第217回国会(常会)
質問第二一一号 介護支援専門員の担当件数の上限及び根拠等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年六月十九日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 介護支援専門員の担当件数の上限及び根拠等に関する質問主意書 介護支援専門員(以下「ケアマネジャー」という。)の居宅介護支援における業務については、長年にわたり「一人当たり四十件を超えた場合の報酬逓減措置」が設けられている。しかし、令和三年度及び令和六年度の介護報酬改定により、ICTや業務支援体制の整備を行っている事業所については、その上限が段階的に緩和された。具体的には、令和三年度改定では「事務職員の配置」又は「ICTの活用」を条件に四十五件までの対応を可能とし、令和六年度改定では「事務職員の配置」及び「国のケアプランデータ連携システムの活用」を追加条件として、最大五十件まで逓減制の適用が緩和された。 前記改定は例外的な緩和措置であり、制度の基本構造には依然として「画一的な上限と減算規定」が残存している。また、基準の緩和条件が煩雑であるため、現場において過度な事務負担・制度対応コストを招いているとの指摘もある。人口減少・人材不足・ICT普及が進む中、こうした制度設計がケアマネジャーの裁量的判断や生産性向上努力を阻害し、制度の持続可能性を損なうおそれもあることから、抜本的な見直しが必要であると考える。 以上を踏まえ、以下質問する。 一 ケアマネジャー担当件数規制の経緯及び現在の緩和措置について 1 「一人当たり四十件を超えた場合の報酬逓減措置」が導入された経緯、趣旨及び目的(当該措置導入年・検討会資料等)を明示されたい。 2 令和三年度及び令和六年度の報酬改定により、「四十五件」又は「五十件」までの算定が可能となった緩和措置の要件、対象事業所数及び全体に占める割合について、それぞれ示されたい。 3 前記一の2の緩和措置の要件(「事務職員の配置」や「国のケアプランデータ連携システムの活用」など)を満たしていない場合について、要件を満たせなかった理由、要件を満たす上での障壁(中小事業所や地方での対応困難性など)について、政府の把握状況を示されたい。把握している場合、把握手法及び把握している内容の詳細を示されたい。 二 報酬逓減措置の妥当性及び今後の在り方について 1 ケアマネジャーの業務におけるICT活用や標準化が進む中、「一人当たり四十件を超えた場合の報酬逓減措置」について、導入当時と現在では実態に大きな乖離があると考えるが、政府の評価を示されたい。 2 現場からは「ICT等を活用して効率的に五十件以上を担当可能な体制を構築しても、制度上の規制に阻まれて意味がなくなる」、「人員配置が十分でも報酬は制限される」といった指摘があるが、このような実態について、政府の把握状況を示されたい。また、これらの指摘に対する政府の見解を示されたい。 3 介護報酬における基準件数や逓減措置について、今後、画一的な上限撤廃や柔軟な基準化(地域特性・体制に応じた裁量設定等)を検討する方針があるか示されたい。 三 介護業界における他の業務規制・減算制度の体系的整理について 1 ケアマネジャー以外の介護サービス(訪問介護、通所介護、特別養護老人ホームなど)において、人員配置超過や業務件数超過等の業務量の規制をもって減算している交付金、補助金及び助成金制度はあるか示されたい。ある場合、当該制度等の名称、対象となる介護サービス、該当基準、規制の導入年度及び規制の減算内容を全て示されたい。 2 前記三の1に関連して、当該制度等について、①利用者の安全確保・業務過多防止、あるいは、②財政的抑制・報酬調整のいずれの目的で規制がかけられているか示されたい。また、これらの目的の判断基準及び当該目的に照らした政府の現在の評価内容を制度ごとに示されたい。 四 将来の制度設計について 高齢者人口の増加、介護職の人手不足、地域間格差、ICTの普及等を踏まえ、生産性を上げた事業所ほど報酬が上がるような制度設計(アウトカム評価を含む)への移行を検討すべきと考えるが、政府の認識及び方針を示されたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |