第217回国会(常会)
質問第二一〇号 エビデンスが乏しい予防医療施策への公的補助の見直しに関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年六月十九日 浜田 聡
参議院議長 関口 昌一 殿 エビデンスが乏しい予防医療施策への公的補助の見直しに関する質問主意書 近年、国・自治体・健康保険組合等は「健康寿命の延伸」や「医療費適正化」の名の下に様々な予防医療施策を展開し、公的補助を行っている。しかし、そうした予防医療施策の中には、科学的根拠(エビデンス)が乏しく、効果や費用対効果の実証が不十分であるにもかかわらず、形骸化したまま継続されている施策が少なくない。こうした「エビデンスが乏しい予防医療施策」(以下「当該医療施策」という。)については、以下のような具体例及び問題点がある。 1 「健康教室」、「ウォーキングイベント」、「食育講座」等の一過性イベント型施策 費用対効果が非常に低く、「参加すること」自体が目的化している例が多い。一過性の行動変容で終わり、疾病予防への実効性が乏しい。 2 「睡眠改善教室」、「ストレス対策講座」など主観評価型の保健指導 主観的指標に依存しており、アウトカム評価が困難でありながらも多くの補助事業で組み込まれている。 3 がん検診や健康診断における科学的根拠が乏しい検査 ・胸部X線検査(肺がん検診):死亡率を下げない。被曝リスクがある。 ・バリウム検査(胃がん検診):内視鏡に比べ精度劣り、穿孔・誤嚥リスクあり。 ・甲状腺がん検査・PSA検査:過剰診断と不必要な治療の誘発。 ・脳ドック・PET検査・レントゲンによる腰痛スクリーニング:治療不要な異常の検出による医療の無駄と不安の助長。 4 「一律保健指導」、「高齢者全員への介護予防体操」 リスクの低い層に対して過剰な介入が行われ、科学的な有効性も限定的。高齢者に対する一律的な介護予防体操についても、明確なアウトカムが示されておらず、複数の研究で費用対効果に疑義が呈されている。 当該医療施策への継続的な補助は、限られた医療財源を非効率に消耗させ、真に有効な介入への投資機会を阻害している可能性がある。限られた医療資源の有効活用及び国民の健康増進に真に資する予防医療のため、以下質問する。 一 当該医療施策の具体例に対する補助の実態について 1 当該医療施策に類する施策に対し支出された、国費・地方交付金等の国庫補助金について、直近五年間の実績額、対象事業及び実施主体を全て示されたい。 2 当該医療施策について、介入群と非介入群での比較・RCT(ランダム化比較試験)・費用対効果分析等、医学的エビデンスに基づいた検証を行った事例があるか示されたい。ある場合、詳細を全て示されたい。ない場合、当該理由を示されたい。 3 前記一の2に関連して、科学的根拠が否定的又は確認できていない施策について、補助が継続されている理由、政策評価や廃止又は見直しの判断基準を施策ごとに明確に示されたい。 二 政策形成におけるEBPMの適用及び制度的仕組みについて 1 当該医療施策に対して、政府が掲げるEBPM(エビデンスに基づく政策形成)に照らして、客観的評価・見直しを行う制度やガイドラインが存在するか示されたい。存在する場合、具体的な運用方法を示されたい。存在しない場合、当該制度やガイドライン等を作成する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。 2 地方自治体や健康保険組合が実施する予防医療施策に対して、国として費用対効果の基準を定めた交付要綱や指針は存在するか示されたい。存在する場合、当該交付要綱や指針の詳細を施策ごとに全て示されたい。 3 今後、原則として費用対効果が不明又は否定的である予防医療施策への補助を廃止又は縮小すべきと考えるが、政府の見解ないし今後の方針を明らかにされたい。 質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。 右質問する。 |