源の累積支出額を示されたい。

 3 特定健診等の費用対効果の検証及び政策評価が実施された時期を示されたい。また、費用対効果の検証及び政策評価の方法及び結果を明示されたい。

 4 特定健診等の費用について、一人当たりの全国平均を示されたい。

二 効果検証及び科学的根拠について

 1 当該研究では、保健指導による心血管リスク指標の改善が認められなかったとされているが、政府は当該研究を把握しているか示されたい。把握している場合、当該研究の結果に対する政府の見解を示されたい。

 2 特定健診等が、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中等の個別疾患の発症予防に寄与していると明確に評価した科学的根拠(エビデンス)は存在するか示されたい。存在する場合、当該資料を具体的に提示されたい。

 3 前記二の2は、当該研究と比較して、科学的根拠(エビデンスレベル、研究デザインの妥当性や統計的信頼性)がより高いものか、根拠と併せて政府の見解を示されたい。

 4 特定健診等の実施により、医療費が統計的に有意な水準で削減されたとする実証研究は存在するか示されたい。存在する場合、当該研究のエビデンスレベル(観察研究、RCT、メタアナリシス等)を明らかにされたい。

三 見直しの必要性について

 1 科学的根拠に乏しく、医療資源の有効活用が見込めない場合、特定健診等の縮小又は廃止を検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

 2 低リスク群への画一的健診ではなく、高リスク群・医療未受診者への健診に対して重点的に投資すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

 3 高齢者健診、がん検診、自治体独自健診など、複数制度の統合・効率化による見直しについて、政府の検討状況を示されたい。

 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。

  右質問する。